復活LOVE(やま)

復活LOVE ②

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その頃の俺は進路について悩んでいた。

俺は何をしたいのか。

進学することに意味があるのか。

自分の未来はどこに向かっているのか……。

親も先生も進学するものだとばかり思っている。

それもなんだか嫌だった。

そんな気持ちを抱えて、でも負けん気の強い俺はそれをおくびにも出さず、

クラスの友達とふざけていた。

ふざけてバカ笑いする友達の顔を見て、

こいつらはそんなこと悩んだりしないんだろうなと、

ちょっと馬鹿にした気になっていたのも事実。

校庭のバスケットゴールで遊んでいると、

ゴールに当たったボールがコロコロと転がっていく

「さくしょう!お前が外したんだからな!」

友達の一人が俺に取りに行けと笑う。

「お前のパスが悪い!」

「港区のジョーダンなんだろ?」

一人が意地悪っぽく笑う。

「ジョーダンなら入れるわな?」

もう一人も合わせて眉を上げる。

「うっせぇ。俺は港区のシジマールだ!」

そう言いながら、転がったボールを軽く走って拾いに行く。

ボールは校庭の端まで転がって、男性の足に当たって止まる。

ボールばっかり見ていた俺が、その足を上って顔を見ると、

その顔は、優しくにっこり笑って、ボールを取り上げる。

誰だろう?

見たことないけど……。

学校にいるんだから、学校関係者?

俺は5m位離れたところから手を広げて、投げて欲しいとポーズを取る。

「これ、君の?」

その人は小首を傾げ、俺を見る。

「はい。お願いします。」

また胸の前で手を広げて見せる。

「ここは高校だよ。中学は隣。」

優しく微笑んだままそう言って、ボールを投げてよこす。

その頃の俺は本当に小さくて、確かに高校生には見えなかったかもしれないけど、

ここにいるんだから、高校生だってわかるだろうと、ムカツキ感、あらわにして睨む。

「俺、高校3年生なんですけど。」

ボールをキャッチしながら言うと、

その人は、しまった!と手で口を覆い、すまなそうに眉を下げた。

「ごめんね~。あんまり可愛いから中学生かと思った。」

俺はさらにムッとして

「あんただって、男のくせに女みたいな顔してんじゃん!」

と言い返した。

よくよく考えてみたら、男だってわかってて女みたいな顔なんだから、

ただ単純に綺麗な顔って言ってるようなもんなんだけど、

初めて会った人に馬鹿にされたような気がしてたから、

何か言ってやらないと気が済まなかった。

ガキで強がりな俺。

「ああ、これはしょうがないよ。母ちゃんに似ちゃったから。」

その人は俺みたいにムカツクことなく、ふわっと笑って俺を見る。

「おいら、失礼なこと言っちゃったね。ごめんなさい。」

ちゃんと頭を下げてそう言うと、

「でも、もう大丈夫。覚えたから。」

今度はふにゃりと笑う。

俺の心臓がドクンと大きく響いて、手からボールが落ちる。

慌ててボールを拾うと、その人は、笑いながら言う。

「名前、何て言うの?」

「……あんたが先に言うもんだろ!」

「んふふ。そうだった。おいら、大野智。ここで美術を教えるよ。」

「せ、先生?」

「うん。」

んふふ、とまた笑う。

「見えね~!」

「よく言われる。」

笑いながら、ちょっと首を傾げる先生に、またドクンと心臓が鳴る。

「君は?」

「俺は……櫻井…翔。」

「翔君?これからよろしくね。」

先生が笑うと、俺のずっと後ろから友達の声が聞こえてくる。

「さくしょう!おせぇぞ!」

「今行く!」

斜め後ろに向かってそう言うと、すぐに先生に視線を戻す。

「早く行ってあげなよ。友達が待ってるよ。」

先生はふにゃりと笑ってスタスタと歩き出す。

でも俺は、先生から目が離せない。

先生の後ろ姿が、桜の下を通り過ぎるまで、俺はそこから動けなかった。



大野先生のことが、学校で話題になったのは少ししてのことだった。

他の学校から異動してきた大野先生は、教師になって3年目。

3年で進学クラスの俺は美術なんか取ってないから、情報がなかなか届かなかったみたいだ。

昼休み、教室の窓際で、つるんでる面々としゃべっていると、

一人が思い出したように言う。

「見た?大野先生!」

先生はすでに珍獣扱いだった。

ごついかインテリな先生の中で、あの顔は目立つ。

「見た見た!」

「大野先生、可愛いよな。」

「可愛いか?男だぞ?」

「笑った顔がさ、なんとも言えず……。」

友達の一人が自分の体を抱きしめて言う。

「抱きしめたくなる!」

「変態か!」

「うっせぇ!」

「俺はやっぱ、舞子ちゃんのがいいなぁ。」

「うん、俺も。顔は大野先生のが可愛いけど、舞子ちゃんのあの胸は捨て難い!」

俺の高校は男子校。

学校に女は、事務のおばちゃんと保健の先生しか存在しない。

保健の先生は顔はそこそこだったが胸がばかでかい。

しかも若い。

女に飢えた男どもにとって、アイドル的存在だったことは言うまでもない。

「いいや、俺は断然サトコちゃん!顔と雰囲気!あの顔ならヤレる!」

「はぁ~?」

「俺も!あの顔で見上げられたら……ガシッと!」

隣のやつの肩に両手を添え、見つめ合う。

「押し倒すね。」

「ダメ~!キャーやめて~!」

押し倒されたやつが笑いながら、大声で騒ぎだす。

「さくしょう、お前は?お前はどっちがいい?」

「俺は……。」

すぐ浮かんだのは大野先生だったけど、素直じゃない俺は心にもないことを言う。

「俺はやっぱり舞子ちゃんかな。いくら可愛くても、本物の女の方がいいよ。」

「だよな~。」

隣のやつに肩を叩かれ、当然というようにうなずいて見せる。

窓の外に目をやると、渡り廊下を大野先生が歩いていた。

髪をかき上げた手が、やけに白く光って見えた。










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