「ふたりのカタチ」
ふたりのカタチ(やま)【100~120】

ふたりのカタチ (104)

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知らない土地で電車から見る景色は、なぜか心をウキウキさせる。

ショウ君に会えたから?

来てよかったって思ってるから余計かも?

人が少ない電車の中で、真ん中に立って、右側と左側、両方の窓を視界に入れる。

窓から差し込む光が、思いの外強くて、外を走ってるような感覚……。

空間を電車型に切り取ったような感覚……。

そこだけ異空間になるって言うか……。

なんだか特別な感じがするんだけど……。

おいらじゃ言葉にするのは難しいみたい。

ショウ君なら、ストンと落ちるような表現してくれるんだけどな……。

ショウ君、プレゼン始まったかな?

ショウ君なら心配ないけど……。

毎日遅くまで頑張ったんだもん。

きっと大丈夫。

佐々木さんと岡林さんもついてるし。

でも、昨日……ちょっと遅かったから……。

寝不足で……なんてことはないよね?

朝は元気だったし……。

元気……。

ショウ君元気すぎだから!

そんな事を考えながら、電車の中で赤面してたら、

おばあちゃんと一緒にいた、小学校1、2年生くらいの女の子が声を掛けて来た。

「お兄ちゃん、危ないよ?ちゃんとつり革、つかまらへんと。」

そう言って、女の子は手すりに掴まる。

「あ、そうだね。危ないね。」

おいらは笑って席側に寄り、つり革に掴まる。

そのおいらの顔を見て、女の子もにっこり笑う。

「お兄ちゃん、可愛いなぁ。」

おいらはびっくりして女の子を見る。

「おいらより……お嬢ちゃんの方が可愛いよ。」

女の子がちょっと頬を赤くし、おいらを見上げる。

「いややわぁ、そんなんわかってるねんけどな……。」

はにかんで、そんな強気なことを言う女の子が可愛くて、

おいらがクスッと笑うと、女の子が少し離れて見ていたおばあちゃんを振り返る。

おばあちゃんが小さくうなずいて、女の子はおいらに赤いキャンディを差し出す。

「これな、秘密のアメちゃんなん。お兄ちゃんにあげる。」

「秘密?いいの?ありがとう。」

それを受け取って、窓の外を見ると、目的の駅に電車が入るとこだった。

「またね。」

おいらが言うと、女の子がクシャッと顔を崩して楽しそうに笑う。

「気を付けてな。」

女の子が手を振る。

奥でおばあちゃんが小さく会釈してくれる。

おいらが電車を降りると、女の子はおいらの背に向かって、大きな声で言う。

「アメちゃん舐める時な、周り、よく見なあかんねんで。」

周りを?

おいらは首を傾げて振り返る。

電車のドアは閉まりかけてて、女の子はニコニコ笑って手を振っている。

おいらは手の中のキャンディを見つめて……ポケットにしまった。



映画村は駅からそんなに遠くなかった。

表示の出ている看板を頼りにして歩いたらすぐ着いて、

中に入るとドキドキしてくる。

ここで撮影されたんだよね。

父ちゃんが好きだったから、小さいころはよく見てたっけ。

暴れん坊な将軍様とか、べらんめぇなお奉行様とか。

父ちゃんは全国を旅する3人組が好きだったけど、

おいらは忍者の軍団が大好きだったんだよね。

台詞もカッコ良くてさ。

おいらは中をゆっくり歩きまわる。

どこを歩いても江戸時代にタイムスリップしたみたい。

「あ、ここ、見たことある!」

奉行所の前を通ると、見たことある門と、お侍さん。

「中にも入れるので、見て行ってくださいね。」

お侍さんがニコッと笑ってくれる。

ちゃんとカツラも被ってメイクもしてる!

すごい!本当にテレビから出て来たみたいだ!

おいらが呆けた顔で見ていたら、お侍さんが優しい顔で笑って、おいらの背に手を添える。

「どうぞどうぞ。今日は暇だから、ご案内します。」

おいらは押されるまま奉行所に入って行く。

「写真撮る?」

お侍さんに言われて初めて写真に気づく。

そうだ、写真!

「撮りたい!」

おいら達は顔を寄せて携帯で自撮りする。

撮った写真を見て嬉しくなる。

写真になると、よりお侍さんが江戸時代の人に見える!

「わぁ、ありがとうございます。」

中をゆっくり案内してもらって、お侍さんが撮影した時の話もしてくれる。

「チョイ役だけど、ちょこちょこ出てるから。」

「すごいですね。テレビで見つけたら楽しくなっちゃう。」

おいらが、んふふと笑うと、照れたように頭を掻くお侍さん。

その仕草が可愛くて、おいらがさらに笑うと、お侍さんがじっとおいらを見つめる。

「……どこに泊まってるの?いつまで?」

「え?」

なんでそんなことを聞かれたのか、首を傾げると、お侍さんが優しく笑う。

「あ、一人なら、夕飯とかどうかなと思って……。」

「ああ、ありがとうございます。でも、夜には帰っちゃうから。」

「どこ?」

「東京。」

「東京か……、あ、来週、行く予定があるから、行った時にでも……。」

「あはは。お侍さんがナンパしてるみたい。」

おいらがクスクス笑うと、お侍さんはまた頭をかく。

「ほんとだ、何やってんだろ。男が男ナンパしてどうする!ごめんね。」

「いいえ。わかってるから大丈夫。」

おいらはお侍さんに礼をしてお奉行所を後にする。

「あ、でも、本当にもしよかったら……。」

お侍さんは言い掛けて首を振る。

「もしよかったら、あっちに衣装着れるとこもあるから、行ってみて。

 メイクもしてくれるから、おもしろいよ。」

へぇ~、そんなとこあるんだ。

面白そうだね。

歩きながらも周りを見回す。

どこもかしこもテレビの中みたいで、写真を撮るのに夢中になった。










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