「ふたりのカタチ」
ふたりのカタチ(やま)【21~40】

ふたりのカタチ (35)

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ショウ君の匂いに包まれて、温もりの中で安心して……。

いつの間にか寝てしまったおいら。

気付いたら、ベッドに寝ていて……。

左右をゆっくりと確認する。

左を見ると、ショウ君の長い睫毛が、すぐそばにあって、

フッと息を吹きかけたら、睫毛がフワッと揺れる。

そんな距離に、思わずクスッと笑う。

首の下にはショウ君の腕。

ベッドの中でもショウ君に包まれてたおいら……。

寝息を立てるショウ君を見上げる。

類さんに会って泣いても、カズに話を聞いてもらっても、

消えなかった心の震え。

落ち着いたと思ってたのに、本当には落ち着いてなかったんだね。

自分でも気づかなかったくらいなのに。

ショウ君……。

すぐに電話に出たかったんだよ。

でも、声を聞いたら、来て欲しいって言っちゃいそうで……。

それはおいらの我が儘。

今、こんなに忙しいショウ君に、来て欲しいなんて言っちゃいけない……。

逃げられたんだもん。

ショウ君を呼んじゃいけない……。

グッと堪えたんだよ。

おいらはショウ君を抱き寄せてギュッと抱きしめる。

寝てるショウ君も、ギュッと抱きしめてくれたような気がする。

ショウ君……。

おいらは、ショウ君の胸に頬を押し付ける。

トクン、トクンと音が聞こえて、おいらはもう一度瞼を閉じた。



次の日。

いつもと変わらない朝。

でも、朝ご飯を食べながら新聞を読んでたショウ君がポツリと言う。

「今日は仕事休む。」

新聞から目を離さないショウ君。

「……どうして?」

おいらはショウ君のコーヒーを淹れながら聞く。

「……どうしても。」

ショウ君は新聞を折りたたんで脇に置く。

「忙しいんでしょ?」

「……でも休みたい。」

「ショウ君……。」

「……サトシの側から離れたくない。」

ショウ君がおいらを真っすぐに見る。

「……ダメだよ。仕事に行って。おいらも今日は打ち合わせがあるから。」

ショウ君の前にコーヒーを置く。

「……花沢さん?」

「……違うよ。今日は。」

おいらも自分のマグを持って、ショウ君の前に座る。

じっとショウ君を見つめるおいらを、下唇を噛んで見つめるショウ君。

「ショウ君……ほんとに仕事休むの?」

「……休む。」

「……できる?」

「できるさ。サトシの為なら。」

「ショウ君……。そんなの、おいらの為なんかじゃ……。」

目と目が合って、すぐに逸らされる視線。

「わかってるよ……。」

足を組み直し、また新聞を広げるショウ君。

ショウ君の前には朝ごはんのピザトーストとサラダ。

二口齧っただけで、忘れたみたいに手を付けない。

おいらの手に持っていたマグカップをテーブルに置いたら、

コトッと音が響いて、それがやけに寂しくて……。

「朝ごはん……食べたくない?」

おいらが聞くと、ショウ君はチラッと目の前を見る。

「今日は、あんまりお腹空いてない……。」

「もう少し……食べられない?」

「ん……ごめん。」

おいらは首の角度を変えて、ショウ君を覗き込んでみる。

ショウ君は、わかっているのに、視線を合わせてくれない。

「……うん、ショウ君にも、お腹の空いてない時だってあるよね……。」

おいらは手を伸ばして、ショウ君のピザトーストを取る。

「もったいないから、おいらの朝ご飯にするね……。」

おいらは一口齧ってみる。

まだ仄かに温かい。

もうチーズは伸びてくれないけど……。

ショウ君は、食べてるおいらをチラッと見て、また新聞に視線を戻す。

「美味しいね……。」

さらに一口齧ったら、パンが二つに分かれた。

口からはみ出たピザトーストを、噛み切ろうとしたら、

ショウ君の顔が近づいてきて、反対側からパクッと食べる。

おいらがびっくりして見ていると、さらにまた一口。

口の外に残ったはみ出してるパンを、舌で口の中へ入れようとすると、

ショウ君の口が近づいてきて、それもパクッと食べる。

「ショウ君……。」

ショウ君はモグモグと口を動かし、新聞を読み続ける。

おいらは残ったピサトーストを二人の間にかざして、

こっち側に齧りつく。

ショウ君も視線を逸らしながら、あっち側に齧りつく。

パク。

パクパク。

徐々に顔が近づいて、最後には唇が触れ合って……。

やっとおいらを見てくれたショウ君。

「美味しいね。ショウ君。」

おいらがふにゃっと笑うと、ショウ君も口をへの字にしながら笑う。

「サトシと食べると何でも美味しい。」

「んふふ。おいらも。ショウ君と食べると、なんでも美味しい。」

おいらはコーヒーを一口飲んで、また笑う。

ショウ君といると、苦いコーヒーも甘くなる。

残ったパンも美味しくなる。

「サラダは、ショウ君が食べてね。」

ショウ君は新聞を置いて、フォークを手にする。

「いや、これも二人で食べよう。」

ショウ君はそう言って、フォークにサラダを乗せる。

それを、さっきみたいに二人の間にかざす。

「うそ。それも?」

おいらが目を見開くと、ショウ君がクスッと笑う。

「これは……さすがに無理か?」

フォークはおいらのすぐ前までやって来る。

おいらがパクッと口に入れると、ニコッと笑ったショウ君が、

今度は自分の口に放り込む。

「うん。うまい。」

二人でモグモグしながら、クスクス笑う。

ショウ君の口の端に、千切りのニンジンがくっついて、

頬が動く度に落ちそうになる。

おいらはグッと体を伸ばし、ショウ君のニンジンを舌でペロッと絡めとる。

「ニンジンも……美味しい。」

おいらがそう言ったら、ショウ君は、サラダを口いっぱいに詰め込んで、

口の周りをサラダだらけにする。

「ショウ君、やり過ぎ!」

ショウ君はちょっとお道化たように笑って、顔をおいらの方に突き出した。










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