「テ・アゲロ」
テ・アゲロ the missing (5人)

テ・アゲロ  the missing ⑦ -11-

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「お兄ちゃん……今、なんて?」

何が起こってるのかわからず、不思議そうに舞が翔を見つめる。

「だから……前にも言ったけど、俺は男の智を好きになった!」

翔がそう言うと、初めて言葉が理解できたように、舞が目を瞠って声を上げる。

「お兄ちゃん!……それはカミングアウト?ゲイだったの?」

状況を飲み込めてきた風磨の顔が、一瞬、明るくなる。

「違う!男が好きなんじゃなくて、智が好きなの!」

「……どう違うって言うの?男が好きなんだから……そっち系の人ってことでしょ?」

「あれ?舞ちゃん、そういうの、気にしないんじゃ……。」

大野がポツリとつぶやくと、二宮が首を横に振る。

「たぶん……、風磨君のことで頭がいっぱいだったんでしょうね?」

二人はうつむきながら横目で視線を合わせる。

「違うんだって!……う~、舞にはわからないかなぁ?

 男とか、女とか関係なく、智を好きになった俺の気持ち。」

「……わかります。」

風磨の小さな声に、嬉しそうな翔が反応する。

「わかるか?やっぱ男同士だな、風磨。」

風磨は真剣な表情で翔を見ると、唾を飲んで口を開く。

「俺も……俺も、翔ちゃんが好きだから。」

「そうか、そうか、風磨には……。……ん?」

翔が首を捻り、さらにびっくりした舞が風磨を見つめる。

舞がいつの間にか離した風磨の手が、翔の手を掴み、グイッと引っ張る。

「す、好きです。翔ちゃん!」

「え、ええ~っ?」

二宮、舞が一斉に声を上げる。

大野はパンと音を立てて、手の平で額を叩き、

クルッと後ろを振り向いて、カウンターに目を向ける。

相葉は大野達に背を向け、チャーハン作りの真っ最中。

こちらに気づく様子はない。

時間差で、翔の声が店内に響き渡る。

「え、ええええ~~~っ!」

大野は背中でその声を聞いて、大きく溜め息をつく。

沈黙……。

誰も声を発することができない。

舞は風磨に告白済み。

風磨は……翔に告白し、その翔は、大野が好きだと言う。

ベクトルは一方向にしか向いておらず……。

誰の気持ちも報われない。

ただ一人、翔だけに、まだ微かな希望の光が降り注ぐのみ。

「……智……。返事……聞かせてもらえる?」

背中を向けたまま、ギクリと肩が上がる。

「え……。」

「俺と……付き合ってくれない?」

振り向かなくてもわかる。

大きなつぶらな瞳が、大野の背中を直視していることは。

大野はどうしたもんかと考える。

翔の若さは眩しく、素直さは可愛い。

断ったところで、風磨の気持ちに応えたら、全うな道ではいられないんじゃないのか?

舞ちゃんの気持ちもある……。

なら、いっそ自分が……。

そう思って、振り返り、翔に目をやる。

案の定、つぶらな瞳が、真摯な想いを伝えてくる。

「翔君……おいら……。」

大野が口を開くと同時に、大野の首に力強い腕が絡まる。

「え……?」

「すみませんね。これ、俺のなんで。」

大野の鼻を、櫻井のコロンの香りがくすぐる。

驚いて振り向こうとすると、ギュッと抱きしめられて、振り返ることもできない。

「ちょ……、何してんだよ!」

「何って?抱きしめてるんじゃない。honeyを。」

「うっ……、き、気安く触んな。」

「俺のなんだから、俺が触ろうと、抱き着こうと、舐めまわそうと、

 愛を囁こうと……俺の自由でしょ?」

「ふ、ふざけんなっ!」

「フゥッ。」

櫻井は大野の耳に息を吹きかける。

大野は、ビクッと体を跳ねさせ、両手で耳を抑える。

徐々に染まっていく大野の顔。

「わかった?俺達がどんな関係か。」

櫻井は、ふふん、と鼻を鳴らし、翔を見下ろす。

「だ、だからなんだって言うんだよ。体の関係があったからって、

 気持ちまであるとは……。」

チラッと舞を見る。

翔でも妹の反応が少し気になる。

「お兄ちゃん……。」

舞は、じとっと軽蔑するような視線で翔を見る。

「せ、世間一般の話で、俺のことじゃないから。」

翔は後ろから抱き着かれたままの大野に向かう。

「俺は、あなたを大事にするよ。俺の“モノ”扱いなんてしない。

 体も心も、智だけを生涯かけて愛する。」

「翔君……。」

大野も真っ直ぐ翔を見る。

その場の全員が大野の次の言葉を待っている。

「おいら……。」

翔がゴクッと唾を飲む。

大野は口を開きかけて、言葉を選んでるのか、口を閉じる。

「智……!」

翔の心臓が、ここへ来て、ドキドキと音を立てる。

智の次の言葉を、みんなが固唾を飲んで待つ。

みんなを見回し、一息つくと、観念したように大野が口を開く。

「翔君……。」

「智……。」

翔は、真っ直ぐ大野を見つめる。

「……生涯かけておいらだけとか、無理だわ。」

「智……。」

みるみる翔の顔が曇っていく。

「おいらは、翔君が思ってるようなやつじゃない。

 もっとチャランポランで……、ヤリたい時にはヤルし……。

 それこそ、相手が男だろうが女だろうが……。

 だから、真面目な翔君に相応しくないよ。他のやつ好きになった方がいい。」

「智……。」

「だって、無理だろ?翔君と付き合ってても、おいら、こいつと寝るぜ?」

大野はグッと手を伸ばし、櫻井の首を引き寄せる。

そのまま、櫻井の唇に唇を重ねる。

「ひゃっ……。」

舞が思わず出た声を、抑えるように両手で口を押える。

風磨の唾を飲む音が響き、

翔はじっと、大野と櫻井を見つめる。

大野は重ねた唇を開き、櫻井の唇の間に差し込む。

唇と唇の隙間から見える、大野の舌の動き。

クチュッと音が響き、耐えられず、翔が立ち上がる。

それでも、濃厚なキスを続ける二人。

翔は唇を引き結び、泣きそうな顔で走り出す。

「お兄ちゃん!」

「翔ちゃん!」

ドアが開き、カランと音がして、翔が出て行く。

ドアが閉まったのを横目で確認し、櫻井から離れると、

大野は舞と風磨に向かって言う。

「追いかけてあげなよ。今度は翔君がいなくなっちゃうかもよ。」

舞と風磨は顔を見合わせ、立ち上がり、ドアに向かう。

「報酬の件は、後ほどご連絡させて頂きます!」

二宮が二人の背中に向かって叫んだ。







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