復活LOVE(やま)

復活LOVE ④

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大野先生と次にちゃんと会話できたのは、

桜の頃の出会いから1か月位経ってのことだった。

いつも先生の周りには人がいて、遠くから見かけても近づくことなんかできない。

授業も取ってない俺には、先生と話す機会なんて全くなかった。

その機会が偶然やってきたのは、体育の授業中だった。

その日の体育はサッカー。

俺は港区のシジマールと言われる男。

俄然、張り切ってゴールを守っていた。

0-0の同点。

俺が守り切るしかない。

でも、敵チームにはサッカー部が3人。

その内の1人、クラス一ガタイのでかい香取が猛スピードでドリブルしてくる。

打たせるもんか。

俺は身構えてボールの行方と逆サイドに注目する。

前に出るか?

いや、ここはディフェンダーを信じてゴールを守る!

そう思った瞬間、香取が大きくボールを蹴り上げた。

俺は横っ跳びで取りに行く。

タイミングもばっちりで、取る気満々だったのに、

いかんせん、俺の身長は俺の想像よりも短くて……。

指先で弾くのが精いっぱいだった。

なんとかゴールは死守したものの、膝からも肘からも血が流れ、

足首もズキズキ痛む。

選手交代を余儀なくされ、先生には保健室へ行けと命じられる。

「は~い、はいはい!俺が櫻井、保健室へ連れてきます!」

クラス中が俺と保健室へ行きたがった。

保健室のアイドル、舞子ちゃんがいるからだ。

「そうか?今日は村沖先生出張だから、ちょうどいい。

 連れて行って手当してあげてくれ。」

先生がそう言うと、みんな一斉に上がっていた手を下ろす。

ほんと、現金なやつらだよ。

「誰か、一緒に行ってやれ!」

先生が頼んでも、誰も顔を合わせない。

それはちょっと薄情すぎやしませんか?

俺が文句を言おうと思った時、ちょうど校庭の端を大野先生が通りかかった。

授業がないのか、周りを見回しながら、楽しそうに歩いている。

「あ、大野先生!」

先生が声を掛ける。

こっちを見た大野先生が、なんだろうと首を傾げる。

「もしお時間ありましたら、こいつ、ちょっと保健室へ連れて行ってもらえませんか?

 私、こいつら見てなきゃならないんで。」

「ああ、いいですよ。」

「ちょちょっと手当もしてもらえると助かります。」

「わかりました。」

先生同士でそんなやり取りをして、俺は大野先生と保健室に行くことになった。

大野先生好きの何人かの生徒が、手伝うと名乗りを上げたが、

先生に一括されて、全員却下。

当たり前だ!

俺は大野先生と二人で歩き出した。

歩き出すと、足首がズキズキ痛み出す。

びっこを引く俺を見て、大野先生が俺の脇の下に肩を入れる。

「大丈夫?」

あんまり顔が近くて、まともに先生の顔が見れない。

しかも、なぜかいい匂いまでしてくる。

「は、はい。」

俺はそっぽを向いて応える。

「痛いなら……おぶろうか?」

そんな恥ずかしいことできるか!

「い、いえ、大丈夫です。」

俺がそう言うと、遠慮してると思ったのか、先生がさらに続ける。

「おいら、こう見えて、結構力あるんだよ?」

「そういう問題じゃ……。」

「前に失礼なこと言っちゃったし、その埋め合わせ……。」

先生が俺をおぶろうとするのを、体を捻って断る。

「本当に大丈夫ですから……この歳でおんぶなんて……恥ずかしくて……。」

俺が小さな声で言うと、先生も、あって顔をして俺の顔を見る。

「……ごめんね。そうだね。恥ずかしいよね。」

先生が両眉を下げて申し訳なさそうにする。

「あ……そんな顔しないで……。」

俺も一緒に眉を下げる。

「じゃ、このまま保健室行こ。」

先生がニコリと笑うと、俺はうなずいて、先生の肩を借りながら保健室へ向かった。

先生の匂いと、先生の顔を間近に感じて、俺の脇に差し込まれた先生の手がくすぐったくて、

俺の心臓はフルスピードで動き続ける。

この近さだと先生に聞こえるんじゃないか?

そう思えるほど、俺のポンプはドクドク音を立てる。

俺の心配をよそに、先生は全く気付く様子もなく、

俺を保健室へ無事に連れていくことだけ考えているようで、足元から目を離さない。

少し下を向いた先生の頬を、風に揺れる髪が撫でる。

柔らかそうな頬に、吸い寄せられるように顔が近づいて行く。

歩く度にゆっくりと、その距離は縮まって……。

後、ちょっと……と思った時、先生の足が止まる。

「翔君、開けてくれる?」

慌てて先生の顔から離れ、空いてる手で保健室のドアを開ける。

保健室に入ると、先生は俺を椅子に座らせ、消毒液を取り出した。

「あ~あ、こんなにやっちゃって。」

先生が俺の前にしゃがみ込む。

まずは膝から手当してくれるらしい。

「痛かったら言ってね?」

先生が俺を見上げる。

まるで自分のことみたいに痛そうな顔で。

「あはは。先生、俺が痛がってないのに!」

「痛いよ?痛くなるよ?」

先生はおっかなびっくり俺の膝に消毒液を掛ける。

ジュワッと泡が立って、ビリビリ染みる。

ウ~、確かに痛いけど、痛い顔なんかできるか。

「痛い?」

先生が心配そうな、でも楽しそうな顔で、俺を見つめる。

「い、これくらい、痛くなんかないよ。」

「ほんと?」

「ほんと、ほんと!」

「……じゃ……。」

先生はまた違う場所に、勢いよく消毒液を掛ける。

「うっ……。」

思わず声が出る。

さっきより染みる~っ!

なんでだ?

「染みるでしょ?」

「し、染みるうちに入らないよ。これくらい!」

先生は俺の顔を見て、楽しそうに笑うと、その後も消毒液を掛け続けた。










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