復活LOVE(やま)

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それからしばらく定期考査があって、美術室に寄れない日が続いた。

こう見えても受験生。

勉強を怠っていたわけじゃない。

受験するかどうかは別にして……。

進路も……なんとなく形になり始めた頃、美術室に顔を出すと、

先生の絵はだいぶ色が入って形になり始めていた。

「あ、翔君、久しぶり。どうだった?テスト。」

先生がいつもの柔らかい顔で笑う。

「うん。まぁぼちぼち?」

俺は入口の近くで躊躇する。

先生のふにゃりと笑った顔。

久しぶりの美術準備室は、眩しくて、すぐには目が慣れない……。

窓から差す光と先生の笑顔……。

俺は目を細めて先生を見る。

「んふふ。翔君、成績いいんだって?他の先生が話してるの聞いた。」

先生は筆を走らせながら、口笛でも吹きそうなほど上機嫌。

「科目によるよ。」

「そうかな……翔君、頭良さそうに見えるよ。成績優秀でスポーツ万能。

 女の子にもモテるって。」

「そんなこと、誰が言ってたの?」

「先生方、みんな。」

先生がクスクス笑う。

「そんなの先生たちにわかるわけないじゃん。ここ男子校なんだから。」

「あ~、先生方の情報網、舐めてるな?先生たちって情報の共有、すごいんだから!」

先生は笑いながら振り返る。

振り返った笑顔が眩しくて……俺は、また目を細める。

「全然そんなことないから。第一、俺、女の子と付き合ったことないし!」

「え?付き合ったことないの?」

先生がびっくりしたように目を丸くする。

「う……うん。」

俺はカッコ悪いこと言ったな……と若干後悔する。

「そっかぁ……じゃ、誘うの止めとこうかな?」

「なになに?何の話?」

俺が先生の近くに行くと、先生はポケットから二つ折りにした紙を取り出す。

紙は何かのチケットらしく、鮮やかな色彩で縁取られた……鶏?虎?

「若冲って知ってる?おいら大好きな画家なんだけど……日本画のね?」

俺は先生からチケットを受け取ってよく見てみる。

真ん中に大きく『若冲展』と書いてある。

「好きだって言ったら、稲垣先生がくれたから、誰か誘ってって思ってたんだけど……。」

俺はチケットから顔を上げて先生を見る。

「これ、来週までじゃん。」

「そうなんだよ。だから行ける人がいるかどうか……。」

「お、俺、行く!行ってみたい!」

俺は身を乗り出して先生に詰め寄る。

「え?あ、ほんと?翔君、興味あった?」

興味?そんなのあるわけないじゃない。

日本画なんて、生まれて初めて見るんだから。

でも、先生が好きな画家の作品、俺も見て、感じたい。

その画家について、話したり、感想を言い合ったり……。

そして、先生をもっと知りたい。

「うん。日本画を見に行くのは初めてだけど、先生が描いてるの見てるうちに、

 絵にも興味が出てきた!」

「うふふ。そう言ってくれると嬉しい。美術館デートなんて素敵でしょ?

 だから、翔君がデートする時の参考にって誘おうと思ってたんだ。」

「び、美術館……デート?」

俺はゴクッと唾を飲む。

そうか、これもデート?

いやいや、男同士でデートも何も……。

「彼女ができたらの参考にね?」

先生は笑ってたけど、俺は微妙な心境だった。

先生とデートかもって、ちょっとドキッとしてたのに……。

「そ、そうだね。初デートの参考に……って好きな子なんていないけど。」

「いないの?そうか……受験生だもんね。恋より勉強だね?」

先生は、あっと小さく言って俺の顔を覗き込む。

「勉強の邪魔になっちゃう?」

「だ、大丈夫。俺、ちゃんと勉強してるから。たまには息抜きも必要だよ。」

「ほんと?」

「ほんと、ほんと!」

「……これのせいで成績下がったりしない?」

「絶対下げないから!」

先生は笑って俺の手の中からチケットを1枚取ると、ポケットにしまう。

俺はそれを見て、ホッとすると、自分のチケットも先生と同じようにポケットにしまった。



約束の日、上野で待ち合わせた俺達は美術館に向かう。

先生は、学校で見るより幾分ラフな、白いVネックのニットにジーパン。

俺は悩みに悩んだ挙句、お気に入りのブラックジーンズとグレーと黒の小洒落たシャツ。

学ランよりは大人っぽく見える?

「私服の翔君、新鮮!」

先生が楽しそうに目を輝かせる。

「そ、そっかな。」

俺は恥ずかしくて、そっぽを向いて答える。

先生の私服だって、十分新鮮……ってか、さらに大人を感じて意識する。

「うん。似合ってる。」

先生が俺の顔を覗き込む。

俺はさらにそっぽを向いて……。

そんな俺を見て、先生がクスクス笑う。

「な、なんで笑うんだよ。」

俺が顔を向けずにそう言うと、先生が柔らかいトーンで答えてくれる。

「だって……翔君、学校より大人っぽい。」

「えっ?」

俺が振り返ると、先生があの眩しい笑顔で笑ってて、

ドギマギする気持ちを隠すことも忘れてしまう。

「あ、でも、その顔は学校の翔君と一緒!」

先生が嬉しそうに笑って、俺はちょっと面白くなくて、そんな顔で並んで歩く俺達は、

はたから見たらどう見えるんだろう。

歳の差は……8歳差。

でも先生は若く見えるから、5歳差くらいに見えるかな?

俺がもうちょっと大人に見えれば3歳差くらいには詰められる。

そうしたら……。

「あ~、結構並んでるね。」

美術館の前には長蛇の列。

まだ開室前だけど、もうずいぶん人が並んでる。

「1時間待ちだって。」

先生が先の看板を見ながら、俺に言う。

「1時間くらい大したことないよ。」

「翔君の貴重な勉強時間が!」

先生が、ちょっとふざけたように言う。

「じゃ、その貴重な時間、先生が楽しませてよ?」

俺が、片目をつぶってふざけたように答えると、先生も、う~んと片目をつぶって、

ポツリポツリと若冲について話し始めた。

正直、若冲の話はどうでもよかったけど、先生が目を輝かせて話す姿は……、

十分俺を楽しませてくれた。










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