「ふたりのカタチ」
ふたりのカタチ(やま)【21~40】

ふたりのカタチ (37)

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「じゃ、せっかくですから、飯でも行きましょうよ。

 大野さんも一緒にどうです?」

田村さんが、ニコニコしながらおいらを誘う。

仕事が、本当に楽しいんだな。

乗りに乗ってるって感じだもん。

あ……仕事だけじゃなく、プライベートもか。

「もちろん。」

おいらもにっこり返事する。

「何がいいですか?」

田村さんは類さんに視線を向ける。

「なんでも。お任せします。」

「そうですか?じゃ、旨いてんぷら屋、この前見つけたんですよ。

 大野さんはてんぷら、大丈夫ですよね?」

「はい。」

「じゃ、そうしましょう。早めに行かないと込むから……。」

田村さんは書類を手早くまとめ、会議室の時計に目を向ける。

チラッとおいら達を見て、足早に会議室を出る。

「ちょっと、荷物置いてくるので、待っててください。」

エレベーターホールにおいら達を置き、バタバタと行ってしまう。

二人きりになって、類さんが済まなそうに眉を下げる。

「昨日は……大丈夫でした?一人で帰しちゃったこと、ずっと気になって……。」

「全然大丈夫です。おいらの方こそ、あんなところをお見せして……。」

昨日のことを思い出し、申し訳なくて下を向く。

「……本当に大丈夫でした?」

「はい。」

おいらはにっこり笑って類さんを見る。

類さんは……おいらのことを気にして、今日、来てくれた?

「それなら、いいんです。姿を見られて、安心できましたし。」

類さんがふわっと笑う。

「……おいらを心配して……?」

おいらが見上げると、類さんはにっこり笑ったまま、自分の首筋を撫でる。

「いや、本当にたまたま近くまで来たから……。

 田村さんに相談したいこともありましたし。」

照れ臭そうに笑う類さん。

おいらのこと、心配してくれたんだね。

ありがとう……。

おいらもふにゃっと笑う。

すると、類さんがスッと視線を外して、田村さんが行ってしまった方を向く。

「なんだろう……、今日のサトシさん……直視できないな。」

「え?」

「……色気って言うか……、いつも以上に魅力的で……。」

「そんなこと……。」

おいらは朝のショウ君とのことを思い出す。

あれが……まだ残ってるのかな?

カァーッと顔が熱くなって、下を向く。

一度思い出すと、なかなか頭から離れてくれなくて……。

顔を上げられないよ。

「櫻井さんに……慰めてもらったんですね。」

「……はぁ。」

そう答えるのが精一杯で……。

「櫻井さんが羨ましいな。」

「へ?」

「こんな可愛い恋人がいて。」

「る、類さんだって、キレイな奥さんが……。」

おいらはやっと顔を上げる。

「ええ、俺には過ぎた女房です。」

冗談のようにそう言って、にっこり笑うと、田村さんが走ってやってきた。

「ごめん、ごめん。お待たせ。」

勢いのままエレベーターのボタンを押し、おいら達を見比べる。

「なんの話をしてたの?」

田村さんがおいらを見る。

「んふふ。類さんのキレイな奥さんの話。」

クスッと笑うと、田村さんもホッと息をついて、楽しそうに笑う。

「それはぜひお聞きしたいですね。花沢さん?」

田村さんの明るい笑顔に、類さんが困ったように後頭部を叩く。

「そこは……個人情報なので、ご遠慮願いたい。」

茶目っ気たっぷりに笑う類さん。

「あはは、個人情報には何かとうるさいですからねぇ。」

エレベーターが、チンと鳴って、ゆっくりドアが開く。

「そうです。取り扱いが難しいところなので、またの機会に。」

「何をおっしゃる。逃がしませんよ?ねぇ、大野さん。」

田村さんに話を向けられて、おいらも笑ってうなずく。

エレベーターに乗ろうとすると、バタバタと足音が近づいてくる。

開けるボタンを押したまま、田村さんが、エレベーターから顔を出してキョロキョロする。

「た、田村さ~ん!」

若い男の人が、田村さんの名前を呼びながら走って来る。

「なんだよ。俺、これから昼。」

「この間のパッケージの色校が……。」

「ああ、できたの?俺の机の上に置いといてくれればいいから。」

「それを見た部長が、田村さんを呼んで来いって!」

若い男の人が、エレベーターの前で、はぁはぁ息をする。

「なんで?」

「あのキャッチはまずいだろって……。」

男の人は困ったように眉間に皺を寄せる。

「だから、あれはわざとだって。」

「言ったんですけど、聞いてくれないんですよ。」

「ったく、なんで見せるかなぁ。」

田村さんも、ちょっとイライラした様子で男の人を見る。

「そんなこと言われても~。」

「あぁ、わかったよ。」

大きく溜め息をついて、田村さんがおいら達に視線を向ける。

「というわけで、ちょっと行ってくるので、先に行っててください。

 すぐ行きますから。」

「今度にしましょうか?今日じゃなくても……。」

おいらが言うと、田村さんはおいらと類さんを交互に見て、ちょっと考える。

「いや、今日の方がいいでしょう。このビルの前の道を右に行って、二つ目の角を左です。

 らんざんって看板が見えますから。嵐に山でらんざんです。」

「わかりました。先に行ってます。早く行かないと、部長のご機嫌、損ねますよ?」

「はぁ……ハンコだけ押しててくれればいいものを……。」

苦笑いしながら、田村さんは男の人と行ってしまう。

「じゃ、行きましょうか。」

類さんがエレベーターのボタンを押して、ドアがゆっくり閉まった。










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