「短編」
短編(いろいろ)

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1階の自販機にコーンポタージュが入った。

今年は去年より早い。

それを3本買って、腕で抱える。

熱くて……手じゃ持てない。

後輩の女子たちが通りかかって、クスクス笑う。

「先輩、そんなに飲むんですか~?」

「いや……蓮が好きだからさ。」

俺がそう言うと、後輩たちが顔を見合わせて笑う。

「先輩、健気~。」

健気?

俺のこと?

俺が首を傾げると、後輩たちは笑いながら廊下を走る。

揺れるスカートが、さらに俺を笑ってる。

……いいよ。別に。

笑われたって、蓮が喜んでくれるなら。

コンポタを抱えて3階へ急ぐ。

猫舌の蓮はすぐには飲めないけど、

熱いのをフゥフゥしながら飲む蓮が好きで、

早く見たくて、階段を駆け上がる。

「修司君!」

階段で朱里と出くわして、しまったと思う。

「今日は帰れる?」

「……うん。」

昨日断っちゃったからな……仕方ない。

「じゃ、帰り、修司君のとこ行くね。」

「……わかった。」

朱里は嬉しそうに両手を口に当てて笑う。

長すぎるカーディガンの袖が、手を半分隠して、

秋もだいぶ深まったことを教えてくれる。

「じゃ、後でね。」

スカートを翻して、朱里が下りて行く。

付き合って2ヶ月。

俺のことを大事にしてくれる。

俺の友達も大事にしてくれる。

朱里の背中を見送って、また階段を上り始める。

早くしないと、コンポタが冷めちゃう。

窓の外の少し曇った空が、なんとなく俺の心をざわつかせる。

小さく息を吐いて、階段を駆け上がる。

腕の中の缶が揺れて、コトッと小さな音がした。



教室で、蓮が机の上に写真を並べていた。

この間撮った、俺の写真。

蓮が撮ると、俺のイケメン度が2割増し。

実際の俺は大したことないんだけど、蓮が撮るとイケメンになる。

不思議。

もちろん、クラスの中ではカッコいい方だと思うけど。

「あ~、この写真、すげぇいい。」

一樹が一枚の写真を撮ってつぶやく。

俺が寒そうに体を丸くして笑ってる写真。

「イケメン度が5割増し。」

洋介も俺と見比べ、ニヤリと笑う。

「なんだよ、それが本当の俺なの!」

「でもさ……。」

一樹が他の写真を見ながら言う。

「蓮、誰でもカッコよく映せるわけじゃないんだよな……。」

「ま、元がいいから?」

俺が顎に手を当て、ポーズを取ると、洋介がクスクス笑う。

「自分で言うか?」

一樹が蓮をじっと見る。

じっと見られた蓮が、一樹の手から俺の写真を取る。

それをボーっと見つめながら、ポツリと言う。

「……修司のこと、……撮ること多いから……。」

何を考えてるかわからない、蓮の表情。

「じゃ、今度、俺も撮ってよ。イケメンに!」

洋介が明るくそう言うと、一樹が、あははと声を上げて笑う。

「お前でイケメンになるなら、俺でもなんとかなるわ!」

「それ、ひどくない?俺とお前じゃ、大して変わんないから!」

「変わる!」

「変わんない!」

「申し訳ありませんが……。」

俺は二人の肩に手を掛けて、ポンポン叩く。

「蓮は俺、専属のカメラマンなんで……、誰のこともカッコよくは撮れません。」

二人の肩に掛けた手を、蓮の後ろから蓮の肩に掛ける。

「な?」

蓮の顔を覗き込むと、蓮が、ふふっと笑う。

「何?蓮!修司しか撮らないの?」

「蓮の独占、反対!」

「悪い、もう契約済みなんで。」

「そんなの、破棄破棄!」

「無効!蓮の独占は審議が必要!!」

二人はずっと騒いでいたけど、それより、

蓮の肩に置いた手を、どのタイミングで離したらいいのか……。

そればっかり気になってた俺。

蓮は笑いながら二人を見ていた。

俺の手なんか、まるで気にならない風に。



授業が終わって、俺が蓮の側に行こうとすると、朱里がやってきた。

「お待たせ。」

「お、おぅ。」

忘れてた。

今日は一緒に帰るんだった。

蓮も鞄を用意してる。

俺も鞄に筆箱をしまう。

蓮に合わせて、少しゆっくり。

鞄を肩に掛けた蓮が、俺らの前を通る。

「蓮も帰るの?」

「うん……。」

蓮はバツが悪そうに頬を掻く。

「俺らも……。」

俺は朱里をチラッと見る。

朱里はそっと俺の手を取った。

俺は蓮と並んで歩く。

少し遅れて、俺と手を繋いだ朱里が付いてくる。

ビミョーな空気の三人……にはならなくて、

俺と蓮はいつものように普通に話す。

それを朱里が少し後ろで聞いている。

朱里はそれで楽しいのかな?

そんな疑問も、蓮が隣で笑うから、

ちょっと蓋をして、胸の奥にしまってしまう。

ずるい俺。



最寄駅まではバス。

電車通学はみんなこのバスに乗る。

だから、行きと帰りのバスは激込み。

先に乗った朱里が二人掛けの席に座る。

その前の二人掛けに蓮が座る。

俺は迷わず蓮の隣に入って行く。

蓮も……何も言わず、携帯を取り出し、動画を見始める。

イヤホンを片方俺の耳に押し当てて、二人で頭をくっつけて携帯を見つめる。

バスが揺れると、蓮の柔らかい髪が俺の頬をくすぐる。

また、体温が上がる。

バスの中は暑いから。

体温が上がってもしょうがない。

自分に言い聞かせて、蓮と動画を見続ける。

この体勢を崩したくなくて、でも、蓮の表情も見たくて……。

蓮……、今、何考えてる?










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