「ふたりのカタチ」
ふたりのカタチ(やま)【1~20】

ふたりのカタチ (9)

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電話は一回切れてしまって。

どうしようか考えたけど、ショウ君の心配そうな顔が浮かんで、急いでかけ直す。

案の定、コール1回ですぐに出て、掛け直して正解、と心の中でつぶやいた。

「……ショウ君?」

「サトシ?ごめんな。仕事中に。」

「ううん。今、ちょっと抜けてきた。どうしたの?」

「ん、いや、仕事のめどがついたから、サトシはどうかなと思って……。」

「おいらはもうちょっとかかりそう。」

「そうか……。どう?イベント会社の人。」

おいらはなんて言おうか悩む。

田村さんも内緒にした方がいいって言ってたし……。

「何?変なやつ?それとも……知ってる人?」

「え……。」

ドキッとする。

ショウ君、こういうとこ、鋭い!

「……そうなんだね。知ってる人だったの?誰?」

なんか、言葉が出ない代わりに、手にじわっと汗がにじんでくる。

「誰って……。」

やっと出た言葉も続かない。

こんな調子じゃ……きっとショウ君に嘘はつけない。

どうしよう~?

キョロキョロ辺りを見回しても、田村さんが来てくれる様子もないし……。

「サトシ……正直に言ってごらん。」

ショウ君の声が低くなる。

「…………。」

「サトシ?」

ショウ君の声がさらに鋭くなる。

おいらは溜め息をついて……。

観念するしかなかった。

「……ショウ君、覚えてる?マンションの隣に住んでたご夫婦。」

「……覚えてるよ。ちょっとイケメンだからって、

結婚してるくせにサトシに色目使ってた……。まさか……。」

色目なんか使ってなかったじゃん。

こんなショウ君に、本当に言っても大丈夫!?

「…………。」

「サトシ?そいつなの?」

おいらは小さな声で言う。

「……そう、その旦那さん。」

「……マジ?」

「うん。……おいらもびっくりした。」

「あいつか……。サトシ、大丈夫?誘われたりしてない?

 ちゃんと田村さんも一緒にいる?」

「ショウ君……大丈夫だから。おいら達、仕事で一緒にいるんだよ。

 田村さんもちゃんといるから……。」

「いや、いても危ない。ああいうのは絶対サトシに声かける。

 で、プライベートで連絡してきたりする!サトシ、今すぐ帰りなさい!」

ショウ君、それじゃ心配性のお父さんだよ!!

「そんなことできるわけないでしょ。大丈夫。ちゃんと帰る時連絡するから。」

「今日の打ち合わせは新橋?それともどこかに移動した?」

「ショウ君!おいらの話、ちゃんと聞いてる?」

「聞いてるよ。ちゃんと聞いてるから心配してるの。

 お酒、もう飲んじゃダメだよ。それ以上飲むと、サトシの色気が倍増する。」

……ショウ君、おいらがどれだけ飲んだか、知らないでしょーが。

「本当に大丈夫だから……お酒もそんなに飲んでないし、

 隣の旦那さんも、仕事以外でおいらに興味なんてないから。」

「サトシ、そろそろ自覚しよう。

 サトシは男も女も引き寄せるって。可愛いし、綺麗だし、優しいし、才能あふれてるし。

 そのくせ、芯が通ってて、男気もあって……。

 なのに、ふにゃっと笑う顔は誰の心だって溶かしちゃう。

 これでモテないわけないんだから!」

そんなこと思ってるの、ショウ君だけだってこと、ショウ君もそろそろ気づこうよ。

「本当に大丈夫だから、おいらそろそろ戻るね。

 ショウ君もまだ仕事でしょ?おいらの心配はいいから、ちゃんとお家に帰ってね。」

おいらは無理やり電話を切った。

このままじゃ、いつまで経ってもショウ君の心配は終わらないと思ったから。

携帯を見つめて、大きな溜め息をつく。

「大変そうだね。サトシさんも。」

振り返ると類さんが、おいらを見て、おもしろそうに笑ってる。

「類さん……。」

おいらはわざと、眉根を寄せて肩を竦める。

「んはは。あの彼氏じゃ、俺のこと知ったら、すぐ帰れって、迎えに来ちゃいそうだよね。」

はい。ご明察。

もう一歩で迎えに来そうでした……。

「でも、そろそろお開きにしましょう。あんまり遅いと奥さんが可哀想……。」

「そんな心配いりません……。これも仕事の一環ですよ。」

類さんがおいらの肩を抱いて、廊下を進もうとする。

「え?……類さん?」

「ちょっとトイレ……付き合ってもらえませんか?」

類さんが片目をつぶる。

「んふふ。そんな女子高生みたいな……。おいら達、いい歳したおじさんですよ?」

そう言って見上げると、類さんがクスクス笑う。

ああ、類さん、本当に背が高い。

ショウ君を見上げるより、ずっと上に顔がある。

「そうでしたね。いい歳したおじさんが二人で連れションもね?

 サトシさんを見てると、とてもおじさんには見えないけど。」

「それはおいらのセリフです。

 類さんだって、カッコ良くて、とてもおじさんには見えません。」

「ふふふ。そんなことないですよ。」

上の方から、優しい笑顔で見下ろす類さん……。

本当にイケメンで、おいらですら、ポーッとしてくる。

これじゃ、女の子はイチコロだね。

奥さんも……大変だ。

「そんな……可愛い顔で見つめないでください。変な気分になる。」

「変な気分?」

おいらが首を傾げると、肩を抱いていた類さんの手が、おいらの首筋に触れる。

ドキッとして、体を引くと、類さんはにっこり笑って、その手をおいらの背中に添える。

「さ、田村さんが心配します。戻りましょう。」

そっとおいらの背中を押す……。

そのソフトな感じがショウ君に似てて、おいらの安心感をさそう。

二人ならんで部屋に戻ると、赤い顔した田村さんが、一瞬、しまったって顔をして、

類さんに視線を投げる。

類さんは気づいてないのか、自分の席に座って、おいらのグラスにビールを注ぐ。

「さ、もう少し……飲みましょうか。」

にっこり笑う類さんに、またドキッとした。










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