「ふたりのカタチ」
ふたりのカタチ(やま)【81~100】

ふたりのカタチ (86)

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おいらは、落ちて行く夕陽を見ながら、帰り道を急ぐ。

早く帰ってぶり大根煮込まなくっちゃ。

類さんは、少し話をして、穏やかな笑顔で会社に戻って行った。

ちゃんと伝わってると思う……。

類さんの笑顔が、そう言ってると思った。

もう、話は終わったって、ショウ君に連絡した方がいいかな?

きっと心配してるよね。

携帯を開いてメールを打つ。

『ちゃんと話できたよ。

 八百屋のおじちゃんにおまけしてもらったから、

 今日はぶり大根!』

携帯を握って、帰り道を急いでたら、1分もせずにメールの着信音。

『理解!お腹空かせて速攻で帰る!』

おいらはメールを見て、んふふっと笑う。

さ、大根、じっくり煮込まないと!



「おっ、旨そ。」

タオルを肩に巻き、湯気を立てたショウ君が目の前でぶり大根に齧り付く。

おいらもそれを見ながら、大根に箸を入れる。

ショウ君、相当頑張って仕事を終わらせたみたい。

帰って来たのは9時頃で、ショウ君にしてはすっごく早い。

「九州は大丈夫だったの?」

おいらが聞くと、ぶりの骨を取りながら、ショウ君はちょっと眉を上げて答える。

「大丈夫大丈夫。九州も大変みたいでさ、なかなか人が育たなくって……。」

ショウ君はやっと取れた骨を皿の端に寄せて、嬉しそうにぶりを口に入れる。

「その点、俺のとこは何もしなくてもスクスク育ってくれたから。」

美味しそうに口をもぐもぐし、にっこり笑うショウ君。

「ショウ君だからだよ。」

「ん?」

ショウ君が首を傾げる。

「ショウ君だから、みんなが着いてきてくれて、スクスク成長してくれたんだよ。」

「そんなことないよ。あいつらはどこでだって成長する。

 俺が入った時より全然できてて、ムカツクくらい。最初っから。」

ショウ君は楽しそうに笑って、大きな口を開けてご飯を詰め込む。

口いっぱいにご飯を入れて食べるショウ君。

昔から、見てるだけで幸せになる光景。

「んふふふふ。」

「……何?」

「ううん。くふふふふ。」

「何よ?」

訝しそうなショウ君。

「何でもないって。」

「そんないやらしい笑い方しちゃって。」

「そんなショウ君だから、みんなスクスク成長できたんだなって。」

「ウチのチームは優秀なのが揃ったの。」

たくあんを摘まみながら、自信満々にそう言い切る。

「ショウ君は小さい頃からリーダーに向いてたよ。

 ショウ君とジュン君が、おいら達を引っ張ってくれてた。」

おいらはぶりを食べながら、昔を思い出す。

いつでも、ショウ君が先頭で……。

遊ぶ時も、学校でも……。

あの竜の木の時だって!

「だから、高校の時、生徒会長だったんだよ。

 みんなもちゃんとわかってるんだよね。んふふ……。」

自分のこと自慢してるみたいに嬉しくって、また笑い声が漏れちゃう。

ショウ君はお味噌汁に視線を合わせたまま、お椀を啜る。

「本当にみんなの中心にいたのはサトシだって気づいてないの?」

「え?」

意外な言葉に目が丸くなる。

「サトシがいたから、みんながまとまって、サトシがいるから、みんなが笑顔になってた。」

「な、何言ってるの、ショウ君。」

おいらはびっくりして箸を咥えたまま動きが止まる。

「そうなんだよ。」

ショウ君がクスッと笑う。

「それに気づかないサトシだから、みんなが寄って来ちゃうんだよな……。

 俺の心配は永遠に続くね。」

ショウ君が渋い顔をしながら、味噌汁をテーブルに置く。

「で、夕方寄って来た花沢さんはどうだったの?」

ショウ君はポリポリとたくあんを齧る。

「ちゃんと話できたよ。」

おいらも冷ややっこに葱を乗せ、口に運ぶ。

「類さんもわかってくれた……。

 これからも一緒に仕事頑張りましょうって。」

おいらはにっこり笑って見せたけど、ショウ君はまだ疑い深そうに眉間に皺を寄せてる。

「大丈夫だって。類さん、奥さんのこと愛してるもん。」

「あいつの愛は一つじゃないとか言わなかったか?」

「言ってないし。」

「愛は無限にあるから、いろんな人に分けるとか……。」

「言ってませんでした。」

ちょっとショウ君を睨むと、ショウ君はやっとクスッと笑ってくれる。

「ならいい。サトシに寄ってこなければ……。

 あいつがどこで誰に愛を囁こうと、浮気してようと……。」

「翔君!」

片頬を膨らませてショウ君を止める。

ショウ君は笑いながら、大根を摘まんで口に放り込む。

「でも、これからも仕事は一緒にするし……。

 これが終わっても、また一緒に仕事するかもしれないよ。」

「それはわかってる……。わかってるけど……。」

「けど……?」

「……ヤキモチは焼くかも。」

ショウ君が真面目な顔でそう言ったから、おいらはおかしくてクスクス笑う。

「それ、類さんも言ってた。きっと、ちょっとしたことでもヤキモチ焼かれちゃうって。」

ショウ君は、仏頂面で口を尖らせる。

「あいつに見透かされるのはおもしろくないな。」

「んふふふ。ショウ君と類さん、似てるとこあるから、

 案外、仲良くなったら気が合うかもよ?」

「なるか!」

ショウ君は、勢いよくご飯を口に入れ、飲み込もうとしてむせる。

「げほっ……げほっ……。」

「ほら、ショウ君。」

急いで冷蔵庫に行って、ミネラルウォーターを取って来る。

それをショウ君に渡すと、ショウ君はゴクゴクと水を飲んで、やっと咳が止まる。

「俺は……一生ヤキモチ焼くし、いつでもサトシを優先するよ。

 俺にとってはサトシが一番でサトシが全てだから。」

「ショウ君……。おいらも……。

 おいらもショウ君だけだよ。」

おいらは、ショウ君の頬についたご飯粒を摘まんで口に入れる。

「こんな可愛いとこも大好き。」

ショウ君が、ちょっと恥ずかしそうに視線を外して、スッとおいらの腰に腕を回す。

「カッコ悪……。」

「そこが可愛いんだよ。」

ショウ君の肩に手を置いて、ショウ君のおでこに唇を当てた。

可愛いショウ君に、キスしたくなったから。










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