「ふたりのカタチ」
ふたりのカタチ(やま)【81~100】

ふたりのカタチ (93)

 ←miyabi-night 五話 - japonesque side story - →miyabi-night 六話 - japonesque side story -


「出張かぁ、どちらまで?」

どうしよう?

言わない方がよかったような気がするけど……。

「……福岡と……京都。」

何て言ったらいいかわからなくて……正直に言ってみる。

「え?じゃあ二泊?」

「ううん、一泊だって言ってたけど……。」

おいらの声が小さくなる。

この話、すぐ終わらせたいけど……。

「クックック。櫻井さん、サトシさんを一人にさせるのが心配なんですね?」

「ははは……子供みたいだよね、おいら。」

おいらは乾いた笑いで答えて……。

「子供じゃないから心配なんでしょ?サトシさん、モテるから。」

「おいら、モテてなんて……。」

「モテモテですよ。サトシさんに誘われて、断る人なんていないから。

 女も男も。」

類さんがクスクス笑う。

ああ、話題を変えたい!

何かない?話題!

「え……あ、CMの方はできたんですか?あの安彦先生の……。」

「ああ、順調です。まだ出来上がってはないですけど……。

 そう言えば、先生がまたサトシさんと会いたいっておっしゃってましたよ。」

「本当?嬉しい!おいら、本当に大好きだったから。」

「じゃ、セッティングしましょうか?CMがひと段落したら。」

「ぜひ!」

「先生も、サトシさんのファンみたいだから、喜んでくれます。」

「え?おいらの?」

「一緒に仕事することになって、画集を買ったらしいんですけど……。

 あの、個展の時の。」

先生がおいらの画集を……。

先生が画集を開いているところを想像してみる。

恥ずかしい……、恥ずかしいけど……。

……くっ!テンション上がっちゃう!

「嬉しすぎて何も言えない……。」

「ふふふ。サトシさんのファンはいっぱいいるんですよ。」

「そ、そんなことないけど……。」

「CMも出来上がったら試写に呼びますね。見たいでしょ?」

「見たい!」

「……声が、上がって来ましたね。」

「え……?」

「ちょっとテンション、下がってたでしょ?」

おいらってわかりやすいのかな……。

マー君とジュン君でちょっと上がったつもりだったんだけど……。

仕事モードで電話に出たし、第一、声だけなのに、バレバレなんて……。

「櫻井さんがいないから?」

「…………そうかも。」

おいらが小さく応えると、類さんがしばらく黙る。

「……類さん?」

心配になって声を掛けてみると、はぁと溜め息が聞こえる。

「……本当に、あなたは可愛い人ですね。

 これじゃ、出張だって行きたくなくなる。」

「そんなこと……。」

「きっと櫻井さんは仕事しながら心配でしょうね。

 あなたの周りに腹をすかせた狼が寄ってこないかって。」

ショウ君までバレバレだ。

「そしてたぶん……腹をすかせた狼には、俺も入ってて。」

ん……そう……だね……。

「こんな電話してたら怒られちゃうかな?」

「怒ったりしないよ、ショウ君は。

 ちゃんとおいらの仕事、わかってくれてる……。」

「わかってても心配は心配でしょう?」

ん~、……心配はしてるよね。メールするくらいだから。

「サトシさんも、寂しくて仕方ないし。」

おいらは何も言えなくなる。

その通りなんだもん。

「寂しいなら……。」

類さんの言葉が止まって、電話越しに身構える。

おいらの気持ちはちゃんと伝えてあるはず!

類さんもわかってくれてるはず。

ううん、わかってくれてなくても……。

「行っちゃえばいいのに。」

「え……?」

行っちゃえば……?

おいらは拍子抜けして、声が出ない。

「九州でも、京都でも、会いに行けばいいでしょう?」

「え……でも、一泊だし……。」

「一泊でも、寂しいんでしょう?」

「……うん。」

「離れていたくないんでしょう?」

「うん……。」

「だったら、自分に正直に行けばいい。

 仕事が立て込んでるなら仕方ないけど、余裕があるなら……。

 俺ならそうしますよ。」

「でも、そう言うのって……重くないですか?

 一人でいられないなんて……。」

「そうかな?これからずっとそうなら、それも考えものでしょうけど、

 今は一緒にいたい時期……違いますか?」

……その通りだと思う。

この間のことがあったから……。

今は離れていたくないのかも……。

「そのうち、どんなに大恋愛で結ばれたって、

 亭主元気で留守がいいって時がやってきますから。」

「……そういうもの?」

「……少なくとも、出張くらいは待ってられるようになりますよ。」

類さんの声は相変わらず柔らかくて、

依存してるんじゃないかと、心配していたおいらの気持ちも和らいでいく。

「もちろん、俺に慰めて欲しいって言うなら、喜んで伺いますよ?」

「え、ええ?……いや、大丈夫です。」

クスクス笑う類さんの声を聞きながら、

ショウ君が出張で、せいせいしている自分を想像してみる。

……全く想像できない……。

その境地は遠いなぁ。










関連記事
スポンサーサイト



 関連もくじ一覧 ▼ 
総もくじ 3kaku_s_L.png a Day in Our Life
総もくじ 3kaku_s_L.png Kissからはじめよう
総もくじ 3kaku_s_L.png Step and Go
総もくじ 3kaku_s_L.png 果てない空
総もくじ 3kaku_s_L.png Love so sweet
総もくじ 3kaku_s_L.png タイムカプセル
総もくじ 3kaku_s_L.png Hello Goodbye
総もくじ 3kaku_s_L.png season
総もくじ 3kaku_s_L.png 夏の名前
総もくじ 3kaku_s_L.png Welcome to our party
総もくじ 3kaku_s_L.png Deepな冒険
総もくじ 3kaku_s_L.png 三日月
総もくじ 3kaku_s_L.png WONDER-LOVE
総もくじ 3kaku_s_L.png みんなと作ったお話
総もくじ  3kaku_s_L.png a Day in Our Life
総もくじ  3kaku_s_L.png Kissからはじめよう
総もくじ  3kaku_s_L.png Step and Go
総もくじ  3kaku_s_L.png 果てない空
総もくじ  3kaku_s_L.png Love so sweet
総もくじ  3kaku_s_L.png タイムカプセル
総もくじ  3kaku_s_L.png Hello Goodbye
総もくじ  3kaku_s_L.png season
もくじ  3kaku_s_L.png 五里霧中(5人)
総もくじ  3kaku_s_L.png 夏の名前
もくじ  3kaku_s_L.png Troublemaker(5人)
もくじ  3kaku_s_L.png Crazy Moon(5人)
総もくじ  3kaku_s_L.png Welcome to our party
総もくじ  3kaku_s_L.png Deepな冒険
もくじ  3kaku_s_L.png 花火(やま)
もくじ  3kaku_s_L.png miyabi-night(5人)
もくじ  3kaku_s_L.png ZERO-G
もくじ  3kaku_s_L.png 復活LOVE(やま)
総もくじ  3kaku_s_L.png 三日月
総もくじ  3kaku_s_L.png WONDER-LOVE
総もくじ  3kaku_s_L.png みんなと作ったお話
もくじ  3kaku_s_L.png Believe
もくじ  3kaku_s_L.png コスモス
もくじ  3kaku_s_L.png MONSTER(やま)
もくじ  3kaku_s_L.png 智君BD
もくじ  3kaku_s_L.png ブログ
【miyabi-night 五話 - japonesque side story -】へ  【miyabi-night 六話 - japonesque side story -】へ
  • TB(-)|
  • CO(-) 
  • Edit
  • 【miyabi-night 五話 - japonesque side story -】へ
  • 【miyabi-night 六話 - japonesque side story -】へ