「ふたりのカタチ」
ふたりのカタチ(やま)【41~60】
ふたりのカタチ (44)
2016.10.08 *Edit
朝、ショウ君が会社に行く時に、はたと思い出して聞いてみる。
「ショウ君の出張っていつ?」
靴を履きながら、ショウ君が答える。
「ん~っと、再来週の、水曜日から……。」
おいらの手から鞄を受け取り、おいらの二の腕を掴む。
「頑張って一泊にするから。」
「んふふ。うん。」
ショウ君がいつものようにキスをして、長くなりそうなのを、
なんとかおいらが止めて……。
「ショウ君、時間!」
「わかってる……でも、忙しすぎる会社が悪いと思わない?
少しくらい遅刻したって……。」
「ショウ君!」
おいらが上目遣いで睨むと、ショウ君は仕方なさそうにおいらから離れる。
「……わかってるよ。」
「あ……。」
おいらは金曜日のことも思い出す。
どうしよう。言わない方がいいのかな?
ショウ君、変に気にしちゃうかなぁ……。
でも……。
「どうしたの?」
ショウ君が首を傾げる。
「うん……。あの……。」
「ん?」
ショウ君がおいらをじっと見つめる。
「今週の金曜日、帰り、遅い?」
「うん、たぶん……何か用事?」
「うん。食事に行くことになって。だから、夕飯、作れないかも。」
「それは構わないけど……誰と?」
「……田村さんと類さん。」
ショウ君の眉がピクッと上がる。
「仕事?」
「仕事って言うか……納期調整のお礼だって。」
「お礼?」
「うん……。でも、ショウ君が行くなって言うなら、今からでも断るよ。」
おいらがショウ君を見上げると、
ショウ君は、渋い顔で、ちょっと考える風に左手を顎に当てる。
「わかった。あまり遅くならないように。」
「うん……。できるだけ連絡するようにするけど……。」
おいらが探るようにショウ君を見てるのがわかって、ショウ君がちょっと首を傾げる。
「……何?どうしたの?」
「行くなって言われるかと思った。」
「そりゃ、行かなくて済むなら行かせたくないよ。
でも、サトシの世界を俺が狭くするのは……嫌なんだ。」
「ショウ君……。」
おいらはショウ君の背中に腕を回す。
「おいら……ショウ君が行くなって言ったら本当に行かないよ。
仕事じゃないもん。」
「じゃ、行くな。」
間髪入れずに言うショウ君に、びっくりしたけど、すぐに返事する。
「うん、わか……。」
おいらがしゃべろうとするのを遮るようにショウ君が続ける。
「永遠に俺のことだけ考えて、この家でずっと一人で俺の帰りだけを待って……。」
「ショウ君……。」
「そんなこと、させられないでしょ?」
「でも、ほんとにおいら……。」
喋ろうとするおいらの唇をショウ君の唇が塞ぐ。
優しく舌を絡めるショウ君……。
「ぁん……。」
唇をゆっくり離し、おいらを見つめる。
「知ってるでしょ?本当の俺は独占欲の塊で、我が儘で……。」
「ショウ君……。」
「サトシがそんなこと言ったら、俺、部屋に閉じ込めちゃうから……。
だからそれ以上言わないで。」
「……うん。」
ショウ君はもう一度、おいらにキスをして、仕事に向かった。
おいらは洗濯機を回して、すぐに携帯を広げる。
ちょっと時間が早いけど、メールなら大丈夫かな?
心配しながらもメールを打って、家事を始める。
早めに終わらせて、昨日の続きを描きたい。
納期が早まったから、早めに終わらせないと……。
洗濯物を干していると、田村さんから返信が入る。
『わかった。金曜日は空けておくね。
花沢さんのオススメなら、きっと美味しくておしゃれなお店だね。』
それを見て、おいらは安心して洗濯物を叩(はた)いた。
金曜日。
朝の翔君はちょっと不機嫌。
ずっと終電続きだし、夜もあんまりできないし……。
「今日、だよね?」
「ん?」
玄関でショウ君に鞄を渡しながら首を傾げる。
「……食事会。」
「あ、そうだね。」
そうだった。
まだ今日のスケジュール確認してなかったから、すっかり抜けてた。
「ごめんね。夕飯、軽い物は作っていくから。」
「いいよ。帰りになんか食べて帰るから。」
「でも……。」
「それより、早く帰って来て……。」
「うん。」
ショウ君がおいらを抱きしめる。
「あんまり飲み過ぎないで。」
「わかってる……。」
おいらはショウ君の肩に顔を乗せる。
「ショウ君も、無理しないでね。」
「うん……。」
ショウ君の腕がぎゅっと締まって、苦しくなる。
「ショ……。」
顔だけなんとか動かしてショウ君を見ると、ショウ君の腕がちょっと緩んで、
おいらの唇に唇を重ねる。
深く重なる唇……。
絡む舌に、思わず体を擦りつける。
「ごめんね。ちゃんと相手してあげられなくて。」
「そんなことないよ。仕事がひと段落したら、たっぷり相手してもらうから。」
おいらが笑うと、ショウ君が優しく微笑む。
「俺も、今日はできるだけ早く帰るから……。」
「だから……無理しないで。」
おいらが口を尖らせると、ショウ君がその唇にチュッと小さなキスをする。
「わかった。無理しないで早めに帰って来るから。」
「うん。」
ショウ君の体を離すと、ショウ君がドアを開ける。
おいらもついて行って、玄関の前でいってらっしゃいと手を振る。
「行ってきます。」
ショウ君の背中は、ちょっと疲れて見えて……。
どうしたらショウ君を癒してあげられるのかな?
ショウ君の背中が見えなくなるまで、ずっと考えてたけど、いい案は浮かばなかった。
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