手解きはディナーの後で……(やま)

手解きはディナーの後で…… for零治様 ⑩ 上

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先ほどの余韻もなんのその。

全くの別人のように、影山はベッドの上に体を起こす。

「零治様、もう少し……お時間、必要でございますか?」

爽やかな笑顔で笑う影山を、鮫島社長は下から見上げ、ふんっと鼻をならす。

「何を言う。俺だってまだまだ……。」

重たそうに体を起こし、影山と向い合わせになる。

クックと声を押し殺して笑う影山に、鮫島社長は不機嫌そうに口を尖らせる。

「お前だって……さっきはアンアン言ってたくせに。」

鮫島社長の小さな声に、クスリと笑うと、影山はベッドの脇に片足をつく。

「零治様の声も十分……。」

「な、なんだ!何か言ったか?」

「……いいえ、何も。」

影山はもう片方の足も下し、その無駄のない体を鮫島社長に向ける。

「さ、零治様も……。」

影山が手を差し出す。

思わずその手に手を重ね、ベッドの脇に足を下ろす。

「お前は……こんなにすぐ……大丈夫なのか?」

「はい。まだまだ全然。」

影山が爽やかに笑う。

その顔は、無理をしているのでも、強がっているのでもなく、

清々しいまでに爽やかで……。

鮫島社長は唾を飲んで、立ち上がる。

「よ、よし。次は何だ!」

影山の隣に並ぶと、先を歩いてバスルームへ向かう。

「バスルームでの……手解きでございます。」

「バスルーム……。」

鮫島社長は振り返って影山を見上げる。

「それは……性急にレッスンしすぎじゃないのか?」

「そんなことはございません。」

「彼女は……最初っから一緒に風呂に入ろうと言うタイプには見えないが……。」

「そうかもしれませんが……もし仮に、勇気を振り絞ってバスルームに誘う彼女を

 零治様がそっけなく断るなどと言うことがあれば……それは言語道断でございます。」

「言語…同断?それほどのことか?」

「はい、もちろんでございます。想像してくださいませ。

 うら若き乙女が、勇気を振り絞って零治様をバスルームへ誘う。

 にもかかわらず、零治様がこともなげに断る。

 理由が……作法がよくわからないなどと……。」

「そ、そんなことはない。たかがバスルーム!俺にかかれば……。」

「では……零治様のテクニック、影山、しかと見届けさせていただきます。」

影山の爽やかな笑顔に引きずられ、バスルームのドアを開ける。

二人で入るには十分な広さのバスタブに、影山が湯を張る。

ザァーっと勢いよく流れ出るお湯は、白い煙を上げ、バスルームの温度を上げていく。

屈みこみ、湯の温かさを確認する影山を、首を伸ばして覗き込む鮫島社長。

「湯は……入っても入らなくても、最初に溜めた方がよろしいかと存じます。

 すぐには溜まりませんので……。」

「う、うむ。」

「溜めている間の湯煙や、温度も、裸で戯れる二人には重要アイテムでございます。」

「そういうものか?」

「はい……はっきり見えてしまうより、やんわり見える方が、

 その気にさせるものでございます。」

「まぁ確かに……。」

鮫島社長はチラッと影山の股間を見ると、自分の股間に視線を移す。

はっきり見えるのもなんだよな……。

笑顔で見つめる影山の視線に気づき、影山に目をやると、

いつもイケメンの影山の顔がさらにイケメンに見える。

影山の肌がさらに輝かしく感じられ、鮫島社長はそっとその頬に指を伸ばす。

「イケメンがよりイケメンに見える……。」

「はい。ホワイトバランスでございますね。

肌が水水しく透き通るように感じられるはず……。」

影山は立ち上がり、頬に添えられた鮫島社長の手をギュッと握る。

「ここより先は特別授業でございます。」

「……特別……授業?」

小リスのように首を傾げ、上目遣いで影山を見つめる鮫島社長。

「はい。……女性がどのように感じるのか、どのようにされたら嬉しいのか……。

 零治様に身をもって感じて頂きます。」

影山は言い終わるとニコッと笑い、鮫島社長の頬に手を添え、唇を近づける。

鮫島社長も、その唇を待つように、影山を見つめ返す。

重なる唇から漏れる小さなリップ音。

唾液の音。

湯の音に交じって、バスルームに木霊する。

唇を離した影山が、両手で鮫島社長の頬を包み、優しく笑う。

「音が反響するのが、バスルームの特色でございます。

 できるだけ、音を立てるように……。」

影山の唇が、また鮫島社長の唇に押し当てられる。

すぐに舌を絡め、空気と唾液を使ってクチュッ、ヌチャッと音を響かせる。

「音がさらに刺激を与えます……いかがでございますか?」

影山はほとんど唇を離さず、鮫島社長に問いかける。

「う……うむ。そうだな……。」

唇からの刺激と音……。

さらに影山の優しい笑顔とやんわり頬を包む手の温もり……。

鮫島社長の乙女心がグッと顔を出す。

頬が染まり、影山から視線を逸らす。

それに満足した影山は、頬から手を離し、腰と背中に腕を伸ばす。

グッと力強く、鮫島社長の体を引き寄せる。

「ぁっ……。」

抱きしめられ、影山の温もりに包まれると、俄然、恥ずかしさが増してくる。

ドキドキと胸が高鳴り、何もかも任せてしまいたい衝動に駆られる。

な、なんだ、この感情は?

初めて感じる感情に、ドキドキする心臓が、さらに速度を速める。

いや……待て、待つんだ鮫島零治。

お前は痩せても枯れても男じゃないか。

影山に身を任すなどと……。

影山の指が顎を掬い上げる。

「どういたしました?零治様?」

影山の爽やかな笑顔……。

確かにこいつは頼りがいがある。

頭もいい。

何でも知っているし……何でも教えてくれる。

包容力、柔軟性、リーダーシップ、どれを取っても申し分ない。

男であれ、女であれ、すぐにその魅力の虜になるだろう。

だが!

俺だって、SamejimaHotelsの社長だ。

そんなに簡単に身を任せたくなっていいのか?

鮫島社長が自分の中で葛藤し続けていると、影山はクスッと笑い、

鮫島社長の肌に手の平を這わせる。

ビクッと跳ねる鮫島社長の体。

「零治様は敏感でいらっしゃるので……楽しみでございます。」

ニヤッと笑う影山の目が、キラリと光るのを鮫島社長は見逃さなかった。










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