「ふたりのカタチ」
ふたりのカタチ(やま)【41~60】

ふたりのカタチ (53)

 ←ふたりのカタチ (52) →Attack it  第一ラウンド

戻って来た類さんの手にはコーヒーが2つ。

「どうぞ……。お砂糖とミルクを入れてあります。

 今日は甘いコーヒーがいいでしょう?」

おいらはコクッとうなずいて、コーヒーをもらう。

コーヒーは熱くてすぐには飲めない。

でも、両手で包み込むように持つと……、ちょっとホッとする。

「今日は本当にごめんなさい。

 サトシさんを悲しませるつもりは……。」

「わかってます。類さんが悪いわけじゃない。おいらが……。」

全部おいらが悪い……。

ショウ君……。

思い出すと、鼻の奥がツンとする。

でも、我慢して、コーヒーに口を付けた。

コーヒーは熱くて……。

でも、少し甘くて……。

塀から垂れた足が、ぶらぶら揺れる。

「俺は女性としか付き合ったことがないから……。

 あなたを、どうしたら喜ばせてあげられるのかわからなくて……。

 女性のように扱ってしまって……。」

「類さん……。」

類さんがおいらの前に立つ。

おいらの両側に両手をついて、囲うようにしておいらを見つめる。

塀の上に座ってても、類さんの方が全然高い。

「男同士だって、きっと一人は女性のように……。

 そして、それはどちらかと言えば、サトシさんの方だろうと、

 そう思ってしまって……。」

「い、いいんです。そう思う人もきっといると思うから……。」

ショウ君は……大事にしてくれるけど、おいらを女扱いはしなかった……。

ショウ君……。

「ほんと、言い訳ですね……。」

「そんなことない……。」

ショウ君のあの時の顔……。

声……。

思い出すと、また涙が溜まってくる。

「あぁ、泣かないで。あなたの涙は俺の心臓に悪いんです。

 前の時も……平気なフリしたけど、ドキドキしてどうにもならなかった。」

「類さん……ご、ごめんなさい。」

おいらは手の甲で目を拭って、にっこり笑う。

「……無理して笑うくらいなら……俺が我慢するから、

 だから、好きなだけ泣いて……。全部忘れられるくらい泣いて……。」

「だ、大丈夫です……もういっぱい泣いたから。」

おいらが無理やり笑って、類さんを見上げると、おいらを映した目が潤んで揺れる。

「こんな顔、させたかったわけじゃないんだ……。」

「類さん……。」

類さんの手が、おいらを抱きしめて……。

類さんの温もりに包まれる。

「ただ……あなたの笑顔が見たかっただけ……。」

類さんの声が、耳元から聞こえる。

少し高めで優し気な類さんの声……。

類さんが、優しさからしてくれたのはわかってる。

ごめんなさい……。

おいらがちゃんと考えてたら……。

類さんにこんな迷惑かけなくてすんだのに……。

抱きしめられたままのおいらの手の中で、携帯が震える。

今度は……きっとショウ君……。

おいらは携帯をギュッと握り締める。

もう終わりだって言われたらどうしよう……。

でも、見ないと……。

「見ないで……。」

類さんの息が耳にかかる。

「え……?」

「見ないで、携帯……。」

おいらは類さんの真意がわからず、類さんの顔を見ようと首をずらす。

「今、あなたと一緒にいるのは俺だから……。」

類さんの顔がおいらから少し離れて、見上げたおいらの目と目が合う。

「あなたも、俺に……惹かれてる……。」

……おいらが、類さんを……?

類さんの顔が徐々に近づいてくる。

おいらは……類さんが……。

類さんの唇の先が、おいらの唇に微かに触れる。

好き……?

温かい唇が、おいらの唇を覆って……。

背中に回された類さんの腕が、ぎゅっとおいらを締め付ける。

おいらの手の中の携帯が、またブルッと震える。

おいらはそれをぎゅっと握り締める。

類さんのキスは優しくて、甘噛みするようにそっと動いて……。

おいらを慈しむように、おいらを労わるように、優しくゆっくり。

ああ……おいら、ショウ君じゃない人とキスしてる……。

ショウ君じゃない人と……。

優しくて上手なキス……。

気持ちよくって、フワフワしそうになるキス……。

類さんはずっと優しくて、イケメンで……。

辛い時に泣かせてくれて、気持ちを和らげてくれて……。

あの時も、泣いてるおいらを隠してくれた……。

今も、類さんの温もりは、おいらを温かくしてくれてる……。

……でも…………。

でも、類さんはショウ君じゃない……。

ショウ君じゃ……。

鼻の奥がぎゅっとする。

……おいら、ショウ君じゃなきゃ……。

ショウ君じゃなきゃ……。

知らない内に溢れた涙が、頬を伝って手の甲に落ちる。

類さんはゆっくり唇を離して、おいらの頬を指で拭う。

「そんなに櫻井さんがいい?」

おいらはコクッとうなずく。

嫌われちゃったかもしれないけど、

もう帰って来るなって言われるかもしれないけど、

おいらが好きなのは……ショウ君だから。

「そっか……。」

類さんはもう一度おいらをぎゅっと抱きしめて、体を離す。

「じゃ、家まで送って行くから……。」

類さんが車のキーを取り出す。

おいらはゆっくり首を横に振る。

「家には帰れない……。」

おいらは塀から下りて、類さんを見上げた。










関連記事
スポンサーサイト



 関連もくじ一覧 ▼ 
総もくじ 3kaku_s_L.png a Day in Our Life
総もくじ 3kaku_s_L.png Kissからはじめよう
総もくじ 3kaku_s_L.png Step and Go
総もくじ 3kaku_s_L.png 果てない空
総もくじ 3kaku_s_L.png Love so sweet
総もくじ 3kaku_s_L.png タイムカプセル
総もくじ 3kaku_s_L.png Hello Goodbye
総もくじ 3kaku_s_L.png season
総もくじ 3kaku_s_L.png 夏の名前
総もくじ 3kaku_s_L.png Welcome to our party
総もくじ 3kaku_s_L.png Deepな冒険
総もくじ 3kaku_s_L.png 三日月
総もくじ 3kaku_s_L.png WONDER-LOVE
総もくじ 3kaku_s_L.png みんなと作ったお話
総もくじ  3kaku_s_L.png a Day in Our Life
総もくじ  3kaku_s_L.png Kissからはじめよう
総もくじ  3kaku_s_L.png Step and Go
総もくじ  3kaku_s_L.png 果てない空
総もくじ  3kaku_s_L.png Love so sweet
総もくじ  3kaku_s_L.png タイムカプセル
総もくじ  3kaku_s_L.png Hello Goodbye
総もくじ  3kaku_s_L.png season
もくじ  3kaku_s_L.png 五里霧中(5人)
総もくじ  3kaku_s_L.png 夏の名前
もくじ  3kaku_s_L.png Troublemaker(5人)
もくじ  3kaku_s_L.png Crazy Moon(5人)
総もくじ  3kaku_s_L.png Welcome to our party
総もくじ  3kaku_s_L.png Deepな冒険
もくじ  3kaku_s_L.png 花火(やま)
もくじ  3kaku_s_L.png miyabi-night(5人)
もくじ  3kaku_s_L.png ZERO-G
もくじ  3kaku_s_L.png 復活LOVE(やま)
総もくじ  3kaku_s_L.png 三日月
総もくじ  3kaku_s_L.png WONDER-LOVE
総もくじ  3kaku_s_L.png みんなと作ったお話
もくじ  3kaku_s_L.png Believe
もくじ  3kaku_s_L.png コスモス
もくじ  3kaku_s_L.png MONSTER(やま)
もくじ  3kaku_s_L.png 智君BD
もくじ  3kaku_s_L.png ブログ
もくじ  3kaku_s_L.png ティータイム
【ふたりのカタチ (52)】へ  【Attack it  第一ラウンド】へ
  • TB(-)|
  • CO(-) 
  • Edit
  • 【ふたりのカタチ (52)】へ
  • 【Attack it  第一ラウンド】へ