「ふたりのカタチ」
ふたりのカタチ(やま)【101~120】

ふたりのカタチ (106)

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スター気分を満喫し、小道に入って、自分でも写真を撮ってみる。

あ、あの暖簾のとこ、雰囲気あるかも……。

東雲とある暖簾は、紺と紫の中間くらいの色。

文字は白抜きの草書体で斜めに流れるように書いてある。

これ、なんて読むんだろ?

ひがし……くも?

とううん?

ま、いっか。

おいらは暖簾の前で笑顔を作って自撮りする。

うん。綺麗に撮れた♪

ショウ君にも見せたいけど、女装だからなぁ……。

おいらは携帯を帯に挟んで東雲の暖簾をくぐる。

中は何もなくてガランとしてる。

縁台みたいなところに腰かけて、ふっと一息つく。

いろんな人に写真撮られてちょっと疲れたみたい。

そうだ、と女の子がくれたキャンディを思い出す。

袂に入れちゃったから、なかなか取り出せない。

袂の中に手を突っ込んで取り出すと、赤い包み紙のキャンディは、

微かに美味しそうな匂いをさせる。

「いちごかな?」

包みを解いて、パクッと口に頬り込む。

甘くて、懐かしい、イチゴの味が口いっぱいに広がる。

「これ着てる間は何も食べられないもんね?

 これでちょっとは紛れるかな……。」

甘い味と香りがおいらに溶け込んでいく。

だいぶお腹空いてたみたい……。

あれ?なんか……腰の辺りがふわふわしてくる感じ……。

ふわっと浮いて……。

浮いて?

ドクッと鼓動が大きく跳ねた。



ここは……。

あれ?おいら、縁台に座ってたんじゃ……。

気付くと、おいらは賑やかな江戸の町を歩いてる。

「うわっ、すごい!いつの間にこんなにスタッフ出て来たんだろ?」

町行く人は、メイクも衣装もばっちりで、どこで写メ撮ろうかと悩んじゃうくらい。

でも……不思議なことに、さっきまで高い位置にあった太陽が、

今は西に沈もうとしてて、町はすっかり夕暮れの風情。

オレンジ色の空は、やけに綺麗で目を細める。

「綺麗……ショウ君にも見せてあげたい……。」

空に向かって携帯でパシャリ。

あんまりうまく撮れなかったけど、雰囲気は伝わるかな?

おいらは写メを確認して帯の間にしまう。

さて、次はどこに行こう?

忍者ショーってどっちだっけ?

キョロキョロしていると、後ろから肩を叩かれ、振り返る。

ばっちりメイクした江戸時代の商人?風の男の人が、

ちょっと不機嫌そうにおいらの肩を押す。

「ほら、さっさとしとくれ。もう来ちまうよ。」

恰幅のいいその人に、目の前の店に押し込まれて……。

え?何?誰が待ってるの?

ちょっとつんのめりながら、店の中に入ると、そこは広々とした土間?

もうすでに明かりが点いてるけど、それもあんまり明るくなくて……。

「え?ここ……。」

「あら、一人かい?お座敷、二階の一番奥だから。」

女将さん風の人も、おいらを急き立てる。

「え?あれ?おいら……。」

「ああ、堺屋さんも一緒でしたか。用意はできてますから、

 どうぞ、どうぞ。」

女将さん風の人は、明らかに営業スマイルで、堺屋さんと言う男の人を先に歩かせて、

おいらを階段に押しやる。

「ま、待って……。」

おいらがあたふたしてるのも気にせず、狭い階段をどんどん後ろから押してくる。

ま、待って!おいら、慣れない着物で階段……。

もう足元しか気にできない。

そのまま堺屋さんの後に続いて、おいらと女将さん風の人も二階の廊下に出る。

「他の姐さん達はまだかい?」

「え……?さあ……。」

「仕方ないねぇ。」

女将さん風の人はプリプリした様子で、奥の部屋の戸を開ける。

「ささ、どうぞどうぞ。」

堺屋さんが上座に胡坐を掻いて、女将さんがお銚子をおいらに渡す。

「え?」

「ほら、さっさとお酌して。」

「お酌?」

この恰好だから、間違えられてる?

「あ、あの……。」

これは衣装で、ここのスタッフじゃないと説明したいのに、堺屋さんもお猪口を持って、

おいらの方に差し出す。

仕方なく、堺屋さんの前に正座してお猪口にお銚子を当てる。

着物に不慣れだから、袖が気になって……。

衣装を汚すわけにはいかないもんね。

堺屋さんが嬉しそうにお猪口に口を付ける。

「ん……、さ、お前も一杯。」

そう言って、おいらにお猪口を手渡す。

「え、あ……おいらは……。」

「おいら?辰巳芸子は気風がいいと言うが、自分のことをおいらと呼ぶのかい?」

たつみげいこ?

深川芸者のこと?

思いっきり勘違いしてる?

「い、いや、おいらは……。」

「名は?」

堺屋さんは美味しそうに酒を啜る。

「え、あ……サトシ……。」

「サトシか、変わった名だな。ま、男名に変わりはないが……。

 まだ若そうだが、半玉から上がったばっかりかい?」

はんぎょく……?

はんぎょくって何?

もう、なんだかわからないことばっかりで、おいらは溜め息をつくしかなくて……。

「何、文句を言ってるわけじゃない。若いのがいいと言ったのはこっちの方だ。

 お座敷は初めてかい?」

こ、これがお座敷遊び?

じゃ、本物の芸者さんが後からやってくるのかな?

そしたら本当のことが話せるかも。

この恰好じゃ、何を言っても説得力ないよね……。

堺屋さんはおいらのお猪口に酒を注ぐ。

「あ、おいらは……。」

やんわり断ろうと思ったのに、お猪口いっぱいにお酒が注がれ、

着物を汚すわけにいかなくて、零さないよう、一気にお猪口をあける。

「おおー、こいつはいい飲みっぷりだねぇ。」

そう言いながら、またお猪口にお酒を注ぐ。

こ、これじゃ、エンドレス……。

「も、もうこれ以上は……。」

おいらがお猪口を台の上に置くと、堺屋さんは不機嫌になることもなく、

おいらの手を引っ張る。

「そろそろおいでになるからな。その前に酔っぱらわせるわけにはいかない。

 お前、踊れるのかい?それとも唄か?三味線か?」

「踊る……?」

おいらが首を捻ると、音もなく、お座敷の戸が開いた。










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