「ふたりのカタチ」
ふたりのカタチ(やま)【1~20】

ふたりのカタチ (10)

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その日は3人で駅で別れ、それぞれの家路を急いだ。

別れ際、

「あんまり遅いと佐々木さんに怒られる?」

と、おいらがちょっとからかうと、田村さんは

「怒られるよ。いつまで大野サトシを独り占めするんだ~って。」

田村さんがクスッと笑う。

「田村さんの彼女もサトシさんのファン?」

「そう。熱狂的な!」

田村さんが、大げさに目を見開いて見せる。

「わかります。俺も、一緒に仕事するってわかって、

 端からサトシさん関連の資料読み漁ったんですけど……。

 痺れました。作品にも、ご本人にも。」

類さんが真剣な表情でおいらを見る。

お世辞でもリップサービスでもなく、本心から思ってる、

それが伝わってきて、気恥ずかしいやら嬉しいやら……。

「そんな風に照れた顔もとてもチャーミングですよ。サトシさん。」

類さんは軽くウィンクし、手を上げて向こうのホームへ向かう。

最後までイケメン……。

おいらが見送っていると、隣の田村さんがおいらの脇をツンツンと突く。

「今の顏、櫻井さんが見たら、嫉妬の炎、メラメラしちゃうよ。」

「え?」

びっくりして田村さんを見ると、

田村さんは、両手を胸の前で組んで、ホワァ~とした顔で宙を見つめる。

「恋する乙女みたいな顔してた。」

「まさか!」

「ほんと……。今日はしっかり櫻井さんに愛してもらいなさい。」

「田村さん!」

赤くなった顔で、田村さんの肩を叩いたけど……。

おいら、本当にそんな顏してた?



田村さんとも別れて、一人電車に乗っていると、ショウ君からメールが入る。

『もうそろそろ帰って来る?』

ショウ君、きっと悩んだ末の一文。

早く帰って来て欲しいって、書きたいけど書けないのが可愛い。

『うん。今、電車の中。』

おいらが送信ボタンを押すと、すぐにメールの着信音。

ショウ君てば……。

クスッと笑ってメールを開くと、さっきまで会っていた類さんからのメールで……。

『先ほどはありがとうございました。サトシさんのイラスト、楽しみにしています。

 必ず成功させましょう!』

類さん、律儀な人だな……。

そう思っていると、メールの着信音。

今度こそショウ君だよね。

でも、類さんのメールはまだ続くみたい?

画面をダァーっとスクロールすると、下の方にまた文字が……。

『久しぶりに会ったサトシさんは、さらに魅力的になっていて、

 ちょっとドキドキしてしまいました。

 今度、ゆっくりご飯でも食べにいきましょう。』

ドキドキって……。

おいらもなんかドキッとしたけど……。

類さんも同じだったんだ。

久しぶりの人に会うと、そんな風になるもんなんだね。

すぐにショウ君からのメールを開く。

『駅に着いたら連絡して。』

ん?

いつもはこんなこと言わないのに……。

おいらが帰り道に迷うと思ってる?

それとも、まさか、何か作ってる?

いや、ご飯食べて来たの知ってるもんね……。

引っ越してきてまだ日が浅いから、道に迷うと思ってるんだな……。

おいらだって、このくらいの道、迷ったりしないのに。

おいらはメールを見ながらクスクス笑う。

心配性のショウ君が、やっぱり可愛い。

おいら、本当に幸せだね。



駅に着くと、すぐにメールを打つ。

『今、駅に着いた。』

送信ボタンを押そうとして、びっくりする。

目の前にショウ君が立ってたから。

「ショウ君?」

「ふふ。迎えに来た。」

ショウ君が手を差し出す。

おいらはその手を握って、一緒に歩き出す。

「迎えに来なくても、道に迷ったりしないよ。」

「でも、暗いから……。」

「こんな一本道、迷うわけないじゃん。

 ショウ君だって疲れてるのに……。」

「…………。」

もしかして……。

暗い道が怖いんじゃないかとか思ってる……?

どっちかって言うと、それはショウ君の方じゃない?

ショウ君、昔から怖がりだから!

おいらはショウ君の顔を覗き見て、クスクス笑う。

「な、なんだよ!」

ショウ君が、フンッと顔を背ける。

「ううん。迎えに来てくれてありがと。」

おいらはショウ君の腕を抱きしめる。

「夜は危ないから……。」

でも、おいら男だし、結構足も速い。

何かあっても速攻で逃げられる。

それなのに、慣れない夜道はきっと怖いショウ君。

駅の近くに来るまで、嫌だったよね。

ありがとう……。

おいらが見上げると、ショウ君が優しい顔で笑う。

「今日の打ち合わせ……順調に進んだ?」

「うん。田村さんも類さんもバリバリできる男って感じだから。」

「……類さん?」

ショウ君の顔色が変わる。

「え……うん。イベント会社の人。」

ちょっと遠い人……みたいに言ってみる。

「……元お隣の……。」

「う、うん……。」

言ってみたけど、やっぱり無理?

「類って……苗字?」

「……ううん。花沢類さん。下の名前で呼び合う方が、親しみが沸くからって。」

そうだよ。一緒に仕事するんだもん。親しみが沸いた方が……。

「……じゃ、田村さんのことも下の名前で?」

「田村さんのことは……田村さんって呼んでた……かな?」

そう言えば……田村さんのことは田村さんって呼んでた……。

田村さんは同業で、よく知ってるから、今さら変えられないのかな?

「ふぅん。サトシにだけ下の名前を強要したんだな。」

「いゃ、強要ってわけじゃ……。」

「サトシは何て呼ばれたの?」

「……サトシさんって。」

ショウ君は口をへの字に曲げ、目も若干三角気味。

「……別れてからメール来た?」

「……来たよ。今日はありがとうございましたって。」

「そこで、次の約束は?」

「……また飲みにいきましょうってあったけど、具体的にあったわけじゃないから、

リップサービスだよ……。」

「ないよな。そこですぐに約束しないとこが曲者……。」

ショウ君は中指で唇を撫でながら何か考え始めた。

険しい顔はそのままで……。

ショウ君、おいら、ショウ君にはさっきみたいな優しい顔でいて欲しいな。










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