「三日月」
Daylight(潤×颯)

Daylight ⑤ - 三日月 side story -

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「ん?」

若旦那様が紅茶の乗ったお盆を持ってやってくる。

「何の話だい?」

「颯に好きな人ができたって話。」

智様が面白そうにクスクス笑う。

「なんと!颯もそんな歳になったのか……。

 相手はどこのお嬢さんだい?」

若旦那様がそれぞれの前にカップを置いて行く。

「颯は翔さんと僕と、姉様の血筋……簡単な恋愛には向いていないらしい。」

智様が片眉を上げてクスッと笑う。

「……それは……どういう意味?」

不思議そうに首を傾げる若旦那様を見て、智様が大きな声で笑った。

「やっかいな恋愛が好きなんだよ。僕たちみたいに!」

智様が若旦那様の頬にキスする。

「智っ!人前で!」

頬を赤くし、恥ずかしそうに、けれど嬉しそうに笑う若旦那様。

俺と颯も……こんな風になれれば……。

「ねぇ!お話、まだ終わらないの?」

颯が窓から顔を出す。

「まだ、始めたばかりだよ。」

智様が笑う。

「早く、潤と遊びに行きたい!」

「そんなに急かさなくても、後2、3日はいるんでしょ?」

「いるけど……。」

頬をふくらませる颯を見て、若旦那様が不満そうな顔をする。

「だったら、ここで一緒に話をすればいい。

 颯もおいで。私だって、颯と話がしたいんだよ。」

しぶしぶ颯が靴を脱いで居間に上がって来る。

「さ、おいで。」

若旦那様が両手を広げて、自分の膝へ呼ぶ。

「もう僕、そんな子供じゃないから!」

颯は口を尖らせ、俺の隣に座る。

寂しそうな若旦那様を見て、智様が肩を撫でる。

「翔さん、颯も大きくなってるんだよ。」

「……そうなのか?もう……膝には乗ってくれないのか……。

 あんなに嬉しそうに膝に乗っていたのに……。」

「だからって、翔さんのことが大好きなことは変わらないよ。

 ね?颯。」

智様が颯に向かってニコッと笑う。

「そ、そりゃ……。でも、あんまり子供扱いすると、僕、ほんとに嫌いになっちゃうかも。」

「颯~っ!」

若旦那様の声に、智様も俺も颯も、声を上げて笑った。

若旦那様がどれだけ颯を大事に思っているか……。

俺は本当にいいのだろうか?



夜、智様は俺と颯を同じ部屋にしてくれた。

「でも……使用人と主人が同じ部屋というのは……。」

「潤は家族も同じ……。それに、何かあったらすぐに颯を助けてあげるでしょ。」

「智様……。」

二人の会話を聞いていた若旦那様が、気を利かせたつもりで口を挟む。

「他にも部屋はあるんだし、別の部屋でもかまわないんじゃないのか?

 颯と一緒じゃ、潤が休まらないだろう。」

「休む気なんかないんじゃない?」

「え?」

若旦那様が目を見開くと、その腕を取って智様が寝室の方へ連れて行く。

「ゆっくりね。」

智様が振り返って手を振る。

颯も嬉しそうに手を振り返す。

俺は颯を見つめ、部屋に入るのを躊躇する。

「寝よ。」

颯が俺の腕を引っ張る。

「智おじ様は……気づいてるんだね。」

「ああ……さっき話した。話す前に気づかれてたけど。」

「うん。」

颯は部屋のドアを閉めると、俺の腰に両手を回す。

ぎゅっと抱き着いて、俺を見上げる。

俺は正直、まだ迷っている。

これでよかったのか……わからない。

天使は羽をなくしたら飛べなくなってしまう。

颯に……そんな想いはさせたくない。

「颯……本当にいいのか?」

「何が……?」

颯の茶色い瞳が不思議そうに俺を見る。

「俺が……颯の未来の邪魔になるようなら……。」

「潤は……何を気にしているの?

 ずっと側にいて、ずっと愛し合って……それじゃダメなの?」

ずっと側にいるよ。

使用人として、影に日向に守っていく。

愛していく。

でも、もし仮に、俺の存在が颯の未来を遮るものなら、俺は……。

「僕が愛してるのは潤。潤だけ……。潤しかいないよ。」

それが本当であろうとなかろうと、俺は生涯をかけて颯を守っていく。

颯だけは何にかえても……。

「潤……。」

颯の腕が俺の首に伸びる。

俺の腕が颯の腰を抱く。

「颯……。」

愛してる。

でも口に出しては言わない。

この言葉が、颯の枷にならないように。

「潤……お誕生日おめでとう。」

颯の柔らかい唇が俺の唇を塞ぐ。

……すっかり忘れていた。

自分の誕生日……。

「二人っきりでお祝いしたかったんだ。潤の誕生日。」

「それでこんな時期に……。」

ニコッと颯が笑う。

「……ありがとう。」

今度は俺の唇で颯の唇を塞ぐ。

「んっ……んぁ…っ……じゅ…んっ……。」

颯がベッドに沈んでいく。

俺を求めて、絡みつく肢体。

「はや…て……。」

翼のない天使が、俺を求めてその美しさを開花させていく。

俺がもぎ取った羽が……必要な時がきたら、

俺はいつでも返すから……。

だから、それまで……。

「潤っ、……あぁぁっ……じゅんっ!」

颯、俺の全てで愛するから……。

だから、しばらく……地上にいてくれるかい?

「颯……っ……あぁ……綺麗だ……キレイ……。」

神様。この天使を、俺の汚い手で……抱きしめることをお許しください……。



かまうもんか。潤は汚くなんかない!

頭の中で、颯の声が響く。



俺は……どんなに自分が汚れていても、颯に不釣り合いでも、

颯から離れることなんかできはしない……。

俺の膝の上で、揺れる颯。

「ぁあっ……はや…てっ!」

「ぁああああっ、じゅん……じゅんっ!」



うっすら目を開けると、陽が上り始めたのか、窓の外が仄かに明るい。

腕の中で寝息を立てる颯。

細い体が息と共に上下に揺れる。

「ありがとう……最高の誕生日だった……。」

小さくつぶやいて、颯の額に唇を当てる。

天使は……翼がなくても、寝ていても天使で……。

おもわず囁く。

「……愛してる。」

俺はまた、颯を抱きしめて目をつぶる。

夜明けの陽が、俺と颯を包んでいく。

できることなら、いつまでも……このまま。










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