miyabi-night(5人)

miyabi-night 十二話 - japonesque side story -

 ←ふたりのカタチ (101) →ふたりのカタチ (102)


「ごめんよ。」

櫻井が暖簾をくぐると、頬にあんこを付けた智と、団子に齧り付いた雅紀が振り返る。

その奥で正座した和が、筆を握り締め、何かを熱心に書いていて、

二人が来たことに気づく様子すらない。

「い、いらっはい。」

雅紀が団子を頬張りながら、立ち上がる。

手の甲で口を拭い、一気に団子を飲み込むと、喉に詰まったのか目を白黒させる。

「んっ!んんんっ!」

「ま、雅紀!」

慌てて智が湯呑を渡す。

渡された茶で団子を流し込み、はぁと息をつくと、二人に向かってにっこり笑う。

「はぁ、もう死ぬかと思った!」

智が隣でおかしそうに笑う。

「珍しいね。二人おそろいなんて。」

雅紀が潤と櫻井を交互に見る。

「ああ、偶然出くわして……。」

潤と櫻井が顔を見合わせ、苦笑いを浮かべる。

偶然出くわしたのが陰間茶屋の裏木戸などと、雅紀と智の前では言えない。

「で、あれは何をしている?」

櫻井が不思議そうに奥にいる和を覗き込む。

「ああ、双六作ってるんですよ。」

雅紀が可笑しそうに答える。

「双六?」

「挿絵を暁に頼むってんで、どこに何を描いて欲しいか書きこんでるとこで。」

智も和の絵を思い出したのか、楽しそうに笑う。

「暁?それは大層な双六だねぇ。」

「す、双六と言えば、子供も一緒に遊ぶもの……、暁に描いて欲しいとは……。」

「あははは。翔さん、さすがに暁だって、双六に女のそれとか描かねぇよ。」

智は口の端についたあんこをぺろっと舐めながら、柔らかい視線を櫻井に向ける。

その視線を感じただけで、どきりとする。

智殿はずるい……、視線だけでこんな気持ちにさせる……。

若干染まった頬を、潤が見逃すわけもない。

「ほら、櫻井様、可愛い顔をしなさって……。」

潤が櫻井の顔を覗き込んで言うと、櫻井の顔がさらに赤くなる。

「や、やめないか!」

「また、そうやって照れる姿が可愛らしい!」

潤が楽しそうに、嫌がる櫻井の顔を追いかける。

「その辺で止めてやってくんねぇか?」

智が笑いながら潤を諫める。

「それ以上可愛らしくなっちまったら、町中に置いとけねぇからな?」

「さ、智殿!」

潤が目を見開いて二人を見比べる。

「え?あれ?そういうこと?」

智は満足そうにうなずいて、チラッと潤を見上げる。

「ま、そういうこったな?」

「それはそれは……。」

「智殿!」

櫻井が、窘(たしな)めるように智を睨む。

その顔を見て、智が笑う。

「いいじゃないか。潤様は人の色恋に口出しなんざ、しねぇよ。」

「そ、そういう問題ではなく……!」

いつになくおどおどして見える櫻井に、潤が溜め息をつく。

「こんなに可愛くなっちゃって。恋は人を変えるねぇ?」

「そうだよ。恋は人を強くする!」

雅紀はそう言って、奥の和に目を向ける。

「だから俺も……なんとかやっていける。」

「雅紀殿……。」

櫻井が切なそうに雅紀を見つめると、潤が大きく頭を振る。

「あ~あ、俺だけかい?独り身は。」

「潤様にはお江戸八百八町の女が付いてんだろ?

 恋人なんかできた日にゃ、江戸が女の涙で大洪水だ。」

智は声を上げて笑うと、潤も釣られて笑う。

「仕方ないねぇ。だてに二枚目しょってるわけじゃないからね。」

「だろ?」

顔を見合わせ、一頻り笑うと、雅紀が真面目な顔で櫻井を見る。

「で、今日は揃ってどうしたの?」

「ああ、まずはこれ。」

潤が土産の団子を雅紀に差し出す。

「え……まさか。」

「すまないね。まさか被るとは思わなかったよ。」

兎屋の団子の包みを見て、智と雅紀が顔を見合わせる。

「で、小耳にはさんだんだけどね……。」

潤が神妙な顔で話し出す。

「侑李に……堺屋が絡んでるらしい。」

「堺屋?」

声を上げたのは奥にいる和だ。

「堺屋がどうかした?」

筆を持ったまま、和がやってくる。

「侑李殿がいなくなる寸前、堺屋の小僧が使いに来たらしい。」

櫻井が簡単に説明する。

「使い?言伝(ことづて)?」

潤が小さくうなずく。

「それを聞いた直後に侑李が姿を消した。」

「それだけじゃ……。」

雅紀が口を挟む。

「堺屋は……お奉行と繋がってる。」

櫻井の確信に満ちた言葉に、四人が息を飲む。

「じゃ、やはり鳥井様が……。」

雅紀の顔がにわかに曇る。

「侑李を隠しているのが鳥井様だとして、どうやって侑李に辿り着く?

 まさか自分ちに隠してるとは思えねぇよな?」

みんなが小さくうなずき、考えるように顔を歪めると、櫻井がぽつりとつぶやく。

「団子……。」

「団子?」

智が聞き返し、うなずいた櫻井が続ける。

「団子を、堺屋の小僧が買いに来るらしい。

 しかもそれを堺屋じゃない所に持って行ってる。」

「それ……。」

雅紀が目を見開いて櫻井を見上げる。

「たぶん……。」

5人で顔を見合わせると、智がぽんと膝を叩く。

「ここは調べてみねぇといけねぇな?」

みんなが一斉にうなずく。

「明日にでも、おいらが行って来るから、みんなは手出しすんじゃねぇぞ?」

「どうして?」

櫻井が不満そうに智を見つめる。

「奉行が関わってるなら、翔さんは関わらない方がいい。」

「だからって……。」

「おいらの言うことが聞けねぇのかい?」

「……智殿……。」

口を尖らせる櫻井を置いて、智は潤に目を向ける。

「あんただって、今、奉行に目を付けられたら大変だ。

 木挽町だって狙われてんだろ?」

「そうだけど……。」

潤も不満をあらわにする。

「雅紀も同じだ。和はなかなか抜けらんねぇだろ?」

みんなを順に見回し、智が大きく腕を組み直す。

「わかったら大人しくしとけ。いいな?」

四人は不満そうにしながらも、しぶしぶうなずいた。










関連記事
スポンサーサイト



総もくじ  3kaku_s_L.png a Day in Our Life
総もくじ  3kaku_s_L.png Kissからはじめよう
総もくじ  3kaku_s_L.png Step and Go
総もくじ  3kaku_s_L.png 果てない空
総もくじ  3kaku_s_L.png Love so sweet
総もくじ  3kaku_s_L.png タイムカプセル
総もくじ  3kaku_s_L.png Hello Goodbye
総もくじ  3kaku_s_L.png season
もくじ  3kaku_s_L.png 五里霧中(5人)
総もくじ  3kaku_s_L.png 夏の名前
もくじ  3kaku_s_L.png Troublemaker(5人)
もくじ  3kaku_s_L.png Crazy Moon(5人)
総もくじ  3kaku_s_L.png Welcome to our party
総もくじ  3kaku_s_L.png Deepな冒険
もくじ  3kaku_s_L.png 花火(やま)
もくじ  3kaku_s_L.png miyabi-night(5人)
もくじ  3kaku_s_L.png ZERO-G
もくじ  3kaku_s_L.png 復活LOVE(やま)
総もくじ  3kaku_s_L.png 三日月
総もくじ  3kaku_s_L.png WONDER-LOVE
総もくじ  3kaku_s_L.png みんなと作ったお話
もくじ  3kaku_s_L.png Believe
もくじ  3kaku_s_L.png コスモス
もくじ  3kaku_s_L.png MONSTER(やま)
もくじ  3kaku_s_L.png 智君BD
もくじ  3kaku_s_L.png ブログ
もくじ  3kaku_s_L.png ティータイム
【ふたりのカタチ (101)】へ  【ふたりのカタチ (102)】へ
  • TB(-)|
  • CO(-) 
  • Edit
  • 【ふたりのカタチ (101)】へ
  • 【ふたりのカタチ (102)】へ