「短編」
短編(いろいろ)

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ポツッ。

肩に何かが当たる。

手の平を空に向け、見上げると、一面の暗いグレー……。

ポツッ。

冷たい物が、指の間を掠める。

また一つ、ポツッ。

……雨…………?

頭に手を翳し、慌てて駅に戻る。

キヨスクで傘を買えば帰れるかな……。

早めに買わないと、なくなるかも。

俺は急いでキヨスクに向かう。

案の定、駅の階段を下りてくる人々が、そこから動けず、どんどん増えていく。

キヨスクにも、もうすでに数人の人が並んでる。

その最後尾に並んで、強くなる雨脚を眺めた。

前にも、こんなことがあったっけ……。

あれは……。

ああ、そうだ。

智と初めて会った日だ。



俺は自転車での帰り道。

智は大きなトートバックを肩から下げて、ヨタヨタと俺の前を歩いてた。

そのトートバックの端をハンドルの端にひっかけて、俺の自転車がよろける。

智の体も引きずられるようによろけて……。

ガッシャーン!!

俺の上に転がってきた智。

俺も強か、体を打って……。

「いてっ……。」

キョロキョロ周りを見回して、智が俺の上にいることにその時気づいて……。

動かない智に、ちょっと焦った俺。

「あ、あの……。」

軽く肩をゆすってみる。

智は動く様子もない。

「大丈夫ですか……?」

つぶやくように聞いてみる。

全く動かない智……。

マジか……。

俺の上だから、そんなに衝撃ないと思うんだけど……。

どっかに頭でもぶつけたか?

俺が悪いよな。

引っ掛けたの、俺だもん……。

「もしもーし……。」

全然動かない……。

まさか……打ち所が悪かった?

俺はそっと体の向きをずらして、自転車の下から左足を引っこ抜く。

智を動かさないように注意しながら、足と腰を自転車から外す。

「あの……どこか痛いですか……?」

意識がないのに、痛いもないけど……。

俺は左足がジンジンしてるし、腰も打ったみたいでズキズキするし……。

最後と思って、もう一度肩をゆする。

「あの……大丈夫ですか?」

ちょっと大きく声を掛けると、今まで下を向いていた智の顔が、俺の方に向く。

よかった……生きてる……。

「き、聞こえますか?」

もう一度、声を掛ける。

すると、パチッと目が開いて……。

智が俺を見上げた。

俺と目が合ったその瞬間、バチッと電気が走って、

すぐにフワッと体が軽くなった。

なんだろう、この感覚……。

何が起きたのかわからない智は、不思議そうに俺を見つめる。

その目から、目が離せなくて……。

気付いたら、俺の手は智の頬に添えられて……。

ハッとして、手を引っ込める。

智はそれでも、まだ何が起こったのかわからないようで……。

ただボーっと俺を見ている。

道に迷った子犬のように、瞬きもせず、俺を見る。

「あ、あの……痛いとこ、ないですか?」

小さな声でそう言うと、智もハッとして、自分が俺と、自転車の上にいることに気づく。

「ご、ごめん。なんか、よくわかんなくなっちゃって……。」

慌てて体を起こそうとして、うっと顔をしかめる。

「どこか痛い?」

智は何も言わず、地面に着いた手を離して、もう片方の手で抱きかかえる。

「手?」

俺はその手に手を添える。

手の平は……ケガしてなさそうだけど……。

手の平を反(かえ)そうとすると、智がビクッと腕を引っ込める。

「腕……ケガしてる?」

「だ、大丈夫……。」

智は腕を庇うようにして、ゆっくり立ち上がる。

「そっちこそ、大丈夫?」

体を退けた智が、俺に向かって、逆の手を差し出す。

俺はそれを握って、自転車の上から立ち上がる。

「っつ……。」

手に力を入れて、引っ張ると、智が顔をしかめた。

「痛い?」

「大丈夫……ぼーっとしてたおいらが悪い……。」

「でも……。」

「ほんと大丈夫だから。それより、そっちは?どこも痛くない?」

「俺は大丈夫。」

強がって、腰と足が痛いことは言わない。

「何かあったら困るから……。」

俺は手帳を取り出して、自分の電話番号とアドレスを書き込む。

「これ。俺の。君のも聞いていい?」

手帳を破いて智に差し出す。

「う、うん……。」

智は小さく頷いて、俺から手帳の切れ端を受け取る。

「俺、櫻井翔。君は?」

「おいら……大野智。」

「智か……歳は?」

「二十一。」

「え、じゃ、俺より年上?俺、二十歳。」

「んふふ。翔君、しっかりしてるから、おいらより年上に見える。」

鼻にかかった声で、初めて智が笑った。

自転車を起こすと、ポタッと何かが俺の頭に当たる。

「……雨?」

俺が空を見上げると、智も一緒に空を見上げた。

「……あ、ポタッてきた。」

智が笑って俺を見る。

またフワッと浮き上がるような感覚……。

なんなんだろう。

この心地良いフワッとする感覚は……。

ポツポツと降り出した雨は、次第に雨音を大きくしていく。

俺と智は顔を見合わせ、笑いながら走り出した。










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