「テ・アゲロ」
テ・アゲロ the missing (5人)

テ・アゲロ  the missing ⑦ -8-

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「翔君なのか……。」

風磨は顔を上げず、ずっと自分の足元を見つめている。

櫻井はよくわからないと言った顔で大野を見る。

「翔君は……舞ちゃんのお兄ちゃん。」

大野が言葉少なに言うと、櫻井も、はぁん、と小さくうなずく。

「確かにそれは言いにくいね……。」

風磨はどうしていいかわからず、もじもじとつま先を動かす。

「逃げる……つもりはなかったんです。

 ちょっと時間が欲しかっただけで……。」

「まぁ、多少の時間は必要だわな。」

風磨がコクリとうなずく。

「翔ちゃんに告白して……フラれて、舞にそれを話そうと……。

 でも、最後の勇気がでなくて……。」

告白したら、今までの関係ではいられなくなる。

翔とも、舞とも。

それを考えれば、風磨が後一歩踏み出せないのもわからなくはない。

大野は風磨の肩を叩く。

「すぐじゃなくてもいいんじゃないか?」

風磨が顔を上げ、大野を見つめる。

「気持ちが……どうにも告白したくなった時で。

 舞ちゃんにはちゃんと話してさ。」

「でも……。」

風磨は不安そうな顔でチラッと櫻井を見る。

「舞ちゃんはわかってくれるよ。」

大野の言葉に、風磨の視線が移る。

「……相手が……お兄ちゃんで……男同士でも……?」

大野は舞を思い出す。

翔の言葉に動じなかった舞……。

「大丈夫じゃないか?舞ちゃん、結構、度胸が据わってるって言うか、

 小さなことにはこだわらないタイプに見えたぞ?」

「そうでしょうか……。」

「そうだよ、きっと大丈夫。」

大野は風磨の肩をバシバシ叩く。

「こんなとこに隠れてるよりずっといい!」

大野の勢いに押され、風磨も、はぁ、とうなずく。

「よし、決まり!家に帰って、明日、舞ちゃんに話をしよう。」

「は、はい……。」

大野は風磨の肩を抱くようにして外へ連れ出す。

「あ、荷物が……。」

そのまま外に出そうになりながら、風磨が部屋へ戻って行く。

「荷物、多いの?」

「いえ……何日もいるつもりはなかったので……。」

風磨は部屋の中を歩き回って、荷物をまとめていく。

「……そう言えば、ここ、友達の部屋?」

「ええ……最近知り合った友達です。」

「ネット?」

櫻井が大野の後ろから部屋の中を見回す。

「……はい。ゲームで知り合って……どこかに行きたいって言ったら、

 俺んちにくればって。」

「ふぅん。」

大野も部屋の中に入って行く。

「名前は?」

「ハンドルネームしかわかんないけど……。」

大野は廊下を突っ切って、部屋の入口で立ち止まる。

「ハンドルネーム?」

「うん。シリウスって。」

部屋の中を見て、息を飲む。

入口からは見えない壁一面に張り出された、無数の赤いカード。

大小さまざまな赤いカードに描かれているのは椅子の絵と文字。

真ん中には一段と大きな赤いカードが、

ナチスドイツのハーケンクロイツのように悠然と掲げられている。

「これと同じもの、持ってるよね?」

大野の目が光る。

「ああ、部屋に貼ったやつ?シリウスに貰ったんです。」

いつの間にか部屋に入ってきた櫻井も、その壁に目を奪われる。

「君は……シリウスの、このカードの事件、知らないのかい?」

「……詳しくは知らないけど……。」

風磨は怪訝そうに櫻井を見る。

「でも、連続殺人事件で使われたカードだって知ってるんだよね?」

「そうだけど……カードが殺したわけじゃないから……。」

「……それは……君の言葉?」

風磨は最後に携帯をポケットに突っ込んで、部屋の中を見回す。

「……シリウスが言ってた……。」

「風磨君は……そいつと何度会った?」

風磨はリュックを背負って、う~んと考える。

「……2回かな?」

「2回……。」

「1度目はネットで盛り上がって……会おうってことになって、新宿で……、

 2時間位、話したかな?」

「2度目は?」

「2度目は、ここにくればって、言ってくれた時、住所教えてもらって、ここで会った。」

「ここで?そいつは今日、帰って来る?」

「ううん。どこかに行くって。当分帰らないから好きに使ってって。」

風磨は手の平の上の鍵を見せる。

「帰りたくなったら、郵便受けに入れといてくれればいいからって。」

「そいつ……どんなだった?」

大野は壁のカードをじっと見つめる。

「どんなって……。」

風磨は大野が何を聞きたいのかよくわからない。

「見た目ってこと?」

「……そう。見た目。」

「……色白で……外国人みたいなイケメンで……。」

大野は黙って風磨の言葉を聞いている。

「……ああ、そうだ!左の肘の近くに傷跡があった!」

風磨の言葉に大野がビクッと反応する。

「……傷……?」

「そう、初めて会った時、チラッと見えただけだけど……。この辺り。」

風磨は自分の左の肘から5センチ位の所を指し示す。

「ほくろ一つなさそうな肌だったから、覚えてる。」

その左肘をじっと見て、大野の動きが止まる。

「トー…マ……。」

ポツリとつぶやいた言葉に、櫻井の眉が動いた。










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