「ふたりのカタチ」
ふたりのカタチ(やま)【1~20】

ふたりのカタチ (16)

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お店から出ると、類さんはにっこり笑っておいらの前に立つ。

「次回の打ち合わせはまた連絡します。

 おおよそのスケジュールは田村さんにお送りしてありますので、

 後で確認してみてください。」

「はい。今日は本当にありがとうございました。

 アニメ、とっても楽しみです。」

安彦先生のCM、早くできるといいな。

「ええ、楽しみに待っててください。」

類さんはそう言って、おいらの手を両手で握る。

「サトシさんの絵も、楽しみにしてますから。」

ショウ君とはまた違った大きな手に、ぎゅっと包まれる。

「さっきも思ったけど、サトシさんの手……細くてしなやかで、綺麗な手ですね。

 とても男の手とは思えない……。

 この手が、全ての作品を作り出してる……大事にしてください。」

「……はい。」

お、おおげさだよ、類さん!

隣にいるショウ君がニコッと笑って、類さんの手を払い退け、おいらの手を握る。

「わかってます。家でも大事にしてますから、ご安心を。」

類さんもニコッと笑って、払い退けられた自分の手に、

埃を払うようにフッと息を吹きかける。

「ええ、ぜひ、そうしてください。

 サトシさんの手は、日本の、いえ、世界の宝ですから。」

だから~、おおげさなんだって~。

おいらが困って眉間に皺を寄せると、ジュン君が呆れたように肩を竦める。

「サトシも……大変だな。」

わかる?

と、目で合図を送ると、ジュン君が小さくうなずいた。

「それでは、ここで。」

類さんはにっこり笑って軽く会釈すると、おいら達とは違う路線に向かって歩いて行く。

その背中を見つめながら、ジュン君がつぶやく。

「類は、いいやつなんだけど……自分に正直って言うか……。」

ジュン君が、困ったやつだと言う感じで首を傾げる。

「おいら、すっごく助けられてるよ。

 今日だって、おいらの憧れのクリエイターの人に合わせてくれてね。」

おいらの顔を見て、ジュン君は溜め息混じりにつぶやく。

「それが……仕事だけのことならいいんだけど……。」

チラッとショウ君を見る。

「あいつさ、あの見た目だし、頭もいいし、家も金持ちだし、

 黙ってても周りが寄って来て、なんでも簡単に手に入っちゃうから……。

 ちょっと我が儘っていうか、負けず嫌いだし……。」

「何もジュンがそんな顔をすることないよ。今日はありがとな。」

ショウ君の笑顔を見て、ジュン君がホッとしたようにおいらを見る。

「でもよかったよ。サトシが穴だらけにされてなくて。」

「ジュン君!」

おいらが口を尖らせると、笑いながら、おいらの頭をポンポン叩く。

その目が改札の時計で止まる。

「やべっ!急がないと!結婚式の打ち合わせの最中だった!」

「え~、そんな大事な時に!?」

「サトシの一大事だって言うから。」

「誰が言ったの?」

「え?」

ジュン君がチラッとショウ君を見る。

ショウ君は、口笛を吹く真似をしてそっぽを向く。

「ショウ君……。」

ジュン君は笑いながら手を振って行ってしまう。

「またね~、ジュン君!」

ジュン君の背に向かって声を掛けると、ジュン君が小さく手を上げてくれる。

おいらは溜め息をついて、ショウ君を見上げる。

「ショウ君……ジュン君にまで迷惑かけて……。」

ショウ君は何も言わず先を歩く。

「ね……ジュン君と友達だって知ってたの?」

「知らないよ。でも、サトシからイベント会社の人が隣の旦那だって聞いた時、

 すぐにネットで調べた。」

「ショウ君……。」

「ああいう仕事してるやつは、たいていSNSの一つくらいやってるからね。

 で、ジュンと同じ大学だってわかったから、ジュンに連絡して……。

 そしたら、相当な遊び人だって言うし……。心配にもなるだろ?」

ジュン君、そんなこと言ったらショウ君がどうなるか……。

「佐々木にそれとな~く、

 『サトシ担当のイベント会社の人は遊び人で、サトシが狙われてる』

 って教えてあげて……。」

「教えてあげてって……。」

おいらは呆れてショウ君を見上げる。

「今日、田村さんなしの打ち合わせがあるって佐々木が鼻息荒く言ってきたから、

 ジュンにすぐ連絡して。この辺なら、あの店だろうって言うから、

 近くの取引先で商談して、あの店に向かったんだけど……。

 意外に商談が長引いちゃって。」

「走ってきたの?」

「あれ……できるだけスマートに登場したかったから、

 息は切らないように頑張ったんだけどな。」

ショウ君が楽しそうに笑う。

「来てすぐ水、がぶ飲みしたらわかるよ。」

「ふふふ。そうだね?これからは気を付けるよ。」

「ショウ君……探偵になれる……。」

「今の情報化社会、全て、繋がり、情報が大事なんてす。」

ショウ君はニコッと笑う。

おいら……笑えないから。

どこにいてもショウ君がやってきそうで……ちょっと怖いよ。

「そんな顔しない。」

ショウ君がおいらの頬を両手でプニッと摘まむ。

「サトシを助けに来たのに、そんな顔されるとは心外だな。」

ショウ君の手がプニプニと頬を揉む。

「……助けられるようなこと、何もないから!」

「でも……あ~ん、してたでしょ?」

「あれは……おいら食べてないし……。」

「俺が来なかったら食べてた?」

「…………。」

「ほら、食べたでしょ?」

「でも、そんなの……。」

ちょっと恥ずかしいくらいで、大したことじゃないよ~!

「じゃ、サトシは俺が他の女から、あ~んとかしてもらっても怒らない?」

「……怒らないよ。」

「ほんとに?手を握っても?」

ショウ君がおいらの手をギュッと握る。

「肩を抱いても?」

「そこまでしたら……。」

「したら?」

ショウ君が試すようにおいらを見る。

「……怒らないけど……悲しくなる……。」

ショウ君はポンポンとおいらの頭を撫でて、頭を抱え込むように抱きしめる。

「俺も一緒……。」

そのまま、おいらの肩に腕を回し、歩き出す。

「だから……簡単に手を握られたりしないで欲しい。」

「でも、さっきのは……。」

「握手?」

「うん……。」

「その違いは……サトシには難しいかなぁ。」

ショウ君が小さく溜め息をついた。










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