「season」
CARNIVAL NIGHT Part2
CARNIVAL NIGHT Part2 #14 - season 文化祭編 -
2016.11.08 *Edit
文化祭前日は、それぞれクラスの準備に回る。
クラス以外にも部活の準備も手伝わなければならない。
舞台に出ると言うことで、多少免除されていた5人も、
この日ばかりは大忙しで部活、クラスを回る。
ショウが大きな模造紙を持って、小走りで中庭を突っ切ると、
サトシが、いたるところに絵の具のついた大きなエプロンを着けて、ペンキを抱えている。
「あ、ショウ君。」
ショウを見つけたサトシがニコッと笑う。
「美術部?クラスの手伝い?」
ショウもにっこり笑う。
「クラス。」
サトシはペンキを持ち上げて見せる。
「サトシのクラスは何?」
「んふふ。お化け屋敷。」
手を前に垂らして、おばけの恰好をして見せる。
「え?サトシがおばけやるの?」
「やるよ。土曜日の午後の当番。カズの舞台が日曜日だから。
ショウ君も来てね。おいら、頑張って脅かすから!」
「え……いや、サトシがやるなら行きたいけど……。
俺もクラスと部活とあるから……。」
「そっかぁ。忙しいよね?」
サトシが上目遣いでショウを見る。
「で、できるだけ行くけど……。」
「うん。来れたら来てね。」
ニコッと笑って、通り過ぎようとしたサトシが、振り返って、
ショウの耳に手を当て、小声で言う。
「大丈夫。あんまり怖くないから。」
「え?」
サトシの手から耳を外し、驚いた目でサトシを見つめる。
「ショウ君、昔から苦手だったもんね。おばけ。」
サトシがクスクス笑う。
「ばっ、ばか、それは昔の話。今は……。」
「そうだよね。もう子供じゃないもんね。
じゃ、待ってるね~。」
サトシがペンキを揺らしながら笑って行ってしまう。
ショウは困ったように眉間に皺を寄せる。
「サトシ、おばけが怖いかどうかに、大人も子供も関係ないんだよ……。」
はぁと大きく溜め息をついて、模造紙を持ち直し、クラスへ急ぐ。
「松本君、黒のベスト……持ってるんだっけ?」
「持ってる。けど、全然着てないから、着れるかなぁ。」
ジュンはクラスの飾りつけを手伝いながら振り返る。
貴田が、両手に何かを持って、ジュンに近づいてくる。
「松本君には、どっちが似合うかなぁ。」
貴田が持っていたのは赤と黒の蝶ネクタイ。
両手の上のネクタイを見比べ、ジュンに視線を移し、
赤い蝶ネクタイをジュンに当てようとする。
すると、いつの間にかやってきたクラスの女子が、
黒い蝶ネクタイを貴田の手から取り上げる。
「ジュン君は黒で渋い感じがいいんじゃない?」
そう言いながら、ジュンの首に合わせてみる。
「え~、全部黒なんて面白くねぇよ。貴田ぁ!」
ジュンは顎を上げて、貴田にネクタイを当てろと促す。
ジュンの突然の行動に、オロオロする貴田を見て、ジュンは貴田の手を掴む。
「俺、赤、似合わない?」
その手を自分の首に持っていく。
貴田の顔が見る間に赤くなっていく。
貴田はおずおずと、手の中の蝶ネクタイをジュンの首に当てる。
「……似合う……と思う……。」
「ん~、ジュン君、顔がいいから何してもカッコいいもんなぁ。」
隣の女子も満足気に顎を撫で、飾りつけを手伝いに行く。
「それ、貴田の?」
ジュンは赤い蝶ネクタイを指さし、じっと貴田を見る。
「う、うん。黒いのは違うけど……。」
「じゃ、それ借りるから。」
ニコッと笑ったジュンに、貴田の心臓がドキッと音を立てる。
「ジュンっ!こっち手伝えよ!」
「おぅ。」
ジュンは貴田を置いて、男子の輪の中に入って行く。
貴田はそんなジュンを見つめ、ギュッとネクタイを握り締める。
「松本君……。」
ジュンが、自分のネクタイを使ってくれると言うだけで嬉しくて、
今すぐサトシに報告に行きたい気持ちでいっぱいになる。
「あ、皺になっちゃう。」
握り締めた手を開いて、丁寧にネクタイの皺を伸ばす。
電気科の校舎はちょっと離れている。
頭にタオルを巻き、口に釘を咥えたマサキが、金づちでトントンと釘を打っていく。
手慣れた様子で打っていくものの、打った釘はなかなか真っ直ぐ入ってはいかない。
「あはは。なんだよ。お前、見掛け倒しだな。」
「俺はなんでも恰好から入ってくんだよ。見てろよ?」
クラスメートに笑われても、マサキは楽しそうに笑いながら、金づちを打っていく。
そこへ、数人の女子と一緒に、カズが通りかかる。
「おっ、カズ、どこ行くの?」
マサキは口から釘を取って、カズに声を掛ける。
気付いたカズが、小走りでマサキのところにやってくる。
「私達は買い出し部隊。ウチは駄菓子屋だから。」
「駄菓子屋かぁ。いいね。準備が楽そう。」
マサキがニコニコ笑う。
「ウチは舞台もあるから。」
カズがニヤッと笑う。
「そうだよね、大変だ!」
「マサキんとこは何やんの?」
「俺のクラスは、キッキングスナイパーと、ローリングコインタワー。」
ニカッと自慢げに笑うマサキに、カズが目を瞠って驚く。
「あの、テレビの?」
「そうそう。図面起こして、作ってんの。」
マサキは金づちと釘を見せる。
「図面起こしたのはマサキじゃないでしょ?」
「バレた?」
「すぐバレるわ!」
カズは笑って手を振ると、女子の方へ戻って行く。
その後ろ姿を見送って、作業に戻ろうとすると、クラスメートに声を掛けられる。
「マサキさ、これなんだけど……。」
「ん?」
図面を指さして、眉を下げるクラスメート。
「なんか、マサキの、長くない?」
「え?長い?」
二人して、図面と角材を見比べ、メジャーを取り出す。
「絶対長いよ!」
クラスメートに言われるまでもなく、明らかに長い角材に、
メジャーを当てながらマサキが言う。
「大丈夫、大丈夫。長ければ切ればいいから。」
ニコッと笑うマサキに、クラスメートは苦笑するしかなかった。
- 関連記事
-
- CARNIVAL NIGHT Part2 #15 - season 文化祭編 -
- CARNIVAL NIGHT Part2 #14 - season 文化祭編 -
- CARNIVAL NIGHT Part2 #13 - season 文化祭編 -
スポンサーサイト
総もくじ
a Day in Our Life

総もくじ
Kissからはじめよう

総もくじ
Love so sweet

総もくじ
season

総もくじ
ココロチラリ

総もくじ
ふたりのカタチ

総もくじ
Sunshine(やま)

もくじ
ナイスな心意気(5人)

もくじ
Troublemaker(5人)

もくじ
Crazy Moon(5人)

総もくじ
テ・アゲロ

もくじ
愛と勇気とチェリーパイ(5人)

もくじ
花火(やま)

もくじ
イチオクノホシ(やま)

もくじ
Japonesque(5人)

もくじ
miyabi-night(5人)

もくじ
明日に向かって(やま)

もくじ
ZERO-G

もくじ
Don't stop(いろいろ)

もくじ
イン・ザ・ルーム(やま)

もくじ
復活LOVE(やま)

総もくじ
WONDER-LOVE

もくじ
Your Eyes(やま)

もくじ
Attack it ~ババ嵐~

もくじ
つなぐ(やま)

もくじ
白が舞う

もくじ
夢でいいから(やま)

もくじ
ワイルドアットハート(やま)

もくじ
愛してると言えない(やま)

もくじ
Happiness(やま)

総もくじ
短編

もくじ
智君BD

もくじ
ティータイム

もくじ
ブログ

もくじ
Believe(やま)

もくじ
コスモス(5人)

もくじ
BORDER(やま)

もくじ
夏疾風(やま)

もくじ
STORY
