復活LOVE(やま)

復活LOVE ⑪

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「翔君……大丈夫?」

「……先生………。」

びっくりして先生を見ていると、先生の顔がカァーッと赤くなっていく。

「先生?」

俺が首を傾げると、先生は顔を逸らすように舞子ちゃんに視線を移す。

「大丈夫。全然大したことないんですよ~。ちょっと体育でおおっぴらに転んだ程度。」

舞子ちゃんが明るく笑う。

おおっぴらって!

どんな転び方したらこんな怪我すんだよ!

俺が隣の翼を見ると、翼も唇の端を上げて肩を竦める。

「ほらほら、ちゃっちゃとシャツ着て授業に戻りなさい。」

舞子ちゃんが俺のシャツを見て言う。

俺は急いでシャツのボタンを留めながら先生を見る。

先生はまだ顔を逸らしたまま。

「翔君……何か……。」

言い掛けてチラッと翼を見る。

翼は俺と先生を交互に見て、立ち上がる。

「俺、先戻ってるわ。」

「お、おぅ。」

また俺をチラッと見る。

意味深に笑って保健室を後にすると、今度は舞子ちゃんが時計を見て慌てる。

「あ~、いけない!校長先生に呼ばれてるんだった!」

そう言うと、俺に向き直り、

「さっさと着て戻りなさいよ。」

次に先生を見て、

「すみません。私、行かなきゃいけないので、この子、授業に戻しておいてください。」

「俺、一人で行けるから!」

「信用度の問題!」

舞子ちゃんは言い捨てるように保健室を後にした。

いきなり二人きりにされて、緊張する俺……。

「翔君……何か、おいら、しちゃったのかな?」

「え?」

びっくりして先生を見る。

先生は言い辛そうに下を向いたまま話し続ける。

「本当に勉強で忙しいんなら……いいんだけど……。

 美術館から全然来てくれなくなっちゃって……仲のいい翼君と喧嘩なんて……。」

しどろもどろの先生の言葉を一つずつ噛み砕くように考える。

先生は、今回のケンカの一端は自分にあると思ってるのかな。

「だ、大丈夫だから。本当に勉強で忙しいだけで、今回のケンカだって、

 勉強でイライラしてて、それで八つ当たりって言うか……。」

イライラの原因、本当は違うけど、本当のことなんて言えるわけないんだから、

俺の言ってることはほぼ間違ってない。

「……そんなに根を詰めて勉強してるの?」

先生はまだ半信半疑って顔つきで、俺にそっと近づいてくる。

「そうだよ。こう見えて受験生!」

俺は力いっぱいうなずく。

先生はちょっとホッとしたように、強張っていた顔を崩していく。

「そうかぁ。そんなに無理して勉強したら、受験まで持たなくなっちゃうよ?」

先生が目の前で、俺の高さまで腰を落とす。

先生の顔が、俺の顔のすぐ前まで来て、ドキッとする。

「翔君……ほら、イケメンなのに、目の下にクマもできてる……。」

先生の、男にしては細い指先が、俺の唇の端の傷にそっと触れる。

触れられて、痛いよりもドキドキが加速して、俺の全神経が唇の端に集中する。

「こんな傷つけて……。」

先生はすぐに指を離して、自分の指についた軟膏を親指の腹で擦って伸ばす。

その指を見て確認すると、ニコッと笑う。

「でも、よかった。」

「……よかった?」

「おいら、翔君に何か悪いことしちゃったのかと思って、心配だったんだよ。」

「……そんなこと……あるわけないじゃん。」

俺は先生の顔が近すぎて、鳴りやまない心臓が暴走しそうで顔を逸らす。

「うん……ならいいんだ。」

先生は満足そうに立ち上がると、俺の肩に手を触れる。

「ほら、授業に戻らないと。」

「う、うん……。」

今度は肩に神経が集まりだす。

俺は肩に置かれた先生の手をチラッと見て、振り払うように立ち上がる。

先生はちょっと首を傾げ、でも、俺が不機嫌そうじゃないのを確認して、

保健室のドアを開ける。

「シャツ、ズボンにしまって。授業に戻ろう?」

俺はゆっくりうなずいて、ズボンの中にシャツをしまった。



その日の放課後、俺は久しぶりに美術準備室に向かった。

心配してくれたのに、お礼も言ってなかったから。

先生に触れられた唇の端も肩も、まだジンジンと熱を持っていて、

嫌でも自分の気持ちを思い知る。

「……先生。」

入口で声を掛けると、先生は嬉しそうに微笑んで俺を見る。

放課後の、西に傾き始めた太陽が、部屋を明るく照らす。

その中で、陽の光よりもさらに輝く先生の笑顔。

「翔君……。」

先生が描いてる絵はほぼ完成していて、男か女かもわからない絵の中のその人は、

ぷっくりした唇と、丸い頬で、ちょっと驚いたように俺を見てる。

「もう完成?」

俺はゆっくりキャンバスに近づいて行く。

「うん……ほぼね。でも、どこで終わりにしようか……考え中。」

先生はゆっくり筆を置いて、俺を見る

俺の胸は張り裂けそうなほど、ドキドキと高鳴って、

顔がどんどん熱くなっていく。

俺の様子がおかしいと思ったのか、先生は珍しく窓辺にある椅子へと誘う。

「美味しいクッキーもらったんだ。一緒に食べよう?」

俺を椅子に座らせて、缶に入ったクッキーを俺の膝の上に乗せる。

「待ってて。お茶入れてくる。」

先生はポットのお湯を使って、紅茶を入れる。

ティーパックの紅茶の香りが、絵の具の匂いと混ざって、鼻につく。

「翔君、ミルクいる?」

「……一滴。」

俺はちょっと大人ぶって答える。

「一滴?」

先生は不思議そうに首を傾げて、それでも一滴だけカップにミルクを垂らす。

先生が二人分のカップを持ってやってくる。

一つを俺の手に、もう一つを自分の脇の棚の上に置くと、缶の蓋を開ける。

「んふふ。午後のティータイム。」

ミルクをたっぷり入れた紅茶を、美味しそうに口に含む先生。

俺もゆっくり紅茶を口に含む。

スッとするような香りと、微かにするミルクの味。

いつの間にか、俺の心臓は落ち着いて、

穏やかな午後の光の中の先生を、温かな気持ちで見つめていた。

「先生……心配してくれてありがとう。」

先生はふにゃりと笑って俺を見る。

俺は紅茶をゆっくり啜る先生を見て思う。

ああ、俺、やっぱり先生が好きだ。










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