「ふたりのカタチ」
ふたりのカタチ(やま)【21~40】

ふたりのカタチ (25)

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田村さんの会社を出て、類さんは当然のように聞いてきた。

「お昼、何が食べたいですか?」

「あの……。」

ショウ君に、二人っきりにならないでって言われてる。

「今日はここで……。」

おいらがそう言うと、類さんがクスッと笑う。

「櫻井さんが、そう言ったんですか?」

「え?」

おいらが見上げると、類さんが目を細めておいらを見下ろす。

「櫻井さんが、俺とランチに行くな……いや、二人になるなって言ったんでしょ?」

「そ、そんなことは……。」

おいらは類さんから視線を外す。

どうしてわかったんだろ……。

「櫻井さんも小さい男ですね。仕事の付き合いにまで制限をかけるなんて。」

「いや、ショウ君はそんなこと……。」

「それだけサトシさんを大事にしてるんでしょうけど……。

 自分に自信がないのかな?」

クスッと笑う類さんに、ムカッとして、おいらにしては大きな声が出る。

「ショウ君はそんな男じゃありません!」

キッと類さんを見据えると、類さんはニコッと笑う。

「だったら……。」

類さんはニコッと笑ったまま、おいらの背に手を添える。

「ランチ行っても構いませんよね?お昼、何が食べたいですか?」

おいらを見下ろす類さんの顔は優しくなってて……。

背中に添えられた手が、おいらを前へと推し進める。

二人っきりになるなって言われてるのに……。

おいらは、はぁと溜め息をつく。

「何でもよければ、美味しい魚の店があるんです。」

類さんが楽しそうに言って、おいらを見る。

おいらはポツリとつぶやく。

「ラーメンと餃子……。」

「ん?」

類さんがおいらに顔を近づける。

「ラーメンと餃子が食べたい……。」

「ラーメン?」

首を傾げる類さんに、さらに言う。

「ラーメン……きらいですか?」

「好きですけど……この辺ではあまり美味しいお店を知らなくて。」

「おいら知ってるから……行こ。」

おいらはズンズンと歩き始める。

そうだよ。二人にならなきゃいいんだから……。

お昼休憩も、もう終わりそうな時間。

この時間なら入れるかな?

10分位歩いて、着いたお店を見て、類さんも嬉しそうに頬を上げる。

「俺も、ここのラーメン、好きなんですよ。特に餃子が旨くって。」

おいらも、うんうんとうなずく。

今月はここにいるって、マー君、言ってたような……。

お店から漏れる美味しそうな匂いが辺りを包んでて、

それだけで口の中がジュワ~っとして、お腹が空いてくる。

店の前には5人位並んでる。

でも、5人ならすぐかな?

その一番後ろに二人で並ぶと、類さんがニコニコしながらおいらを見る。

「そう言えば、書いてありましたね。どこかの雑誌で……。」

「んふふ。ここのラーメンが一番好き。」

おいらも、お店の匂いをクンと嗅いで、笑顔になる。

「そうそう、餃子と一緒に食べるって。」

「そう。味噌ラーメンのスープに付けて食べると、めちゃくちゃ美味しい!」

「その食べ方、読んでから、俺もやってみたんですけど、美味しいですよね。」

「でしょ?ショウ君と食べる時は、いっつもそれ!」

「じゃ、今日も味噌ラーメン?」

「ん~、どうしようかな……。今日の気分は……塩ラーメンかな?」

「塩も美味しいですよね。ここのはスープが旨いから。」

「うん!」

二人でラーメン談義に花を咲かせていると、次々前の人がいなくなる。

おいら達の後ろにも、やっぱり人が並ぶ。

本当に美味しいから、並んでも食べたいよね?

あんまり並んでなくてよかった!

そんなことを思っていると、ちょうどおいら達の番になった。

お店に入って、カウンターの中を見ると、マー君が頭にタオルを巻いて麺を上げている。

おいら達をチラッと見たマー君が、満面の笑みで笑う。

「いらっしゃい!あれ?今日はショウちゃんとじゃないの?」

「うん。今日は打ち合わせの帰り。」

「こんにちは。」

類さんもマー君に挨拶する。

おいら達は、カウンターの奥の空いてる席に座る。

「おっ、イケメンだねぇ。これはショウちゃん、ヤキモチ焼いちゃうよ。」

「そんなことないよ。」

おいらは笑って塩ラーメンを注文し、類さんは味噌ラーメンと餃子を注文する。

「あ、おいらも餃子!」

「喜んで!」

マー君が若い店員さんの耳に小声で何か言う。

みんな、阿吽(あうん)の呼吸で、次々ラーメンを作っていく。

この無駄のない動き、見ててほんと飽きない!

お店の中は冷房が利いてるけど、マー君もお店の人もみんな汗ダラダラで、

働いてるって感じ。

あんなに汗掻いて、マー君がこれ以上痩せないか、おいらはそれも心配。

すぐにラーメンはカウンターの上にやってきて、

おいら達は美味しく頂く。

アツアツの餃子もやってきて、パリッとした底が、美味しそうなきつね色で。

餃子を塩ラーメンに付けて食べてみたけど、味噌ラーメンの方が好きかも。

「餃子、味噌の方が美味しいと思ってる?」

類さんが、おいらの気持ちを読み取ったみたいに聞く。

「え?」

「そう思ってるでしょ?」

そう言って、自分の丼をおいらの方に差し出す。

「いいですよ。付けても。」

丼の向こう側でラーメンを食べながら、目でどうぞと促す。

おいらはどうしようかと考えて、ゆっくり首を振る。

「今日は塩ラーメンの気分。」

類さんは、ふふっと笑って、レンゲでスープを飲んだ。










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