「短編」
短編(いろいろ)

LOVE PARADE 2/3 下 (復活LOVE編)

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「おいら……一緒に行けない……。」

…………。

予想だにしない先生の言葉に、差し出した手をゆっくりと引き、顔を上げる。

先生は困ったように頭を掻いて、俺を見つめる。

「おいらね、4月になったら、モンゴルに行こうと思ってる。」

「モン……ゴル?」

「うん。知り合いがね、向こうの写真を撮るのに、

 アシスタントで連れて行ってくれるって……。」

「……アシ…ス…タン…ト……?」

「……そう。おいらさ、地平線までの星空をこの目で見てみたいってずっと思ってて……。

 そのことを知り合いのギャラリーのオーナーさんに話したら、紹介してくれて……。

 これを逃したら、もう二度と見れないと思うんだ。

 だから……行こうと思ってる……。」

先生が申し訳なさそうに下を向いて、チラッと俺を見る。

俺は……どんな顔をしてるんだろう?

一緒に行けないってことは……断られたってことだよな?

俺達……ここで終わり?

お別れ?

バレンタインが別れの日?

チョコケーキのピンクのハートが、やけに目について離れない。

目の前で、ピンクのハートがギザギザに破けて行く……。

「ごめんね。翔君。」

ずっと……見たかったんだよね?モンゴルの空。

俺と一緒にいるより、そっちを取るんだよね?

それじゃ、やっぱり俺達、終わりなんだ……。

びっくりすることに、涙が溢れて止まらない。

こんなところで……、人前で……。

でも……先生を無理やり連れて行くことなんかできやしない。

……俺達……これで……。

「しょ、翔君……、泣かないで。」

先生の指が俺の頬を撫でようとする。

俺はその手を振り払う。

「翔君……。」

「先生は俺よりモンゴルを取るんだよね……。」

「違っ……。」

「違くないでしょ?」

「違うよ、翔君。」

「遠距離で続けるつもり?そんなの続くと思う?

 俺達、隣同士でずっと一緒にいて、体なしで遠距離なんて……考えられる?」

「翔君……。」

先生が悲しそうな顔をする。

悲しいのは俺だよ、先生!

「翔君は体がないとダメなの?」

「そんなこと……。」

俺は涙でぼやける目で先生を見つめる。

「おいら、体がなくても翔君が好きだよ?遠距離だって耐えられる。

 でも、翔君は違うの?」

……一緒にいたい。

その想いは大きい。

でも、それで先生を失ってもいいのか?

このまま、バレンタインに終わっても本当にいいのか?

……考えるまでもない。

先生と別れるなんて考えられない。

どんな過酷な条件でも、先生と恋人同士でいられるなら……、

繋がっていられるなら……。

「先生……、俺も……、俺も遠距離でも頑張る。

 頑張って……耐えて……。」

涙で鼻声になる。

本当に子供みたいだ……。

「翔君……。」

先生の手が俺の手に重なる。

「耐えて……、俺が先生のところに行くよ。」

「翔君……。」

先生が、もう片手で俺の涙を拭う。

「ばかだね……泣くなんて……。」

「……笑っていいよ。まだまだ子供だって……。」

「……笑わないよ。それくらい、おいらのことが好きなんだって……、嬉しい。」

先生は微笑んで、握った俺の手の甲に唇を当てる。

「おいらも……離れたくはないよ……。

 たかが3ヶ月だってわかってる……。

 それでも寂しい……。」

「うん……俺も寂しい……。寂しくて……ん?3ヶ月?」

「ん?」

先生が俺の手から唇を離す。

「うん。3ヶ月。」

「3ヶ月で帰って来るの?」

「そうだよ。そんなに長くは行けないよ。」

先生は小さく口を尖らす。

「帰って来たら……どうするの?」

「それは……、おいらだって寂しいもん、札幌に引っ越さないと。」

え?あれ?ちょっと待って?

「遠距離って……。」

「3ヶ月、遠距離になっちゃう。会えないの、寂しいね……。

 でもおいら、頑張って耐えるからね。」

先生が、手に、ギュッと力を込める。

「ごめんねって……。」

「だって、4月には一緒に行けないから……。」

…………。

あは、あははは。

「も、もう一度確認していい?」

「うん。」

先生が真剣な表情で俺を見つめる。

「一緒にいられないのは3ヶ月だけで、その後は、俺のいる札幌にやって来てくれる。

 ……そう言う認識でいいのかな?」

先生がニコッと笑う。

「うん。今までの貯金もあるし、当分はなんとかなると思う。

 向こうですぐに働けるかどうかわかんないから不安はあるけど……。」

先生……なんかちょっと、ずれてる……よね?

「札幌では……一緒に暮らしてくれるんだよね?」

「え……?」

「まさか……また隣に引っ越すつもりでいた?」

俺は呆れて先生を見つめる。

「あ……うん……、そうだと思ってた……。」

俺は沸々と湧き上がって来る笑いを止めることができなくて、

周りが振り返る位に、大声で笑い始める。

「あはははは。くふふふふ。」

「しょ、翔君!声が大きい!」

先生が恥ずかしそうに俺の腕を引っ張る。

「あはははは。」

そう言われても、笑いはなかなか止まってくれなくて……。

俺の恋人は、ちょっとずれてて、恥ずかしがり屋で可愛くて。

3ヶ月離れてられないくらい寂しんぼうで……。

「あは、あはは……。ねぇ、先生?」

「ん……?」

「札幌では、俺と一緒に住むんだよ。1年やそこら、働かなくても大丈夫。」

「そういうわけには……。」

「なんならずっと働かなくてもいいよ。」

「何言ってんの、翔君。」

「わかってない?さっきのあれ、プロポーズのつもりなんだけど。」

「え……?」

先生の顔がじわじわ赤くなっていく。

ほらね、ずれてる上に鈍くて……。

ほんと、可愛い!

「プロポーズ、受けてくれる?」

俺が笑うと、先生は困ったように視線をうろちょろさせて、

最後にコクッとうなずいた。

さっきの店員さんが、視界の端の方で、にこっと笑ったのが見えた。










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