ナイスな心意気(5人)

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今日の散歩はざわついている。

朝早いだけじゃない。

人が多い。

見たことのない機械もたくさんある……。

マサキもちょっと緊張してる……?

マサキの胸で、心配そうにサトシがマサキの顎を舐める。

「じゃ、いつもの様子でお願いします。」

全身黒づくめの人がマサキに向かって指示を出す。

「は、はい。」

緊張したマサキが、抱いてたサトシを地面に置く。

散歩に出て、マサキからサトシを下ろすことなんて滅多にない。

大きな黒くて長い箱がマサキとサトシに向けられる。

俺は二人が吸い込まれちゃうような気がして、

ワンッ!と大きく吠えた。



事の発端は1週間前。

突然かかって来た一本の電話。

「おー、風間?何?銭湯行く?」

マサキが楽しそうに携帯で話してるのは、いつも俺らの面倒を見てくれる

マサキの友達。

ペットショップで働いてて、俺の毛も、そいつが綺麗にしてくれる。

マサキが出かける時も、大抵はそこに預けられるんだけど、

前に人間のサトシの家に行った時は、

どうしても満杯で引き受けられないって断られて……。

仕方なくバラバラに預けられたんだよね。

いつでも一杯でいいのに!

最近は散歩でも会わないし……。

人間のサトシの匂いが懐かしい……。

なんて、俺が過去の郷愁に浸っていたら、

マサキが突然大声を出した。

「え?ええ~っ?ウチのサトシを?」

その声にびっくりしたのは俺だけじゃなく、カズナリも羽をバサバサ煽るし、

ジュンも飛び跳ねて蓋を外そうとするし。

サトシだけは呑気そうに欠伸を噛み殺し……。

ちょっと涙の溜まった目が……可愛い。

例えそれが欠伸であっても、サトシの潤んだ瞳はどんな宝石よりも美しい……。

なんて、キザなこと考えてたら、またマサキが声を上げる。

「え?来週?そんなにすぐ?……うん、大丈夫だけど……。」

マサキがチラっとサトシを見る。

「サトシは気まぐれだからなぁ……心配。」

サトシ?

サトシがどうしたの?

俺はマサキに抱き着き、携帯に鼻を近づける。

遠くで風間の声が聞こえる。

「とにかく、水曜の朝だから、撮影。」

「わかったけど、どうなっても知らないよ?」

マサキが邪魔そうに俺の鼻を押しやろうとする。

「そこはそれ……。相葉君の力でさ……。」

風間の声が遠くなる。

無理やり鼻先を携帯に押し付ける。

「そんなこと言ったって、相手はサトシだからなぁ……。

 お前だって知ってるじゃん。こいつが我が儘姫だって。」

「大丈夫だよ。ちょっと散歩させるだけだ……。」

今度は強引に俺の鼻先を掴んで、あっちの方に向けさせる。

いいじゃん。ちょっとくらい聞かせてくれたって!

「散歩してくれるかなぁ。」

俺は回り込んで携帯に顔を引っ付ける。

「猫がリード着けて散歩なんて、面白いって話だからさ、

 散歩はしてくれないと……。」

観念したマサキが、そのまま話しを続けてくれる。

「お前、サトシが散歩してるとこ、見たことある?」

「……ないけど?」

「あいつ、俺の胸から下りないから!」

「え?そうなの?」

そうだよ。サトシ、めどくさがりだし、寒がりだし。

散歩に行きたがるくせに、散歩なんてしないから!

「そこはなんとか~。頼むよ~。」

マサキは、はぁ~と溜め息をついて、携帯を切った。

「どうする、ショウ?サトシ、散歩してくれると思う?」

最近寒くなってきたし……無理なんじゃね?

俺が首を傾げてマサキを見ると、マサキはまた溜め息をついてサトシを見た。

サトシは窓際で顔を洗ってる。

それ以上可愛くなってどうするの!サトシ!

見ている俺達に気づいたサトシが手を止めて、首をちょっと傾げる。

う~ん!キュート♪

「うちのサトシくらい美人猫はそうそういないけど……。

 問題は……気分屋ってとこだよなぁ。

 お前も手伝えよ?」

マサキが俺の体を抱きしめて、パンパン叩く。

「サトシ~、マサキが散歩に行って欲しいんだって!」

「散歩~?いいよ。」

サトシはツーと尻尾を立てて、俺達の方へやって来る。

「でも、今じゃないらしい。」

俺はチラッとマサキを見る。

「今じゃないの?」

歩きながら首を傾げるサトシは本当にプリティで……。

「サトシ、待って!そこで止まって……」

マサキが携帯をサトシに向ける。

サトシは歩くポーズのまま、ピタッと止める。

「本当に可愛い♪俺のサトシ。」

マサキの携帯がカシャッと鳴って、携帯に張り付いたサトシを俺に見せる。

「可愛いよね~。俺のサトシ!」

俺がマサキを見上げると、走って来たサトシが、俺の体に体当たりする。

「痛っ。サトシ!」

「サトシじゃない!サトシ君!」

サトシが低くウ~と唸る。

「ほらほら、可愛い子がそんな声出したらダメでしょ?」

マサキがサトシを抱き上げる。

「だって、こいつ、おいらのが年上なのに、

いっつもサトシって呼び捨てにするんだもん!」

「だから、ごめんって~。」

俺は痛い脇腹を鼻先で確認する。

「ごめんじゃないよ!おいらのが兄さん!」

マサキの腕の中から、俺を見下すサトシ。

「わかってるよ。兄さん!」

俺が耳を下げて謝ると、サトシはやっと納得したのか、

マサキの腕からスルリと抜けて、俺の足の間に入って来る。

「わかったなら、いいよ……ふぁ~、眠い……。」

俺の足を枕にして目をつぶるサトシ。

俺もサトシの背中に顎を乗せる。

……サトシ、来週の散歩、行ってくれるのかな?

チラッと片目を開けてマサキを見ると、

サトシがいなくなった腕を見つめて不安そうなマサキ。

来週……サトシの機嫌がいいといいね。

俺もゆっくり目を閉じた。










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