「ふたりのカタチ」
ふたりのカタチ(やま)【81~100】

ふたりのカタチ (95)

 ←miyabi-night 七話 - japonesque side story - →miyabi-night 八話 - japonesque side story -


いいのかな?と思っているうちに時間は過ぎて行く。

おいらは意を決して携帯を掴む。

「ええい!行こう!京都に!」

どこかのCMみたいなことを口にして、自分を奮い立たせ、携帯と財布を掴む。

テーブルの上の、ショウ君のホテルのメモをポケットに入れ、

戸締りだけして家を飛び出る。

やっぱり、駅まで歩く間に何度も考える。

迷惑じゃないかとか、邪魔になるんじゃないかとか。

でも、類さんもカズも行っちゃえって言ってくれたし、

男が一度思い立ったら行動あるのみ!

と、なんとか鼓舞してターミナル駅の窓口に向かう。

一番早い新幹線の切符を買って、新幹線に飛び乗った。

出ないと……また心が折れそうだったんだもん。

新幹線の中でもまだ考える。

引き返すなら今。

ショウ君に会わずに帰れば、なかったことにできる。

正直、こんなことしてる自分にびっくりもしてて、

愛って偉大だなってつくづく思う。

一日会えないだけでショウ君に会いに行っちゃうなんて!

昔は会いたくても会えなくて、苦しい想いもしたなって考える。

切なくて、泣きそうになったこともいっぱいあった。

でも今は、毎日一緒にいて、愛されて、愛して。

それでも足らずに会いに行くなんて!

昔のおいらが聞いたら呆れちゃうよ。

何を贅沢なって!

それでも、今一緒にいたい。

今、ショウ君の顔が見たい。

この想いは大きくて……。

おいらがこんなに貪欲だったなんて知らなかったよ。

どこまでも延々に欲しがって、狂っちゃうんじゃないかって思う。

もう狂ってる?

会いに行っちゃうくらいだもん。

車窓から見る景色は徐々に田んぼや山に変わって行く。

その緑に目を馳せて、仕事中のショウ君を想う。

少し……心が落ち着いてくる。

ショウ君は今頑張ってる。

ずっと夜も遅かったし、毎朝、眠そうだった……。

体力だってきっと限界だったはず。

そんなショウ君に心配かけたおいら……。

夜だって……きっとおいらの為にしてくれてたはず……。

おいらが寂しくないように。

おいらの気持ちが落ち着くように……。

ショウ君……。

なんでも一生けん命なショウ君。

明日のプレゼンも成功する。

会社でも、みんなに慕われて、上司からも可愛がられて。

どんどん出世もして……。

そう言えば、独立しちゃうって田淵さんの話。

本当にショウ君、誘われてるのかな?

出張が終わったら、おいらにも話してくれる?

おいらじゃ、なんの役にも立たないけど……。

窓の外を見ながら、いろんなことを考えていたら、

気付けば、窓の外の景色は都会の様子に変わってて……。

あっという間に京都に着いた。

京都って、思ったより近い!

改札を出て、ポケットからメモを取り出す。

どっちに行ったらいいのか全くわからない。

一人で来るのなんて初めてだ。

修学旅行でも来たし、仕事初めてからも何回か来てるけど、

全部田村さん任せで……。

うろ覚えてうろうろするより、聞いた方が早いよね。

駅員さんを捕まえて、住所を見せると、優しく教えてくれる。

なんか……京都弁って優しい。

可愛い感じがするね。

言われた方に歩いて行く。

中央口から出ればすぐって言ってたけど……。

ショウ君は何時頃、京都に来るんだろう。

ホテルが近づいてくると、だんだんドキドキしてくる。

ショウ君に会ったら……なんて言えばいい?

「やぁ、ショウ君。」

やぁって何よ。

「奇遇だね?こんなとこで会うなんて。」

こんなとこに、おいらがいる方がおかしいでしょ!

「会いに来ちゃった、てへっ。」

女の子ならいいけど、おいらじゃ無理。

「家の前にね、迷子のペンギンがいてね、そいつが家は京都だって言うんだよ。」

こんな言い訳、信じる人いる?

あ~、なんて言えばいいんだろう!

ホテルの場所を確認して、どうしようかと考えて……。

取りあえず、近くのコーヒーショップに入ることにした。

コーヒーショップに入って、コーヒーを注文する。

すぐに田村さんに電話をかける。

田村さん、仕事中だよね。

こんな電話しても大丈夫かな……。

呼び出し音が2度鳴って、田村さんが出る。

「もしもし、大野さん?」

「はい。忙しい時にすみません。」

「いや、大丈夫だけど、どうしたの?煮詰まってる?」

「ううん。そうじゃないんだけど……。」

おいらが言いよどむと、田村さんが怪訝そうに聞き返す。

「何?まさか、花沢さん?」

「違う違う。そうじゃなくて……。」

ああ、おいら田村さんにも心配かけてたね。

「あの……佐々木さん、出張?」

「そうだけど?櫻井さんも一緒だよね?後、岡林君も。」

「そうなんだけど……。」

「なになに?櫻井さん、何か忘れ物しちゃった?」

「いや、ショウ君は忘れ物なんて滅多にしないから……。」

「じゃ、どうしたの?」

「ん……佐々木さんの出張のスケジュール、知ってる?」

「ああ、福岡行って、京都に泊まるって言ってたけど……。」

「京都は何時頃……?」

「夕飯は京都だって言ってたから、夕方には着くんじゃない?」

「夕方……。」

「次の日が本番みたいなもんだからね。遅くはならないと思うよ。」

「そうか~、ありがとう。」

「え?それだけ?」

「う、うん……。」

暫く沈黙が続いて、田村さんが疑うように聞いてくる。

「今……家?」

「……違う。」

おいらの声は小さい。

「……まさか、京都?」

「…………。」

おいらは恥ずかしくて返事ができない。

「あっはっはっは。そうか、京都か。大野さんも情熱的だねぇ。」

「じょ、情熱的って……。」

「一日も離れていられないのか。

 うん、大野サトシの絵は今、そんな感じなんだね。」

「そ、それは……。」

「いいの、いいの。そういう時もあるよ、長い人生だ。」

「た、田村さん!」

田村さんは笑いながら電話を切った。

はぁ、田村さんにバレちゃった。










関連記事
スポンサーサイト



 関連もくじ一覧 ▼ 
総もくじ 3kaku_s_L.png a Day in Our Life
総もくじ 3kaku_s_L.png Kissからはじめよう
総もくじ 3kaku_s_L.png Step and Go
総もくじ 3kaku_s_L.png 果てない空
総もくじ 3kaku_s_L.png Love so sweet
総もくじ 3kaku_s_L.png タイムカプセル
総もくじ 3kaku_s_L.png Hello Goodbye
総もくじ 3kaku_s_L.png season
総もくじ 3kaku_s_L.png 夏の名前
総もくじ 3kaku_s_L.png Welcome to our party
総もくじ 3kaku_s_L.png Deepな冒険
総もくじ 3kaku_s_L.png 三日月
総もくじ 3kaku_s_L.png WONDER-LOVE
総もくじ 3kaku_s_L.png みんなと作ったお話
総もくじ  3kaku_s_L.png a Day in Our Life
総もくじ  3kaku_s_L.png Kissからはじめよう
総もくじ  3kaku_s_L.png Step and Go
総もくじ  3kaku_s_L.png 果てない空
総もくじ  3kaku_s_L.png Love so sweet
総もくじ  3kaku_s_L.png タイムカプセル
総もくじ  3kaku_s_L.png Hello Goodbye
総もくじ  3kaku_s_L.png season
もくじ  3kaku_s_L.png 五里霧中(5人)
総もくじ  3kaku_s_L.png 夏の名前
もくじ  3kaku_s_L.png Troublemaker(5人)
もくじ  3kaku_s_L.png Crazy Moon(5人)
総もくじ  3kaku_s_L.png Welcome to our party
総もくじ  3kaku_s_L.png Deepな冒険
もくじ  3kaku_s_L.png 花火(やま)
もくじ  3kaku_s_L.png miyabi-night(5人)
もくじ  3kaku_s_L.png ZERO-G
もくじ  3kaku_s_L.png 復活LOVE(やま)
総もくじ  3kaku_s_L.png 三日月
総もくじ  3kaku_s_L.png WONDER-LOVE
総もくじ  3kaku_s_L.png みんなと作ったお話
もくじ  3kaku_s_L.png Believe
もくじ  3kaku_s_L.png 智君BD
もくじ  3kaku_s_L.png ブログ
もくじ  3kaku_s_L.png コスモス
【miyabi-night 七話 - japonesque side story -】へ  【miyabi-night 八話 - japonesque side story -】へ
  • TB(-)|
  • CO(-) 
  • Edit
  • 【miyabi-night 七話 - japonesque side story -】へ
  • 【miyabi-night 八話 - japonesque side story -】へ