「短編」
短編(いろいろ)

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蓮(れん)が笑う。

ただそれだけ。

俺も笑い返す。

ただそれだけ。

でもそれだけで……。

俺の胸はキュッてなって、

1℃、体温が上がる。

上がった体温は、夏の名残りの太陽に掻き消される。

その程度の微熱。

誰にもわからない。

でも、微熱は続く。

微かに聞こえるサイレンのように。



「何?どうしたの?熱?」

同級生の一樹(かずき)が、心配する風でもなく、俺の隣にやってくる。

「どうして?」

俺が聞き返すと、

「さっきからずっと、こうやってるから。」

そう言って、額に手の甲を当てる。

「ああ、前髪がじゃまだっただけだよ。」

「イケメンは前髪の上げ方までカッコつける!」

一樹の後ろから、洋介(ようすけ)が丸い顔を、さらに膨らませて覗き込む。

「うるせぇ。俺の顔に文句があるなら、親に言ってくれ。」

「文句も出るわ。顔はいいわ、頭はいいわじゃ、俺ら、どうすればいいのよ。」

「どうもしなくていいから。」

「ははは。そう言えば、2組の高木、昨日駅前で……。」

いつもの休み時間。

同級生達のたわいもない会話。

その隙を縫って、窓際の一番後ろの席をチラッと見る。

蓮は一人でボーっと窓の外を見てる。

窓から入る風が、連の髪を撫でる。

柔らかい髪が、耳の辺りで少し揺れる。

くすぐったそうに、掻き上げる指……。

「……って、聞いてる?修司!」

一樹が少し目を細めて俺を見る。

「え?あぁ、聞いてるよ。で、高木がどうした?」

「その話は終わったから!」

間髪入れず、突っ込んでくる洋介。

「聞いてねぇじゃん!」

一樹も一緒になって笑う。

「ごめん、ごめん。」

俺も笑って、一樹を見ると、仕方ねぇなぁというように、

一樹がまた話し始めた。

「だから、すげぇいいんだって、新しいアルバム……。」

「へぇ……。」

相槌を打ちながら話を聞いて、またチラッと窓際に目をやる。

蓮はさっきと同じように窓の外を眺め……。

その隣には、寄り添うように千絵(ちえ)がいた。



授業が終わって、いつものように蓮の席に走る。

「蓮!今日、部活ある?」

「……ある。」

蓮の言葉はいつもぶっきら棒。

でも、それが照れ隠しだってわかってる。

「じゃ、俺も付き合う。一緒に帰ろ?」

「うん……、修司は?ないの?」

わずかに微笑んで、俺を見上げる。

「うん、ない。

 ……久しぶりに蓮の写真がみたい。」

はにかんだように笑って、蓮が立ち上がる。

170センチの俺と並んでも、蓮の背は低い。

鞄とカメラケースを肩に掛ける蓮の、背中に手を添える。

「千絵は?」

「先、帰るって。用事、あるみたい。」

「ふぅん。」

ちょっと気分が上がる。

今日は蓮を独占できる。

二人並んで写真部の部室に入ると、

「蓮先輩!こんにちは~。」

後輩たちが口々に挨拶する。

蓮はこの間、大きな賞を取ったばかり。

後輩たちの憧れの先輩……。

「修司先輩も一緒?」

面白くなさそうに口の端を上げる後輩の凛久(りく)。

凛久は特に蓮を慕って、部活に出ると、蓮から離れようとしない。

蓮も、ちょっとうざそうにしながらも、凛久を可愛がってるのがわかる。

「俺が一緒じゃ迷惑?」

ジロッと、睨みを利かす。

「そ、そんなことないけど……。」

凛久がチラッと蓮を見る。

「……今日、修司の写真、撮るから……。」

蓮は凛久を見ることもなく、自分のカメラをカメラケースから取り出す。

レンズを付け替え、カメラを構えて俺に向ける。

俺は蓮に向かってにっこり笑う。

その様子を見て、凛久が俺らから遠ざかる。

蓮が、ファインダー越しに俺を見る。

蓮のカメラは、俺を透かして、俺の中身まで映し出す。

だから……カメラを向けられただけでドキドキする。

どんな顔をしていいかわからなくて、頭を掻くと、蓮がクスッと笑う。

「……何、話してたの?」

「え?」

「休み時間……、一樹たちと……。」

「あぁ、2組の高木の話と……。」

蓮のカメラがカシャッと鳴る。

「……新しいアルバムの話……。」

「へぇ、……修司、聴いた?」

「いや、まだ。イイらしいから、帰りタワレコ寄りたい。」

「じゃ、早めに帰んないと……。」

蓮がシャッターを切る。

その綺麗な指の動きと、カメラを持つ手にドキドキする。

俺だけを映すカメラ……。

体温が……また1℃上がる。

そんなことに気づかない蓮は、カメラを下げて、俺の隣までやってくる。

「外、行こ。外で撮りたい。」

楽しそうに笑う蓮が、俺の腕を引っ張る。

写真のことになると、目を輝かせて、まるで子供みたいな蓮。

俺も笑って、引っ張られるまま、外に飛び出す。

「どこで撮るの?」

「……緑と空と……。」

「俺?」

「ふふふ。そう!」

「なんか、昔っぽいフレーズ!」

俺が声を上げて笑うと、後ろから声を掛けられる。

「修司君!」

二人で振り返ると、朱里(あかり)がにっこり笑って立っていた。

「今日、一緒に帰れる?」

「わりぃ。今日、ちょっと寄るとこある。」

「寄るとこ?」

「……それに、蓮の撮影、時間かかるかもしれないし。」

蓮を見ると、蓮が困ったように眉間に皺を寄せる。

蓮が気にすることないのに。

断ってるのは俺なんだから。

「そっか。……じゃ、また明日!」

朱里はわがまま言わず、帰っていく。

朱里の後ろ姿を見ながら、蓮がボソリと言う。

「……いいの?」

「いいの!早く撮りに行こ。」

今度は蓮の腕を俺が取る。

蓮は口をへの字にして、カメラを構えてパシャリと撮った。










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