「テ・アゲロ」
テ・アゲロ the missing (5人)

テ・アゲロ  the missing ⑦ -6-

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「あ~、ニノ?今、ターゲットの隠れ家の前なんだけど、

 今から言う住所、調べてくんない?

 渋谷区代々木…………。」

大野は電話を切ると、目の前のアパートを見上げる。

二階の奥から3つ目の部屋に風磨は入って行った。

ここに転がり込んでることは間違いない。

問題は理由だな。

大野はポケットから煙草を取り出し、口に咥える。

翔君の妹が原因か、全く関係ないのか……。

後は、カード……。

なぜあのカードを使ったのか……。

ライターを点け、その炎を見つめる。

ニノは……いつもと変わらぬ風を装っていたが、明らかに動揺している。

あの時のカードでないことは、すぐにわかったはずなのに。

わざわざ御村聖一についてまで調べていた……。

大野は煙草に火を点け、大きく息を吸う。

肺を巡った煙をゆっくり吐き出すと、頭がすっきりしてくる。

「シリウス……。」

大野は小さくつぶやいて、柱の陰に体を隠した。



道の電灯がポツポツと灯り始めた頃、大野の携帯が鳴る。

「もしもし……。」

大野は下を向き、足元に散らばった吸い殻を踏みつぶす。

「わかりましたよ。その住所、名義は鈴木一郎になってます。」

「鈴木一郎?」

「ええ。風磨君の友達関係じゃないみたいですね……。」

「友達じゃない……じゃ、どういった知り合い?」

「さぁ……。今はどこでも知り合えますから……。SNSとか、ネットとか。

 ゲームでだって知り合えるんだから。」

「テニスサークルでにこやかに笑顔を振りまく男が、ネトゲはないだろ?」

二宮がクスクス笑いながら、手元の紙をパラパラ捲る

「表立った友達関係ではないようですね。」

「そうかぁ、じゃ、取りあえず、乗り込んでみるか?

 期日は明日までって言っちまったし。」

「それは、大野さんの仕事ですから、お任せします。」

「冷たいなぁニノは。おいらがその鈴木一郎とかに捕まって、

あんなことやこんなこと、されちゃってもいいのかよ~。」

「そんなことになったら、鈴木一郎に動画送ってもらいます。」

「ニノ~っ!」

「そんな大声出さなくても聞こえるから。」

二宮は腕を伸ばして、めいっぱい携帯を耳から離す。

「中に何人いるかもわからないんですか?」

「部屋への出入りはない。ターゲットが買ったのも雑誌と飲み物と菓子パンをいくつか。

 誰かの為に買った感じじゃなかった。」

「じゃ、一人かもしれませんね。」

「何人かいたら……ターゲットが危険に巻き込まれる。」

大野は小さく息をついて、アパートを見上げる。

こちら側からでは電気を点けたかどうかもわからない。

「もう少し、様子を見るか。」

つぶやくようにそう言って、足元の吸い殻を蹴る。

「わかりました。」

「何かわかったら連絡くれ。」

「了解。」

電話が切れて顔を上げると、近くの家からカレーの匂いが漂ってくる。

「う……。」

腹が減ってることに気づいても、一人では買いに行くこともできない。

口を尖らせながら、また煙草を咥えて空腹感を紛らわせる。

「これじゃ、煙草辞めるなんて夢のまた夢だな?」

「いいんじゃない?辞めなくて。」

後ろから、聞き慣れた声がして振り返る。

爽やかな笑顔を携えて、櫻井が立っている。

大野の顔がパッと明るくなる。

が、すぐに柱の陰に引き込む。

犬の散歩中の女が、チラッとこっちを窺う。

イケメンは無駄に目立つ……。

大野は溜め息混じりに櫻井を見上げる。

やり過ごしたことを確認して、大野は櫻井の腕を掴む。

「いいところに!」

「ん?何?珍しいね。honeyに歓迎されるなんて。」

櫻井はクスッと笑いながら、大野の肩に腕を回す。

「ほんと、お前は俺が欲しい時にやってくる!」

「あ、何?今すぐ?……それはさすがに……。」

櫻井が、楽しそうにキョロキョロと周りを見回す。

「ちげぇよ。ばかっ。」

「ははは。ばかはないでしょ。」

櫻井の手が大野の後頭部に触れる。

「何か買ってきてくれ。腹減った。」

「仕事中?」

「ん~。」

大野は、アパートを見上げ、櫻井に視線を移す。

「あ~、張り込み中ね。じゃ、これ食べる?」

櫻井は持っていた紙袋から、四角い物を取り出す。

「美味しいってうわさのサンドイッチ。」

「おぉ~、ナイスタイミング。」

大野はすぐさま、包みを開いて齧りつく。

「うめぇ。」

口の端に卵を付けながら、口いっぱいに頬張って美味しそうに食べる。

そんな大野を見て、櫻井は鞄からペットボトルを取り出す。

「ほら、喉に詰まるから。」

ペットボトルのキャップを外して、大野に渡す。

大野は片手にサンドイッチ、片手にペットボトルを持ちながら、

交互に口に入れていく。

「そんなにお腹空いてたの?」

黙って食べ続ける大野を見て、櫻井が愛おしそうに微笑む。

大野は櫻井の表情に気づいているのかいないのか、

ひたすらサンドイッチに齧りついた。



サンドイッチを食べ終わって、ペットボトルの水をゴクゴクと飲むと、

一息ついた大野が、やっと櫻井を見上げる。

「ありがと。旨かった。」

ペットボトルを櫻井に返す。

「それはよかった。で、今日はずっと張り込み?」

「まぁ、そうだな。」

大野はアパートを見上げる。

一人だとは思うが、用心は必要……。

「早く終わらせる気はないの?」

「ん?」

大野が櫻井に視線を移すと、櫻井がニヤッと笑う。

「せっかくhoneyに会えたのに、このまま手ぶらで帰らせるわけ?」

「うっせぇ。俺は仕事中。」

「あの部屋に誰がいるの?」

「……守秘義務。」

櫻井は、ん~と考えて、大野の顎を掬う。

「じゃぁ、質問を変えよう。どうしたら今日は帰れる?」

「どうしたらって……あの部屋にいるやつに、話を聞いてだな……。」

「なるほど、じゃ、聞きに行こうか。」

櫻井は大野の腕を取って歩き出した。










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