復活LOVE(やま)

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先生と会えなくなって、話ができなくなって……悶々とした日が続く。

廊下で見かけると、嬉しくて、でも切ない気持ちも高ぶって、ギュッと拳を握りしめる。

でないと、先生の腕を掴んで走り出してしまいそうで。

俺のせいで、きっと先生も辛い思いをしてる。

男同士、しかも相手は生徒……。

そう、先生たちの間で、後ろ指刺されてるかもしれない。

そういうのは子供より、大人の方がやっかいそうに見えた。

子供は飽きっぽい。

でも、大人はねちっこい。

偏見?

でも、案外間違ってないような気がする。

先生の為にも、自分の気持ちを押し殺さなきゃいけないと思ってた。

あの告白の返事も聞けぬまま……。

そんな頃、先生と稲垣先生が一緒にいるところを、頻繁に見るようになった。

生徒たちの間でも、俺を捨てて、稲垣先生に走ったんだと噂されるようになった。

イケメンでインテリの数学教師。

授業は……まぁ、わかりやすいよ。

普段も、理論然としてるわりに砕けたとこもあって。

男の俺から見ても、カッコいい……んだと思う。

悔しいけど。

悶々としながら、身に入らない受験勉強を続け、教室で翼たちとバカ笑いして、

窓からふと外を見ると、先生と稲垣先生が並んで話をしていた。

二人は笑っていて、一瞬、稲垣先生と目が合ったような気がした。

気のせい?

稲垣先生は先生の髪を撫で、何か囁いた。

先生は、ん?と首を傾げ、ニコッと笑って何か言う。

また、稲垣先生と目が合う。

その目が、先生のことは俺に任せておけ、お前にはできないだろ?

そう言ってるみたいで、俺はそれ以上見ていられなくなって……。

思いっきりカーテンを閉めた。

シャッという音にびっくりして、翼が俺を見る。

「カーテン閉めたら、風、こないじゃん。」

「うっせ。太陽が眩しいんだよ。」

「はっ?なんだ、カミュ?」

「そんなに歪んでねーよ。」

俺は鞄に教科書を突っ込んで蓋をする。

「俺、具合悪いから早退!」

「なんだよ、じゃ、俺も!」

翼が着いて来ようとするのを目で遮る。

「ばか。来んな。一人で帰れる。」

俺は足早に教室を出る。

昇降口で靴を変えて外に出ると、青い空が眩しくて、つい目を細める。

すると、さっきの笑ってる先生の顔がチラついて、頭を振っても、その顔は消えなくて……。

俺は夢中で駅まで走った。

走っても、走っても、先生の顔は消えてくれはしなかった。



「あのまま卒業して、ずっと忘れられなかった。」

俺は手の中の、先生の温もりを噛みしめる。

「先生は……稲垣先生と付き合って、幸せなんだって思ってた。」

先生は下を向いたまま、俺を見ようとしてくれない。

「大学……3年だったかな?稲垣先生に会ったのは。」

先生がびっくりしたように顔を上げる。

「偶然……道で会って、びっくりした。」

俺が言うと、先生はゆっくり首を振る。

「ち……違う……違うから……。」

「何が……違うの?」

俺は、握り締めた先生の手の甲を、親指で撫でる。

骨の細い、指に繋がる辺りを優しく。

「稲垣先生言ってた。仕方なかったんだって。

 俺もそう思う。教師と生徒……まして、男同士。」

俺は、もう片手も先生の手に添え、両手で先生の手を包み込む。

「俺を受け入れることなんてできないよね?今の俺なら理解できる。

 あの頃の俺は……頭では理解できても、気持ちがついていけなかった……。」

俺は、先生の手を、俺の顔の前まで持っていく。

テーブル越しに、先生が少し引き寄せられる。

「俺との噂が消えるように……稲垣先生と付き合ってる振りをしたんでしょ?」

先生はまた顔を逸らす。

「稲垣先生が提案したって言ってた……。」

先生は辛そうに眉間に皺を寄せる。

「俺を……諦めさせる意図もあった?」

先生の手を包み込んだままの自分の手に、唇を当てる。

先生は気づいているのかいないのか、微動だにしない。

「稲垣先生は……そのまま本当に付き合ってしまおうと思ってたけど……。

 フラれちゃったって言ってた。」

先生の眉間の皺がさらに濃くなる。

「どうして稲垣先生、フッちゃったの?」

俺は自分の両手を開いて、先生の手に唇を当てる。

先生の体がビクッと揺れて、恐る恐る俺を見る。

「俺のこと……少しは気にしてくれてた?」

「翔君……。」

先生のか細い声。

「今なら……先生と生徒じゃない。」

「……今でも、先生と生徒だよ。」

「もう俺、社会人だよ?」

「それでも……翔君は可愛い教え子で……。」

「……忘れられない生徒……なんでしょ?」

先生は切なそうに俺を見る。

「そうだよ……忘れられない……生…徒……。」

先生の目が潤んでいく。

「おいら達は……先生と生徒のまま、昔の話をして、笑い合って……。

 そういうのが一番いいんだよ。」

「本当に……そう思ってる?」

俺は先生の手をギュッと握り締める。

先生の手がわずかに動いて、俺の手から逃れようとする。

俺が握って離さないと、観念したように、先生の手から力が抜ける。

「……思ってる。」

「本当に?」

「……本当に。」

「先生……。」

俺は小さく溜め息をついて言う。

「俺は……あのキス……してよかったと思ってる。」

先生の目が見開かれる。

「あのキスも……告白も……あの頃の俺の本当の気持ちで……。

 今、先生に会っても、その気持ちが変わってないって、そう思えるから……。」

「翔君……。」

先生の目から、涙が一滴(ひとしずく)、零れた。










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