「season」
君の夢を見ていた

君の夢を見ていた - season side story -

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部活が終わって、校庭を見下ろす。

サッカー部も、ちょうど終わったところ?

片づけてる何人かの部員。

あ……今日は生徒会だって言ってたっけ。

おいらも絵の具を片づけて、空を見上げる。

空はまだ明るくて、もう7時だなんて思えない。

遠くの空の、あの色は何色?

ピンクなのかオレンジなのか水色なのか。

そんな色が混ざり合って、だんだん濃い色に変わっていく。

雲はほとんどない。

ビルや山のシルエットが、どんどんはっきりしてくる。

なんだか、ぎゅっと胸が締め付けられる。

おいらは胸元のシャツをギュッと握る。

「先輩、まだ帰らないんですか?」

後輩の女の子が声を掛けてくる。

「うん。もう帰るよ。」

「じゃ、一緒に……。」

恥ずかしそうにおいらを見上げる。

「ごめん。ちょっと寄るとこあるから……。」

おいらは首に手をやりながら、小さな声で言って、チラッと後輩を見る。

「……そうですか、じゃ、また明日!」

後輩は元気な声でそう言って、足早に美術室を出て行く。

小さなポニーテールが揺れて、鞄についてるストラップがカチャカチャと鳴った。

もし、おいらが女の子だったら、ショウ君はおいらを見てくれたかな……。

おいらは小さな溜め息をついて、鞄を手にする。

生徒会室は2階の一番奥。

美術室とは反対側。

おいらは階段をゆっくり下り、2階の廊下を真っすぐ進む。

ショウ君、もう帰っちゃったかな?

生徒会室の近くまで来ると、人の気配にホッとする。

まだいる……。

ドアの前に立って、どうしようか悩んでいると、中から声が聞こえてくる。

笑い合う数人の男女の声。

「帰りに本屋に寄らない?この間言ってた本、見つからなくて。」

「そんなの、自分で探せよ。」

あ……ショウ君の声。

「一人より、二人の方が見つかるでしょ?」

「しょうがないな……。」

ショウ君……その子と帰るんだ……。

おいらの胸がまたギュッと締め付けられる。

シャツをギュッと掴んで、戻ろうとした時、ドアが開いた。

「じゃ、行くよ!」

にこやかな女の子の笑顔が、視界いっぱいに広がる。

「あ、大野君?」

女の子が不思議そうに首を傾げる。

ショウ君が、おいらに気づいてやってくる。

「あ、サトシ?今帰り?」

「う……うん。」

おいらは頑張って笑って、またギュッとシャツを握り締める。

ショウ君は鞄を掴んで、おいらの方へやってくる。

「じゃ、帰ろ。」

ショウ君がおいらの肩に腕を回し、おいらを押すように歩き出す。

「え?ショウ君?」

見上げたおいらに向かって、ショウ君の優しい笑顔が降り注ぐ。

「え~、ちょっと!本屋は?」

「一人で行けよ。」

「探してくれるって言ったじゃん。」

「言ってねーし。」

ショウ君は答えながらもズンズン歩いて行く。

「え……ショウ君、いいの?」

「いいの、いいの。」

ショウ君は楽しそうにおいらを見つめる。

肩に回った腕が、抱きかかえられてるみたいでドキッとする。

ショウ君も気づいて、そっと腕を離していく。

腕が離れちゃう寂しさに、グッと唇を噛みしめる。

「どうした?何かあった?」

「え?どうして?」

「なんか……。」

ショウ君はそれ以上言わずに、おいらより先に階段を2、3段下りる。

「……夕日がね。」

おいらは小さな声でポツリと言う。

「うん。」

ショウ君が振り返っておいらを見上げる。

「……綺麗だったんだ。」

「……そっか。」

ショウ君はおいらが下りるのを待って、並んで歩く。

昇降口から出ると、空はさっきよりずっと暗くなっていて、

遠くの暗い空に星が輝き始める。

「お~い!櫻井!片づけ手伝ってけよ!」

サッカー部の仲間から声を掛けられ、ショウ君が笑いながら返事する。

「俺、練習してないのに!?」

「サッカー部だろ!」

「今日は用事がありますんで!」

「うそつけ!」

ショウ君はおいらに向かって片目をつぶる。

おいらもクスクス笑いながら、ショウ君の隣で校庭を見渡す。

暗くなり始めた校庭はどこかもの寂しくて、思わずショウ君を見上げる。

ショウ君がおいらの背中に手を添える。

「今日のサトシの眉は八の字が多い。」

「それはいつも!」

わざと明るく言うと、背中に添えた手が腰に回って、ギュッと引き寄せられる。

「本当に何もない?なんかあったらちゃんと言うんだよ。一人で抱え込まないで。」

「うん。大丈夫。今日はちょっとテンション低めみたい。」

おいらがショウ君を見つめると、ショウ君が、んってうなずいて、軽く腰を叩いて手を離した。

なんにもないよ。

なんにもないけど……。

ショウ君の隣にいると苦しい。

でもショウ君の隣にいたい。

もし、おいらが女の子だったら?

もし、おいらがショウ君を好きにならなかったら?

考えてもどうにもならないことを考えちゃう。

黙り込むおいらに、ショウ君がポツリと言う。

「……織姫と彦星、この調子なら会えるかな。」

「え?」

「今日は七夕。」

ショウ君がにっこり笑う。

忘れてた。

今日は七夕だった。

一年で一度、織姫と彦星が会える日……。

一年に一度だけでも羨ましいよ。

恋人同士で、夫婦で、会える二人なんだから……。

「たこ焼き、食ってく?」

ショウ君が、ちょっと首を傾げておいらを見つめる。

「たこ焼き?」

「二人が会えるお祝い。」

「……変なの。」

「俺、すっげぇ腹減ってんの!」

わざと大げさにお腹を押さえるショウ君。

「うふふ。いいよ。たこ焼き食べて帰ろ。」

「やった!今日はいくつ食べよっかな~。」

「食べ過ぎたら夕飯食べられなくなるよ。」

「平気平気。いくらでも食べられる、育ち盛りですから!」

「あはは。ショウ君は!」

二人並んでたこ焼き屋へ向かう。

恋人同士になれなくても、抱き合えなくても、

おいらは毎日ショウ君に会える。

会って、笑い合って、たこ焼きも食べられる。

恋人同士になれなくても……。

胸がぎゅっと痛くなる。

それでも、ずっと一緒にいたいから……。










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