「ふたりのカタチ」
ふたりのカタチ(やま)【81~100】

ふたりのカタチ (84)

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コーヒーショップのドアを開ける。

こんな時間なのに、お店の中には結構人がいてびっくりする。

カウンターでコーヒーを注文して、待ってる間に店内を見回す。

類さんは奥のテーブル席にいて、おいらを見てニコッと笑う。

おいらも会釈して、出て来たコーヒーを持って、真っ直ぐその席に向かう。

「すみません。遅くなっちゃって。」

「そんなことないですよ。突然呼び出したのは俺の方だし。」

類さんが、優雅な手つきでコーヒーを啜る。

「時間は大丈夫なんですか?類さん、忙しそうだから……。」

「大丈夫。そんなに心配しなくても。」

類さんは笑ってコーヒーを置くと、手首を捻って時計を見る。

やっぱりあんまり時間はないんだ。

それなのにわざわざ……。

おいらもコーヒーを一口飲んで、息を吐く。

「この間は……ごめんなさい。そしてありがとうございました。」

おいらはゆっくり頭を下げる。

「謝らないで。迷惑かけたのは俺なんだから。」

「ううん。おいらが悪いんです。なんか……上手く言えないんですけど、

 煮詰まってたみたいで……。」

おいらは申し訳なくて下を向く。

おいらが類さんやショウ君を引っ掻き回したんだ。

こうやって類さんと一緒にいるのも、居たたまれない気持ちでいっぱいで……。

でも、ちゃんと話をしなくっちゃ。

「迷惑かけられたなんて思ってないですよ。

 俺がサトシさんに惹かれていたのは事実だから。」

「類さん!」

おいらは驚いて類さんを見る。

惹かれてたのはおいらで類さんじゃない。

それもちょっと違ってたけど……。

でも、類さんはそんなおいらに優しかっただけ……。

類さんはコーヒーを飲んで小さく息をつく。

「人が人に惹かれることはいくらでもある。

 映画を観て主人公に惹かれたり、ラジオを聞いてDJに憧れたり。」

類さんはカップから指を離し、両手を組む。

「上司や部下、取引先や友人、人が出会って惹かれることを

 避けることはできないですよね。」

「類さん……。」

「あなたも……俺に惹かれてた。」

類さんがおいらを真っすぐ見つめる。

そうだけど、そうじゃない。

上手く伝えられるかわからないけど……。

おいらは、すぅと息を吸う。

「そうです。おいらも類さんに惹かれてた。」

両手を組んでその中指の関節を見つめる。

ボコッと突き出た関節に筋が立つ。

「でも、それはショウ君を好きなのとは違う気持ちで……。」

「惹かれては……いたでしょう?」

「そうだけど……でも違う。」

おいらは顔を上げて類さんを見据える。

「類さんは、優しくて、カッコ良くて、いつでもおいらを助けてくれて……。

 甘えてました。」

おいらは小さく頭を下げ、そのままうつむく。

「いいんですよ。サトシさんの甘えなんて、大したことないんですから。」

「例えそうだとしても、甘えちゃいけなかった。」

類さんが、動いた気配がする。

「あの……キスのことを言ってるんですか?」

類さんの組んだ手がわずかに動くのが、目の端を過る。

おいらは顔を上げられない。

自分のしたことを思い出して……。

申し訳なくて……。

「俺は後悔してませんよ。だから、サトシさんもそんなことは言わないで。」

「類さん……。」

おいらが顔を上げると、両手の親指で唇を撫でる類さんが、困ったように眉根を寄せる。

ダメだ。ちゃんと話さないと……。

「おいらはあれで……はっきりとわかりました。

 ショウ君がどれだけ大切か。どれだけその存在が大きいか。」

類さんは黙ったまま、ただじっとおいらを見ている。

おいらは振り絞るように、次の言葉を声に出す。

「おいらは後悔しています。類さんと……あんなことをするべきじゃなかったって。」

「サトシさん……。」

あんまり表情を変えることのない類さんの顔が歪む。

「例え心が壊れそうだったとしても、ショウ君じゃない人としちゃいけなかった……。

 あれは、甘え過ぎです。……ごめんなさい。」

おいらはもう一度頭を下げる。

頭を下げたままにすると、類さんが、静かな声で話し始めた。

「俺は……あなたに惹かれたことを後悔はしていません。

 最初はあなたの才能に惹かれました。

 あなたの絵から溢れるエネルギー……。

 その世界に魅了され、そして、サトシさんに会って、もっと知りたいと思うようになった。

 そう思った頃、あなたがあの美術館に現れた。

 本当に幻かと思いました。

 女神が俺を後押ししてくれてる、そう感じたんです。

 あれは俺にとってのターニングポイントです。

 それ以来、あなたのことを考えずにはいられなくなった。

 サトシさんの力になりたかったし、あなたの笑う顔が見たかった。

 好きなんだと思いました。

 例えそれが、妻に対する気持ちとは違ったものだとしても、

 俺には……それも愛だと思えたから……。」

「類さん……。」

おいらは類さんの言葉に息を飲む。

そして、ゆっくり首を横に振った。










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