復活LOVE(やま)

復活LOVE ①

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ピンポーン。

玄関のインターフォンが鳴る。

こんな時間に誰だろう?

時計を見ると、午後8時3分。

俺は食べかけの弁当を無理やり飲み込んで、玄関へ急ぐ。

覗き穴から見てみると、誰か立っている。

このマンションはオートロック。

営業なら、エントランスのインターフォンが鳴るはず……。

宅配かな?

でもツナギじゃなかったような……。

俺はガチャガチャとドアを開ける。

ドアの外にはふにゃりと笑った優しい顔。

「こんばんは。遅い時間にすみません。今日、隣に越してきた……。」

相手が会釈して、俺も慌てて会釈する。

顔を上げて目が合う。

あっと小さく声が出る。

見覚えのある顔。

「……大野……先生?」

え?と不思議そうに俺を見る顔は、まさに高校の時の大野先生。

「……え……翔…君?」

大野先生もおいらに気づいてびっくりしてる。

そりゃそうだよ。

何年ぶり?

高校卒業してからだから……8年…ぶり?

思わず笑みが漏れて、小さくうなずく。

「あっは!翔君!こんなにカッコよくなって!」

大野先生が、俺をしげしげと上から下まで見回していく。

なんか、照れる。

「あんなに可愛かったのに。」

そう言う先生の、ふにゃり笑顔は相変わらず可愛いくて。

「止めてください。恥ずかしい。」

俺は照れ臭くって頭を掻く。

「背もこんなに小さかったのに。」

先生は自分の口の高さで手を横に振る。

「俺の成長期、18で来ましたから。」

先生がんふふっと笑う。

この笑い方!

懐かしい。

「今じゃ、おいらの方が小さい。」

先生が俺を見上げる。

見上げた顔が可愛くて、懐かしい高校時代が思い起こされる。

そう、まさに青春の日々。

恋愛に目覚めたのもあの頃だった……。

いやぁ、懐かしい!

大野先生はサトコちゃんなんて呼ばれるほど可愛くて。

俺も先生をじっと見る。

先生も照れ臭そうにうつむき加減で笑う。

あれから8年も経ってるのに、やっぱり可愛い。

甘酸っぱい思い出にドキドキしだして、話題を元に戻す。

「隣に……越してきたんですか?」

「そうそう。これからはお隣さん。よろしくお願いします。」

先生が軽く頭を下げて、また笑う。

「これからはお隣同士か……。」

隣同士……なんだか楽しい気分になってきたのは、懐かしさだけじゃない気がする。

「翔君、大学に進学したんだよね?」

「はい。卒業して、今は広告代理店で営業してます。」

「そっかぁ。翔君ももう社会人なんだねぇ。」

先生が先生の顔で嬉しそうに笑う。

「立派になったでしょ?」

俺がふざけて片目をつぶると、先生は感慨深そうにうなずいて、俺の顔をじっと見る。

「でも、あの頃の可愛らしかった翔君の面影もちゃんとある。」

そう言って、俺の顔に手を伸ばそうとして、あっと手を引っ込める。

「目……瞳が、変わってない。」

先生ははにかんだように笑って、俺の瞳をじっと見る。

あの澄んだ瞳で見つめられると……昔の甘酸っぱい気持ちが広がって、

胸の中がざわついていく。

「昔からイケメンだったけど、さらにイケメン。」

先生が、ふふっと笑う。

「先生は、変わらず先生?」

「うん。今でも高校で美術を教えてる。」

「まだサトコちゃん、なんて呼ばれてる?」

「そんな風に呼ぶ生徒いないよぉ。これでも怖い先生なんだよ。」

先生がちょっと男前な顔を作って、俺を睨む振りをする。

そんな顔しても、可愛いだけなのに。

「先生が怖かったら、世の中怖い先生だらけだよ。」

俺が笑うと、先生もそう思ったのか、クスッと笑って

「翔君ほどの芸術センスを持った生徒もいないけどね?」

と、おちゃらけて見せる。

「ひどいなぁ。あれでも真剣に描いてたのに。」

「わかってるよ。だから、翔君の絵は心に残るんだよ?

 おいらが今でも覚えてるのが証拠。」

「それ、ヘタすぎて忘れられないんじゃないの?」

「……そんなこと……ないよ?」

「何、今の『間』は?」

あはは、と二人で声を出して笑うと、

ちょうどエレベーターから下りてきた、奥の部屋の男性が、怪訝な顔をして通り過ぎていく。

俺達は二人で顔を見合わせて、シーッと口に指を当てる。

「絵も……描いてるの?」

俺が小声で言う。

「描いてるよ。どんどん増えて困ってる。」

先生がふにゃりと笑う。

先生が笑う度に胸の中が騒がしくなるのは……なつかしさのせい?

「あ、そうだ。これ。」

先生が小さな紙袋を差し出す。

「翔君、甘いの好きだったよね?」

「よく覚えてるね。先生。」

話してるうちに、昔の自分に戻って行くような気がするから不思議。

「んふふ。忘れるわけないよ。」

先生の目が昔の先生の目に見えて、ドキッとする。

「翔君は忘れられない生徒だったから。」

先生……。

なつかしさに、キュンっと胸が締め付けられる。

俺にとっても忘れられない先生……。

「もう遅いから、おいら行くね。」

先生がにっこり笑って一歩引いた。

「あ、うん。じゃ……。」

先生が行ってしまうと、俺はゆっくりドアを閉める。

閉める時に、ふんわり石鹸のような香りがする。

懐かしい、先生の匂い。

またざわめき出す胸をぎゅっと握って部屋に戻ると、

先生の持ってきた紙袋をテーブルにおいて、食べかけのお弁当をまた食べ始める。

食べながら、紙袋を開けると、中に入ってたのはココア味のクッキー。

俺は弁当をそのままに、一つ口に入れる。

甘いクッキーがほろ苦くて、高校時代の恋を思い出す。

あれは、3年生になってすぐ、桜が咲いてる頃だった……。










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