「Deepな冒険」
Deepな冒険(やま) 智Ver.

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「翔君……。」

「ごめんね。泣かせちゃって……。」

智は小さく首を振って、俺の背中に腕を回した。

ぎゅっと背中のシャツを掴む感触。

智の体がグッと密着する。

俺も腕に力を込めて智を抱きしめる。

智の香りがして、俺は智の首に顔を埋める。

「何か……あった?」

智の息が耳元を掠める。

俺はどう言ったものかと考える。

正直に言うべきか……かいつまんでいうべきか。

はたまた全く何もないと押し切るか……。

いくら俺にやましい気持ちがないからって、女とキスしたなんて言ったら、

智だっていい気はしないだろう。

それどころか、また泣き出すかもしれない……。

じゃ、告白されたことだけ言おうか?

それだっていい気はしないだろう。

このまま何もなかったと押し通すか?

智を泣かせないために。

でも……そうすると、智に嘘をつくことになる。

嘘も方便……。

昔付き合ってた女が言ってたっけ。

優しい嘘をついて欲しかったって。

俺は元来、正直で真面目な男。

だから、余計に相手を泣かせてしまうこともある……。

どの対応が一番正しい?

「翔君……。」

見上げる智の潤んだ瞳は、それだけで宝石のように美しくて。

不安そうな顔は、どんなグラビア写真よりグッときて。

背中のシャツを掴む手は、何よりも可愛くて。

俺はそっと智の目元に溜まった涙を拭う。

「智が泣くようなことなんか何もないよ。」

智が不満そうに口をへの字にする。

「でも……。」

「一緒に飲んだだけだよ。小山だっていたし、やましいことは何もない。」

やましくはないけど……いや、最後のキスはやましい?

いやいやいやいや。

俺がしたわけじゃないし。

突然されちゃっただけで……不可抗力なんだから、仕方ない!

「うん……。」

背中にあった智の手が解かれ、俺のシャツの襟を撫でる。

「でも、何かあったよね?」

智は顔を上げずに言う。

はぁ……智にはお見通し?

俺の心の中なんて、キレイに磨かれたガラス窓見たいなもの?

「……告られた…………。」

意を決して言う。

やっぱり智に嘘はつけない。

「…………好きって……言われたの?」

「ん……言われた。」

俺が頭を掻くと、智が顔を上げてじっと俺を見る。

「言われたけど……はっきり断ったよ。付き合ってる人がいるって。」

「……ほんと?」

「うん。」

智の頬が微かに染まる。

「……付き合ってる人…………。」

「え……あれ?ダメ?その言い方、まずった?

 他になんて言えばいいかわかんなくて……彼氏って言うのもなんだし、

 まして彼女じゃないし……。」

「んふふ。嬉しい。」

智が恥ずかしそうに笑う。

「おいら、こういう……付き合うのとか、初めてに近くて……嬉しい。」

「智……。」

今の智の顔見たら、誰だって虜だよ?

わかってる?

何十万って人が夢中になってるアイドルなんだよ?

その智が、俺の腕の中にいる奇跡。

その智が、俺を好きだっと言ってくれる現実!

「でも……それだけじゃないよね?」

智の目が鋭く光った。

……ような気がした。

その目に見つめられて、ギクッと体が強張る。

「え……それは……。」

「翔君……正直に話して……?」

智の声が震えて、語尾がだんだん小さくなる。

「智……。」

見つめる瞳がどんどん潤んでいく。

また智を泣かせるのか?

「ご、ごめん……。」

俺は智を抱きしめて、顔を見ずに話し続ける。

「……キス……された。」

「キス……?」

体を離して、俺を見ようとする智をギュッと抱きしめ、動けないようにする。

顔を見てなんて……話せないよ。

「……キスって言っても……一瞬触れただけで、そんな大したもんじゃない……。」

「キスに……大したのとそうでないのがある?」

「……そういうわけじゃないけど……。」

「……したんだ……キス。」

「…………ごめん。」

「……柔らかかった?」

「……智の方が柔らかい。」

「正直に言ってくれていいよ……。」

「正直な気持ちだよ。」

抱きしめたまま、チラッと智の方へ顔を向ける。

顔は見えないけど、背中もうなじもいつもと変わらないように見える。

……怒ってる?それとも悲しんでる?

「……気持ちよかった?」

抑揚のない智の声。

「……智のキスに敵うわけない……。」

「いい匂いだった?」

「……智の方がいい匂い……。」

「女の子の方が……よくなっちゃった?」

「なるわけないだろ。」

俺はぎゅっと智を抱きしめる。

「だったら……正直に言ってくれればよかったのに。」

「……智を……傷つけるかと思って……。」

「大丈夫だよ。そんなことで怒ったりしないから。

 おいらだって、仕事とは言え、キスシーンあるし……ベッドシーンだって……。」

「それは仕事だろ?俺のはプライベートで……。

 俺に隙があるのが悪いんだ……ごめん。」

本当にごめん。

智を傷つけたくない、ただそれだけだったんだ。

「おいらは大丈夫だから……今度からは正直に教えてね?」

「わかった……。」

俺は想いを込めて智を抱きしめる。

智が俺の背中を撫でる。

撫でながら言う。

「……その子、可愛かった?」

正直に……。

「……可愛かった……。」

「可愛かったんだ……」

「うん……。」

「可愛いと思ったんだ!」

グッと体を離され、智が俺を見上げる。

「翔君、キスされて、その子のこと可愛いと思ったんだ!」

「さ、智……。」

しょ、正直に言えって言ったのは智なのに~!










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