「ふたりのカタチ」
ふたりのカタチ(やま)【41~60】

ふたりのカタチ (59)

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「ショウ君……。」

ショウ君はじっとおいらを見たまま……。

「それは……。」

ちょっと違う。

ううん、全然違う……。

でも、ちゃんと伝えられる?

伝わる?

ショウ君に……。

バクバクと音を立てる心臓。

怖くて震える手。

でも、伝えなくちゃ。

「お、おいらね……。」

震える声に息を飲む。

ちゃんと息を吐かなきゃ……。

ふぅ……。

吐く息まで震えて、グッとマグカップを持つ手に力を込める。

しっかりしろ!サトシ!

自分にハッパを掛けて、ショウ君を見る。

ショウ君はじっと、おいらの言葉を待っててくれる。

「す、すっごく……考え…た……どうして……、シ、ショウ君が…怒ったのか……。」

「うん……。」

ショウ君は相槌を打って、コーヒーを口にする。

「そうやって……考え…たら……、い、いろんなことが……見え…てきて……。」

「うん……。」

「ずっとショウ君が好きで……、やっ、やっと想いが叶って……。

 一緒に……、に、暮らせるようになって……、家…まで……。」

ショウ君はマグカップをトンとテーブルに置く。

「く、区役所に行って、本当に……家族……。」

おいらは思い切って息を吸う。

一瞬、胸がいっぱいになるくらいまで吸い込んで、ゆっくり息を吐く。

それでもまだ、心臓の音はバクバクと音を立て、おいらの震えを加速させる。

「で、でも……おいらの中に…は……どうしても消えない……一点…があって……。」

「一点……?」

「う、うん……。」

おいらは小さくうなずく。

「怖くて…避けてた……、考えることすらできなかった……、

 み、見ないようにして……。」

「…………。」

ショウ君はじっとおいらの言葉を待ってくれる。

「まさか、おいら達が、……こんな風にみんなに認めてもらえて、

 一緒に……、生きていけるようになるなんて、思ってなかったから……。

 そ、その未来が……目の前に現れて……少し…怖くなったんだと……思う……。」

「怖く……?」

「うん……。そんな時……、類さんが現れた。」

「花沢……類……。」

「うん……。」

おいらは両手でマグカップを握り締める。

コーヒーはもう冷めていて、仄かに温かいカップは、おいらの体温とあんまり変わらない。

「類さんは優しくて、頭が良くて、イケメンで……どこかショウ君に似ていて……。

 でも、ショウ君じゃなくて……。」

「サトシ……。」

「……惹かれてた…………。」

ショウ君の手がグッと握り込まれる。

「気づいて……た?」

ショウ君は何も言わず、マグカップを見つめる。

「ショウ君でも気づくようなことに、おいらは自分で気づけなくて……。

 でも、……類さんは気づいてて……。」

おいらはショウ君の、握り込まれた手を見つめる。

「いつも……助けてくれて……。」

「サトシ……。」

「……だから、ショウ君からのメールを見るのが怖かったんだと思う……。

 あんな風に怒鳴られたことなかったから……。

 自分の気持ちに気づいていないのに、罪悪感はあったのかな……。」

ショウ君は、声の調子を変えずに聞く。

「……花沢類と……寝たの?」

おいらはブンブン首を振る。

「……キスして……思い出した。……ショウ君じゃなきゃダメだってこと……。」

目頭が熱くなって、涙が溜まっていくのがわかる。

「おいらは……ショウ君じゃなきゃ……。」

ショウ君はおいらをじっと見つめて、ゆっくり口を開く。

「怖かったのに……俺のメールを開いたのは……?」

「ショウ君じゃなきゃって思ったのと……、ショウ君のメールが2件だったから……。」

「2件?」

「……うん。もう帰ってこなくていいってメールだったら……、

 1件だけだと思って……。

 2件だったから心配してくれてるのかもって……思えて……。」

おいらはマグカップの中のコーヒーを見つめる。

ほんのり柔らかい色になったコーヒーは、

もう冷めてしまったのに、温かそうに見える。

「心配してくれてて、ホッとして嬉しくて……。

 やっぱりおいらはショウ君じゃなきゃダメなんだって、

 改めて思って……。」

ショウ君は両手を組んで、おいらを見つめる。

「そうだよ……。

 サトシは俺じゃなきゃダメなんだ。

 俺じゃなきゃ、安心できない。

 俺じゃなきゃ、笑えない……。

 俺じゃなきゃ……生きていけない。」

「ショウ君……。」

溜まった涙が流れそうになる。

歯を食いしばって、目を見開いて、グッと耐える。

「俺じゃなきゃ……本当には泣けない……でしょ?」

「ショウ君……!」

溜まった涙は一気に溢れ出す。

指で拭っても、次々流れ続ける涙。

「うっ、うん……ショウ…君……。」

おいらは何度も手で拭って、嗚咽を上げて……泣いた。

「……ショウ君は、……いいの?

 おいらで……類さんに惹かれたおいらでも……。」

「俺も……サトシじゃないとダメだから……。」

涙で滲んだ目をショウ君に向けると、ショウ君は……おいらを見つめて、微笑んだ。

温かい、春の太陽みたいなショウ君の笑顔で。










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