「短編」
I say(やま)

I say  ④

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再び目覚めた時には、俺の視界の中には4つの顔が頭を揃えて俺を覗き込んでいた。

その内の3人は、きつねと天狗とひょっとこのお面を被っていて……。

それにびっくりして声を上げた。

「ん…ん~っ…………うわぁっ!」

「なんなんですか!起きるなりその声は!」

きつねのお面……と思ったのは、同期の二宮で、不満そうな顔をする。

「やだな、翔ちゃん。うちら心配して駆けつけたのに!」

「そうだよ。俺らだって忙しいんだよ?」

ひょっとこと天狗だと思ったのは相葉と松本で、

二人とも、安心したような笑みを浮かべて文句を言う。

「な、なんなんだよ。お前ら……。」

俺はお面が見間違いだとわかってホッと息をつき、

体を起こそうとして、体が重いことに驚く。

「まだ動かない方がいいよ。丸一日、意識がなかったんだから。」

大野さんも一緒になって柔らかい笑みを浮かべてる。

俺は、そんなに寝てたのか……。

その間、ずっと……いてくれたの?

「大野さん……。」

俺の……初めての本気の恋の相手。

でも、大野さんの未来と俺の未来の為に、別れるしかなかった相手。

男同士に未来があるなんて、とても思えなかったから。

好きになればなるほど、一緒にいてはいけない想いに苛まれ……。

苦しさと苛立ちで、別れを選んだ相手……。

「じゃ、俺達は安心して帰りますから。」

二宮がニヤッと笑う。

「え……なんだよ。お前ら、何しに来たんだよ。」

「そりゃ、こっちのセリフ。意識が戻ったって言うから、元気な顔を見に来たら、

 翔ちゃん、寝てるんだもん。」

相葉が口を尖らせる。

「そうだよ。みんな心配してたんだよ?」

松本の目力も、少し和らいで笑う。

「悪い……心配かけちゃったみたいだな……。」

「いいから。じっくり大野さんと話したらいいよ。

 翔ちゃんの元気の源なんだから。」

相葉が笑って大野さんの背中を叩く。

「おい!相葉……。俺達は……別れ……。」

「それがどうしたって言うんですか?今回のことでわかりましたよね?」

「わかったって……何が?」

「大野さんを失ったらどうなるか……。」

「二宮……。」

俺はチラッと大野さんを見る。

大野さんは複雑そうな顔をして、ゆっくり首を横に振る。

「ちゃんと素直になりなよ?未来は自分達で変えるしかないんだから。」

松本はそう言って、俺と大野さんを交互に見る。

未来……。

俺と大野さんの……未来……?

「櫻井、覚えてないの?なんで飲み過ぎたか……。」

なんで……?

俺は記憶の糸を辿ってみる。

俺は松本と飲んでいて、飲み過ぎて……。

なんで飲み過ぎたか……?

「自分で見合いして大野さんと別れたくせに、

 大野さんのいない生活に耐えられなかったんだろ?」

松本が、ふんと鼻を鳴らす。

「そのあげく、飲み過ぎて生死の境をさまようなんて……本当に大バカですね?」

二宮の言い方は嫌みたっぷりで……。

徐々に思い出してきた記憶。

そうだ……別れなければと思って、見合いして、別れようと大野さんに言って……。

同じ職場で顔を合わせないわけにもいかなくて……。

顔を見れば、想いは募っていくばかりなのに……。

忘れることも、嫌いになることもできなくて……。

「翔ちゃん、別れてから1か月も経ってないんだよ?

 どう考えても無理でしょ?見合い相手と結婚なんて。」

ひゃっひゃっひゃと笑う相葉の顔は、穏やかで温かい。

「俺らだって、最初はびっくりしたよ。まさか同期にって……。

 でも、お前、変わったじゃん?すっげぇいい恋してんだなって思ったよ。」

松本の顔も優しい。

「私はもともと、そこに拘りはないですから……。」

二宮は……やっぱり嫌みっぽい。

「ま、とりあえず、我々は帰りますから……。」

二宮が相葉と松本の肩を叩く。

二人もうなずいて、大野さんに挨拶する。

3人が病室から出て行くと、最後に相葉が振り返る。

「じゃ、翔ちゃん、頑張ってね!あ……ここ、鍵、しまんないから!」

3人がニヤッと笑って帰っていく。

「ば…ばか!」

俺は大野さんをチラッと見る。

大野さんは慌てて、3人が持ってきたらしい箱を冷蔵庫から取り出す。

「しょ、翔君、お腹空いてない?

 柔らかいものなら食べても大丈夫らしいから……。」

大野さんが箱からプリンを取り出す。

「大野さん……。」

俺が呼ぶと、大野さんははにかんだように笑って、少しだけベッドを上げてくれる。

「翔君のお父さんとお母さんも来てたんだけど、一度戻って着替えとか持ってくるって。」

プリンを開けながら、ベッド脇の椅子に腰かける。

「食べれる?」

大野さんの笑顔。

柔らかくって安心できて、俺の心をぎゅっと掴む笑顔。

俺はどんな顔をしたらいいのかわからない。

二人きりになって、まともに顔を見ることができなくて、窓の外に目を馳せる。

「翔君……あ~ん?」

俺の前にプリンの乗ったスプーンが浮かび上がる。

「え……あ……。」

「食べられるなら、少しは……。あ……自分で食べる……?」

大野さんが眉を下げて、困ったように笑う。

俺の前で持ち上げられいたスプーンが、ゆっくりと下りていく。










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