「ふたりのカタチ」
ふたりのカタチ(やま)【81~100】
ふたりのカタチ (82)
2016.11.21 *Edit
なぜか美礼さんの予言は的中して……。
至るところでいろんな人に声をかけられた。
まず、駅に向かう道で……。
「あの、すみません、写真撮らせてもらえませんか?」
いかにもカメラマンって感じの人だったけど、この間、怖い目にあったばっかりだから。
「すみません、急いでるんで……。」
顔を伏せるようにして逃げた。
次に改札で……。
「こんな時間にどこ行くの?」
スーツ姿に花束を持った男の人が、おいらの顔を覗き込む。
いかにもチャラそうな……でも、ショウ君に似たイケメン。
というより、おいらが描いてる挿絵に似てるかも?
今のイベントの……。
「えっ?あの……。」
顔を上げたおいらを見て、相手もびっくりしてる。
「これは失礼……人違いみたいだ。」
「あ、いえ……大丈夫です。」
おいらがホッとしてニコッと笑うと、その人もニコッと笑い返してくれる。
「知り合いに……貴方がそっくりでびっくりしました。」
おいらも首筋を撫でながら苦笑いする。
だって、ショウ君にもそっくりなんだもん。
「もしよろしければ……少し飲みませんか?ここの近くに、よく行くバーがあるんです。」
「すみません……おいら、急いでるから……。」
「そうですか、それは残念。
では、こんな素敵な偶然が、またあることを祈って……。」
その人は、持っていた花束から一輪薔薇を抜き取ると、おいらのジャケットの胸元に差す。
「あ、ありがとうございます……。」
こんなキザなこと平気でできる人って、やっぱりイケメンだよね……。
その人はまたニコッと笑ってどこかに行ってしまったけど、
なぜか……また会えるような気がして……。
おいらは胸のポケットに刺された薔薇を見て不思議な気分になった。
次に声を掛けられたのは、ホーム。
これが一番やっかいで……。
制服姿の女子3人がおいらを見て、こそこそ話しをしている。
そういうことはよくあるから、気にしてなかったんだけど、
3人はキャーキャー言いながら、おいらと一緒に電車に乗って……。
キャーキャー言いながら一緒に電車を降りた……。
え?ご近所さん?
コソコソ話してる三人を見ていると……。
どうもそうじゃなさそうで……。
え?家までついてこられるのは……。
ドキドキしていたら、ホームで声を掛けられて……。
「あ、あの、写、写メ、撮らせてください!」
一人の女の子が俯き加減でそう言って、携帯を差し出す。
差し出されても……。
「おいらの写真なんて……。」
「キャー!しゃべってくれた!」
「声もかっこいい~!」
「すっごく綺麗です!芸能人みたいです!」
女の子達はキラキラした目でおいらを見つめる……。
は、恥ずかしいから……。
黄色い声援なんて、何年ぶり?
学生の時以来?
恥ずかしくて、周りをキョロキョロすると、
通りすがりの人がじろじろとおいら達を見て行く。
お、おいら、どうしたらいい?
写真くらい、撮ってあげるべき?
おいらは迷ったけど、丁寧に断った。
前に田村さんが、肖像権がどうとかって言ってたのを思い出したから。
「ごめんね。おいら写真はダメなんだ。恥ずかしくて……。」
三人は顔を見合わせて残念そうにうつむく。
「か、代わりにこれで……。」
おいらは胸に刺さった薔薇をその女の子に差し出す。
「きゃ~!」
女の子は悲鳴に近い声を出して飛び跳ねる。
そんなとこを見ると、女子高生って可愛いなって思う。
でも、女の子は三人……。
おいらは鞄から、自分用に買ったきのこのチョコを取り出して、二人に一つずつ渡す。
「これじゃダメ?」
三人はまた顔を見合わせて、ニコッと笑う。
「ありがとうございます!」
「お守りにします!」
「よかった~。」
ちょうどそこへ電車がやってくる。
おいらは胸をなで下ろして、ニコッと笑う。
「きゃ~!」
女の子の一人が声を上げる。
「私達、この沿線の学校なんです!
見かけたら声を掛けてもいいですか?」
「い、いいけど……。」
「ありがとうございます!」
そう言って、女の子達は電車に飛び乗った。
おいらは三人を見送って、改札を出る。
最近の女子高生って勇気あるよね?
おいらじゃ、絶対声なんて掛けられない!
改札を出てからも、商店街の八百屋のおじちゃん、
魚屋のおばちゃんに声を掛けられ、
交番のおまわりさんはおいらを見て、ポッと頬を赤くするし、
お母さんと一緒にいた、幼稚園くらいの男の子には、
「オレとけっこんしようぜ!」
と告白され……。
「わ、わかってるかな?おいら男なんだけど……。」
おいらはしゃがんで男の子に視線を合わせる。
「男どうしでも、けっこんできんだよ?しらないの?」
「し、知ってるけど……。」
男の子が戦隊物のポーズを取っておいらに見せてくれる。
「オレ、かっこいい?」
「う、うん、かっこいいよ。」
「じゃ、オレにしときなよ。」
「え……でも……。」
「オレ、さくら組で……。」
男の子が話し続けるのを近くで立ち話していたお母さんが、遮るように抱きあげる。
「すみません。本当にすみません……。」
お母さんは顔を赤くして逃げるように行ってしまう。
可愛い男の子だったけど……。
ショウ君に話したら、何て言うかな?
おいらは一人笑って、おまけしてもらった大根とぶりを見る。
今日はぶり大根だね!
おいらが重い大根を、うんしょと持ち直した時、携帯が震えた。
ショウ君かな?と思って携帯を開く。
類さんからだった。
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