「ふたりのカタチ」
ふたりのカタチ(やま)【81~100】

ふたりのカタチ (85)

 ←WONDER-LOVE Never -13- →WONDER-LOVE Never -14-


「類さんは、おいらに惹かれてたんじゃないと思う……。」

おいらは類さんに笑いかけて、ゆっくりと話す。

「類さんが言ったように……惹かれるにもいっぱいあって、

 きっと、田村さんが作り上げたおいらと本当のおいらの違いに、

 戸惑ったんだと思います……。

 雑誌の中のおいらは……、おいらであっておいらじゃないような気がするから……。

 それを勘違いして……。」

「そんなことは……。」

「類さんは奥さんを愛しています。そうですよね?」

類さんは静かにうなずく。

「それとは……やっぱり違うでしょ?

 おいらも一緒です。類さんに惹かれたけど、それはショウ君のとは違う。

 おいらね、自分でも気づかないうちに、心の中をモヤモヤさせてて……。

 類さんがあんまり大人すぎて……頼りたくなっちゃって……。

 頼っちゃいけないのに……。」

「サトシさん……。」

「だからね、類さん、おいら、類さんのこと好きです。

 類さんの笑顔、本当に大好き。

 でも、それはショウ君を好きな好きとは違くって……。

 憧れって言うか、アイドルみたいって言うか……。

 大きく言ったら愛なのかもしれないけど、類さんが愛してるのは奥さんでしょ?」

類さんはおいらを見つめたまま、ふぅと大きく息を吐く。

息を吐いて、顔を上げてニコッと笑う。

「やっぱり、サトシさんには敵わないなぁ。」

コーヒーカップを握る類さんの長い指が、カップの縁をなぞる。

「類さん……。」

「確かにそうです。うちのを好きなのとは違う。

 でも、俺もサトシさんが好きですよ。

 これからも一緒に仕事したいし、サトシさんの感性に刺激もされたい。」

類さんが、イケメた顔で片目をつぶる。

おいらもふにゃっと笑って類さんを見る。

類さんに伝わったのがわかったから。

上手く言えないおいらの言葉を、感じ取ってくれた……。

「俺……、この仕事を最後にウチの会社を辞めようと思ってます。」

「え……類さん……?」

おいらは息を飲む。

大きな会社で、忙しいかもしれないけど、充実した仕事をしてるように見えたのに……。

「それを決意させてくれたのが、サトシさんなんですよ。」

「お……おいら?」

「そう、あの美術館で。」

「おいらは何も……。」

類さんはふわっと笑って、コーヒーを口にする。

「何もしてなくても、あそこに現れた、それだけで十分だったんです。」

口にしたカップを置いて、おいらを見つめる。

優しい視線。

「あのポスターの、辞めちゃった取締のとこに行こうと思って。」

「え、類さん……。」

「俺は、あの人を追いかけてこの会社に入って、やっと仕事がわかるようになったら、

 会社を辞めちゃって……。

 自分が何をしたいのか、何をしてるのか、忙しさもあって、よくわからなくなって……。

 俺も、モヤモヤしてたんですね。」

類さんがニコッと笑う。

「おいらと一緒。」

「はい。」

類さんは小さくうなずくと、両手を組んで、自分の親指で親指を撫でる。

「あの人を追いかけようと思っても、家庭もあるし、

 この会社は世間体も良くて、安定もしてる。

 忙しいけど、仕事自体に不満があるわけじゃない……。

 評価されてないわけでもない。

 さらに悶々として……。」

類さんの気持ち、ちょっとわかる。

おいらはサラリーマンじゃないから、本当のとこはわかんないのかもしれないけど、

きっと家庭を持つってそう言うことなんだよね。

責任と将来を見据えた安定。

おいらに足りなかった責任は大事だと思うけど、

安定は、人それぞれだと思うんだけどな……。

類さんの奥さんは、類さんの決めたことなら、

きっと喜んで着いてきてくれると思うよ。

「もちろん、うちのに話したら、やりたいようにやりなよって言ってくれる。

 それがわかってるから、うちのにはなかなか言えなかった。

 できた嫁なんで。」

類さんが、ちょっと誇らしげで、ちょっと寂しそうに笑う。

「それを決意させてくれただけでも感謝してます。」

「おいらは何も……。」

「そうですね。サトシさんが何かしたわけじゃない。

 でも、俺に決心させてくれたんです。

 俺がなりたかったもの、やりたかったことを思い出させてくれた……。」

類さんが首を傾けて、おいらを覗き込むように見る。

「不思議ですね。きっと一緒に仕事をして……。

 サトシさんを見てるうちに思い出していたんでしょうね。

 俺が何をしたいのか……。」

「類さんは……、その取締のとこに行って、何がしたいの?」

おいらは両手でカップを持って、口に運ぶ。

「あの人の感性に触れて……吸収したい。

 できるかどうかわからないんですけど。

 でも、一緒に仕事したら、見えてくるものがあると思う。

 そんな人ですから。」

類さんが優しい顔で笑って、コーヒーを口にする。

「俺は、あんな広告が作りたかったんで。」

ふわっと笑う類さんは本当にイケメンで……。

やっぱり見惚れちゃう。

「うん。そうだね。あんなのが作れるように、応援するね。」

「ありがとう……。

 だから、この会社での最後の仕事は、ちゃんと終わらせたいんです。」

「うん。おいらもそう思う。」

「もう少し……よろしくお願いします。」

「こちらこそ。」

類さんが頭を下げるのに合わせて、おいらも頭を下げる。

顔を上げるタイミングが一緒になって、思わず二人で笑顔になる。

「俺達、気が合う。」

「うん。」

おいらも笑ってコーヒーを飲む。

すると、類さんが、ふふふと変な笑い方をする。

「ん?どうしたの?」

「これ見たら、櫻井さんがヤキモチ焼くかなと思って。」

「タイミングが合ったくらいで?」

おいらは、ん~と考えてみる。

「……焼くかも。」

類さんが声を上げて笑うから、おいらも声を上げて笑った。










関連記事
スポンサーサイト



 関連もくじ一覧 ▼ 
総もくじ 3kaku_s_L.png a Day in Our Life
総もくじ 3kaku_s_L.png Kissからはじめよう
総もくじ 3kaku_s_L.png Step and Go
総もくじ 3kaku_s_L.png 果てない空
総もくじ 3kaku_s_L.png Love so sweet
総もくじ 3kaku_s_L.png タイムカプセル
総もくじ 3kaku_s_L.png Hello Goodbye
総もくじ 3kaku_s_L.png season
総もくじ 3kaku_s_L.png 夏の名前
総もくじ 3kaku_s_L.png Welcome to our party
総もくじ 3kaku_s_L.png Deepな冒険
総もくじ 3kaku_s_L.png 三日月
総もくじ 3kaku_s_L.png WONDER-LOVE
総もくじ 3kaku_s_L.png みんなと作ったお話
総もくじ  3kaku_s_L.png a Day in Our Life
総もくじ  3kaku_s_L.png Kissからはじめよう
総もくじ  3kaku_s_L.png Step and Go
総もくじ  3kaku_s_L.png 果てない空
総もくじ  3kaku_s_L.png Love so sweet
総もくじ  3kaku_s_L.png タイムカプセル
総もくじ  3kaku_s_L.png Hello Goodbye
総もくじ  3kaku_s_L.png season
もくじ  3kaku_s_L.png 五里霧中(5人)
総もくじ  3kaku_s_L.png 夏の名前
もくじ  3kaku_s_L.png Troublemaker(5人)
もくじ  3kaku_s_L.png Crazy Moon(5人)
総もくじ  3kaku_s_L.png Welcome to our party
総もくじ  3kaku_s_L.png Deepな冒険
もくじ  3kaku_s_L.png 花火(やま)
もくじ  3kaku_s_L.png miyabi-night(5人)
もくじ  3kaku_s_L.png ZERO-G
もくじ  3kaku_s_L.png 復活LOVE(やま)
総もくじ  3kaku_s_L.png 三日月
総もくじ  3kaku_s_L.png WONDER-LOVE
総もくじ  3kaku_s_L.png みんなと作ったお話
もくじ  3kaku_s_L.png Believe
もくじ  3kaku_s_L.png 智君BD
もくじ  3kaku_s_L.png ブログ
もくじ  3kaku_s_L.png コスモス
【WONDER-LOVE Never -13-】へ  【WONDER-LOVE Never -14-】へ
  • TB(-)|
  • CO(-) 
  • Edit
  • 【WONDER-LOVE Never -13-】へ
  • 【WONDER-LOVE Never -14-】へ