「ふたりのカタチ」
ふたりのカタチ(やま)【41~60】

ふたりのカタチ (54)

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「一人で……考えたいから……。」

おいらがそう言うと、類さんは溜め息をついて首を振る。

「わかった……。でも、こんな深夜に一人にはできないから……。

 送らせて?」

「大丈夫です……。おいら、男だし。」

「サトシさん……、男だって、深夜に一人は危ないことに変わりない。」

「ごめんなさい……。」

類さんは仕方なさそうに、また溜め息をついて、

あのキャラクターのついたタオルで、おいらの頬を拭く。

「どこに行きたいんですか?そこまで……送らせてください。」

どこに行きたいのか……。

どこでも……。

ちゃんと考えられるとこなら……。

駅前に……ビジネスホテルがあるけど、こんな時間でも泊めてもらえるのかな……?

「大丈夫だから……すぐそこのファミレスで、少し頭を冷やしたら帰るので……。

 類さん、仕事があるんだから……早く帰らないと寝る時間がなくなっちゃう……。」

おいらがそう言っても、類さんはファミレスに入るとこまでついて行くと言い張って……。

コンビニから歩いて3分くらいのとこにあるファミレスまで、

一緒に並んで歩くことになった。

歩きにくかったパンプスは、類さんのおかげで幾分、楽になって……。

男がこんな格好で入っていったら、変に思われるかな?

それでもいいや……。

それより……。

おいら達は無言で歩く……。

おいらのスピードに合わせて歩いてくれる類さん。

やっぱりどんな時でも優しい類さん……。

優しくて……。

ファミレスの前に着いて、おいらは振り返って頭を下げる。

「今日は……迷惑ばっかりかけちゃってごめんなさい……。」

深く頭を下げて、顔を上げると、類さんが困った顔で笑ってくれる。

「迷惑かけたのは俺の方……。」

「そんなことありません。類さんは……本当に優しくて……。

 おいら、頼ってばっかり……。」

おいらも頑張って笑顔を作る。

「いいんですよ。いくらでも頼ってください。」

そう言うと、おいらの頬をブニッと摘まむ。

「無理して笑わないで……。

 一緒にいたら、無理させてしまうので帰ります。」

「類さん……。」

「ちゃんと、落ち着いたら家に帰ってくださいね。」

おいらはコクッとうなずく。

類さんは摘まんだおいらの頬を撫でて、背中を軽く押す。

おいらはうなずいて、ファミレスの方へ歩いて行く。

ドアを開けて振り返ると、じゃ、と言って、類さんが来た道を戻って行った。

おいらはそのまま中に入って、一番手前の端っこの席に座る。

一人になって座ったら、一気に疲れが押し寄せてきて……。

椅子に体を預け、目をつぶっていたら、店員さんがやってきた。

店員さんはおいらを見ても怪しむ様子もなく、注文を取って行く。

深夜のファミレス……変な人が、時たま来たりするのかな?

おいら、どう見ても変な人だよな……。

着替えたいけど……こんな夜中じゃ売ってるとこもないし……。

窓から外を見ると、暗い中を車が一台通り過ぎる。

人も車もほとんど通らない深夜……。

こんな時間に一人で外に出るのも……どれくらいぶりだろう?

ショウ君が心配するから……。

クスッと一人で笑う。

NYにいたせいだと思ってたけど、考えてみたら、ずっと小さい頃から、

ショウ君はおいらの心配ばかりしてたっけ……。

おいらは携帯を開いてみる。

2件のメール。

1件目は……。

『どこにいるの?』

それだけの素っ気ないメール。

2件目……。

『無事かどうかだけでも、連絡が欲しい。』

ショウ君が心配してくれてる……。

そう思うだけで嬉しくて、涙がこみ上げてくる。

ぎゅっと携帯を両手で掴んで、額に当てる。

ショウ君……。

ちょうどそこへ、店員さんが注文したコーヒーを持ってきてくれる。

コーヒーを置くと、会釈して戻って行く店員さん。

その後ろ姿を見送って、おいらはショウ君に返信する。

『少し一人で考えるね……。ごめんね。』

送信ボタンを押して、苦いコーヒーを口にする。

コーヒーの苦みが、ショウ君が怒ったことを思い出させる。

初めてのことでびっくりして……。

何も考えられず、家から出て来ちゃったけど……。

少し落ち着いて考えてみる。

ショウ君は……。

携帯がブルッと震える。

携帯を開くとショウ君からで……。

『どこにいるのかだけでも教えて。』

ショウ君……。

おいら、ちゃんと考えなくちゃいけないから……。

『ごめん。また連絡する。』

そう打って、携帯を閉じる。

窓の外を見ると、電気の消えた家並みが、黒いシルエットになって浮かびあがる。

ショウ君はおいらの恰好が嫌だったんだよね?

この恰好……。

ショウ君はおいらを女扱いしたことなんてなかった。

女とか男とか関係なく、一人の人間として……。

おいらを好きだと……言ってくれた……。

考えていたら、急に睡魔が襲ってきて……。

いつの間にか目を閉じて、テーブルに突っ伏していた……。










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