「ふたりのカタチ」
ふたりのカタチ(やま)【61~80】

ふたりのカタチ (76)

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電話が込み入ってくるのを見計らって、おいらはショウ君の膝から下りる。

ショウ君も、意識が電話に向いてるからか、すんなり下してくれる。

「ふぅ~。」

おいらが溜め息をつくと、ウッチーがやってきて、おいらの背中に手を回す。

「櫻井達、忙しくなってきたから、もう帰る?」

「うん。」

おいらがうなずくと、後ろから、ショウ君が叫ぶ。

「ちょっと待って!」

「ショウ君、おいらそろそろ帰るね。」

振り返って笑って見せると、つまんなそうな顔でショウ君が口を尖らす。

バリバリ仕事するショウ君と、そんな可愛い顔でダダこねるショウ君と、

いったいどっちが本当のショウ君?

おいらはおかしくなって、くふふと笑う。

「家で、ご飯作って待ってるから!」

それでも拗ねたように口を尖らすショウ君。

「仕方ねぇなぁ。じゃ、もうちょっとだけ、サトシその辺にいさせるから、

 ちゃっちゃと九州、片付けろよ!」

ウッチーが言うと、まだ拗ねた口調のショウ君がぶつぶつ言う。

「その辺ってどの辺だよ。」

「その辺はその辺だよ!」

ウッチーはおもしろそうに言い返す。

それ以上、ショウ君をいじめないで~と思って、ウッチーを見上げると、

クスッと笑ったウッチーが、ショウ君に言う。

「会社の中、少し案内しとくから、早く時間作れ!」

ショウ君の顔がパァーッと明るくなる。

「内山、恩に着る!」

ショウ君はまた電話を手に、ファイルを開く。

そこへ岡林さんからメモを渡されて、佐々木さんに何か声を掛けて……。

いつまででも見てられる。

ショウ君の仕事してるとこ。

頭をフル回転させて、チームをまとめて……。

サッカーしてた頃のショウ君とちょっと似てるね。

キーパーで、みんなに指示出して、最後は俺がいるからって、

大きく腕を広げてゴールを守ってたショウ君。

それは試合中だけじゃなくって、練習の時も、部活以外でも。

しっかり見て、聞いて、相手を尊重してるから、みんながショウ君を信頼する。

試合中も、ショウ君の言葉を信じて動ける。

仕事も同じだね。

日々の業務をきっちり人並み以上にこなして、

周りをちゃんと見て、コミュニケーションも取れてるから、

こうやっていざという時、みんなが団結して業務にあたれる。

何をするべきか、どうすればいいのか、ちゃんとわかってる。

「いいチームだね。」

ウッチーを見上げると、ウッチーもにっこり笑う。

「ま、言いたくないけど、櫻井の人徳かな?」

「うふふ。うん。」

ウッチーと連れ立って、そっとショウ君のオフィスのドアを閉めた。

廊下に出たおいらに、ウッチーが聞く。

「どっか見たいとこある?と言っても大して見るとこもないけど……。」

「それより、ウッチーは大丈夫なの?」

「大丈夫、大丈夫。時間の融通がきくのが営業のいいところ。」

「ほんと?忙しいなら、おいら、ちょっとお茶でもして……。」

「遠慮すんなよ。たまに会った旧友としゃべる時間くらいいくらでも作れるから。」

ウッチーがドンとした笑顔で笑う。

「んふふ。ありがと。」

「で、どこが見たい?」

「そうだね~。」

実はおいら、行ってみたいとこがあるんだけど……。

見せてもらえる場所なのかどうか……。

「何?行きたいとこあるなら、言って?」

「う、うん……。あるにはあるんだけど……。」

「どこ?」

「行けなかったらいいんだけど……。」

「うん?」

ウッチーが首を傾げる。

「あのね……、おいら社長室に行ってみたいんだ。」

「社長室?」

「うん。今書いてる小説の挿絵、主人公が社長なんだけど、

 おいら社長室って見たことないから……。」

「ウチの社長室じゃ、大したことないけど……。」

ウッチーはエレベーターのボタンを押す。

「社長室が使われてなかったら行けるよ。」

「使われるって、社長さんがいるってこと?」

「いや、ウチの社長はほとんど社長室にはいないから、会議室が足りないと、

 社長室を使うんだよ。」

「え?社長室って誰でも入れるの?」

「うちはね。予約さえすれば、誰でも使える。」

エレベーターが1階について、ウッチーが受付の人と何か話して……。

どうやら、社長室に行けるみたいだ。

ウッチーがにっこり笑って、指で丸を作ってる。

「本当はパソコンで予約するんだけど、櫻井のとこに戻るのもなんだし、

 俺のとこには行きたくないし、で、受付で確認してもらった。」

「ごめんね、ウッチー。」

ウッチーはまたエレベーターのボタンを押す。

エレベーターはすぐに開いて、おいら達が乗り込むとゆっくりドアが閉まる。

「これくらい、気にすんな。」

ウッチーが5階のボタンを押して、グシャグシャっとおいらの頭を撫でる。

「うふふ。ウッチー!」

そのまま、おいらの頭の匂いを嗅ぐウッチー。

「え?何?おいら臭い?」

「いんや、櫻井が良い匂いってあんまり言うからさ、どれどれと思って。」

ウッチーが、ふふふと笑う。

「なるほど。櫻井が言うのもわかるな。確かにいい匂いだ。」

「ウッチー!いい匂いなわけないじゃん。」

ショウ君くらいだよ。そんなこと思うの。

「ほんとだよ?優しくて柔らかい、いい匂いがする。」

ウッチーがニッと笑った。










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