TRIP 腐的妄想

某5人組アイドルの腐的(BL)妄想小説です。成人女性限定でお願いします。

ふたりのカタチ (108)

ふたりのカタチ(やま)【100~ 】


おいらが困惑してると、お姐さんに声を掛けられた。

「お前さん、何ができるんだい?」

何がって言われても……。

こういう所でってことは、三味線とか、日本舞踊とかだよね?

「え……あ……何も……。」

「何もできないのかい?」

お習字……じゃダメだよね?

お習字なら、小さい頃習ってたんだけど。

おいらは困って首を振る。

「そうかい……それじゃ仕方ないねぇ。手拍子をお願いしようかね?」

「手拍子?」

「このくらいで……。」

お姐さんがゆっくりした調子で手を叩く。

おいらも真似して手を叩いてみる。

「そうそう、その早さで手を叩いどくれ。」

お姐さんはにっこり笑って、お座敷の奥へと歩いて行く。

屏風の前に立つと、裾を気にしながら正座して膝の前に扇子を置く。

ちゃんとそろえた指を、扇子に添えるようにお辞儀するその姿が、とっても綺麗で、

やっぱり描いてみたいと思っちゃう。

お姐さんは顔を上げると、すっくと立ち上がって、手を翳してポーズを取る。

おいらは手拍子を始める。

すると、お姐さんはそれに合わせるようにして、歌い出す。

「ちとんとしゃん……。」

う、歌……なのかな?

歌と同時に舞い始め、お座敷の風景が変わる。

柳のそよぐのが見えたり、花びらが舞ったり。

すごい……お姐さん、そうとう踊れる人!

気付けば手拍子も止まってて……。

途中から始めるのもなんだから、

おいらはずうずうしくも、じっとお姐さんの踊りに見入る。

すごく……綺麗で……。

突然、腰を引っ張られてびっくりする。

振り向くと、堺屋さんがおいらの腰に手を回し、自分の方に引き寄せてる。

不意をつかれて、おいらの体が堺屋さんの膝の上に横倒しになる。

うわっ。

見上げると、いやらしさ満点の顔でおいらを見てて……。

なんだか……ちょっと……気持ち悪い……?

芸者の恰好してるから、しょうがないんだろうけど……。

エッチしたいって書いてある顔って、まさにこの顔……?

おいらが男だって知ったら、この人どんな顔するんだろ?

すると、ドンとお姐さんが足を鳴らしてビクッとする。

お姐さんの方を見ると、さっきよりもさらに色っぽいお姐さんが、流し目を送ってくる。

これに逆らえる人なんている?

誰でも落ちちゃうでしょ?

しかも、切なげな指の動き、足さばき。

腰のしなやかさ……。

溜め息が零れちゃう。

「ち…とんしゃん……。」

お姐さんの動きが止まる。

素敵っ!おいらファンになっちゃう!

おいらが見つめていると、お姐さんが顎をしゃくる。

あ……おいらずっと堺屋さんの膝の上だ……。

体を立て直し、着物を引っ張って裾を直す。

お姐さんは、フッと、自分に戻るように、一瞬さわやかな笑顔を見せて、

また正座して一礼する。

そのまま真っ直ぐおいらの方に来て、おいらの腕を取る。

また引っ張られるおいら。

慣れない着物で、つんのめると、今度はお姐さんの胸に抱きしめられる。

あ、お姐さん……。

お姐さん……?

ちょっと肩幅……広め?

おいらはお姐さんを見上げる。

お姐さんも不思議そうな顔でおいらを見てる。

やばい……おいらが男だってバレた?

おいらは急いで体を引き離す。

バレても……大丈夫だよね?

ここがもし本当に本物の江戸だとして……。

おいら、突然切られたりとか……しないよね?

上目使いにお姐さんと堺屋さんを交互に見ると、お姐さんが口を開く。

「お前も何かおやり。」

「え?でも……おいら何もできない……。」

「何もできないことはないだろう?」

そんなこと言われても……。

この時代の人って、何かはできるものなの?

「そうだ、お前も何かやれ。何もできないなら……。」

堺屋さんがまた、顔にエッチしたいと書き始めた。

まずい……。

お姐さんならともかく、堺屋さんにバレたら……。

切られる……?

「唄でも琴でも何でも……何かないのかい?」

お姐さんに言われ、おいらは頑張って考えてみる。

おいらにできることなんて……。

「……絵なら描けるけど……。」

「絵?」

お姐さんが不思議そうに首を傾げると、上手い具合に戸の外から女将さんの声がする。

「お着きになりました。」

つ、着いた?

着いたって……老中?

わ、悪い人じゃ……ないよね?

「これはこれは。」

堺屋さんが起ち上がって、おいらの隣に座る。

お姐さんが身なりを整えだしたから、おいらも真似してみる。

いい人でも悪い人でも、突然切られるのは困る。

なんか……これ、本当に現実?

江戸?現代?

誰か教えて~!!

おいらが心の中で叫んでいると、戸が開き、女将に先導されてお侍さんが入って来る。

老中って言うから、お年寄りを想像してたけど……。

意外に若い?

しかもイケメン?

あんまり偉そうな恰好でもないし……?

隣で座っていた堺屋さんが、立ち上がって揉み手をしだす。

「遅いので心配しておりました。」

「すまない。野暮用でな……。」

「そこはそれ……詮索なんて致しません。」

堺屋さんがいやらしく笑う。

あ……なんか、このシチュエーション、テレビで見たことある!

この後、金のお饅頭とか悪だくみとか始まるやつ!

でも……このお侍さん……悪い人には見えないけど?










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miyabi-night 十九話 - japonesque side story -

miyabi-night(5人)



すると、女がにこやかな笑顔で勢いよく手を叩く。

子供のように目を輝かせ、歌舞伎を観るような素振りで喜んでいる。

こいつは間違いなく芸子じゃないな。

潤が心の中でつぶやくと、潤と堺屋を交互に見た女が、

やっと場の雰囲気に気づいたのか、だんだん体を縮こまらせていく。

拍手の勢いもなくなり、どうしていいか分からないと言った様子に、潤の頬が緩む。

そんな姿がやけに可愛らしい。

この女、人を惹きつける素養がある。

このまま連れ帰ってみるか?

とりあえずは、この場を納めないと……。

「ふっふっふっふ。」

潤は声を上げて笑うと、足を直し、居住まいを正す。

「すまないねぇ。私は短気で……。

 お前さんのその穏やかな雰囲気は、強い武器になる。大事におし。

 さ、堺屋様、仲直りに一献……。」

そう言うと、潤は笑顔でお銚子を傾ける。

「う、うむ……。」

堺屋も内心、助けられたと胸を撫でおろし、

けれど、それを微塵も見せず、お猪口を手にする。

女もなんとかこの場が収まって、ほっとしたのか、

半分開いた障子から、外に目を向けている。

遠くに目を馳せる女の横顔は儚げで、

さっきまで、子供のように喜んでいたのが嘘のような大人びた表情に、

潤は驚いて目が離せなくなる。

女が伏した目を上げると、行灯の揺れる瞳の奥に、見たことのない光を感じ、

潤の鼓動がどきりと跳ねる。

なんだ?この女、何者だ?

「では、乾杯。」

心の内とは裏腹に、潤は女を気にする素振りを見せず、堺屋と杯を交わす。

お互い、一気に流し込み、にっこり笑みをたたえ合う。

「ところで、老中様は何刻においでになられるのでしょう?」

「そろそろのはずなんだが……。まだしばらくかかるやもしれぬ。

 何せ、忙しい方だから……。

 それはそれとして、どうだ、そろそろ一曲……。」

堺屋は、潤が注いだ酒に口を付け、唇を湿らせる。

潤はちらりと女を見る。

女は心ここにあらずと言った様子で、ぼーっと視線を部屋の中に泳がせている。

「お前さん……何ができるんだい?」

突然、声を掛けられ、現実に引き戻された女の体がびくっと跳ねる。

「え……あ……何も……。」

「何もできないのかい?」

女は眉を八の字に下げ、首を振る。

「そうかい……それじゃ仕方ないねぇ。手拍子をお願いしようかね?」

「手拍子?」

「このくらいで……。」

そう言うと、潤はゆっくりと手拍子を取る。

女も真似して手を合わせる。

「そうそう……その早さで手を叩いどくれ。」

潤はついと立ち上がり、座敷の奥で正面にいる堺屋に視線を投げる。

堺屋もにやにやしながら酒を口に運ぶ。

潤は一度正座し、扇子を置いて礼をする。

すぐにしゃなりと立ち上がり、口三味線で舞い始める。

「ちとんとしゃん……。」

潤の足が滑り、扇子を翳せば、柳が揺れ、花が舞う。

女は手拍子を取るのも忘れ、その動きに目を奪われる。

音もなく動く潤の足は、衣擦れと口三味線だけを纏い、美しい花を咲かせる。

堺屋はそんな潤の踊りをよそに、夢中になっている女の腰を寄せる。

「ひゃっ。」

女の体が堺屋の方に倒れ込む。

目の端でそれに気づいた潤は、どんと足を鳴らし、切なげな流し目を送る。

その艶めかしい姿に、女も堺屋も動きが止まり、潤から視線が動かせない。

やるせないその表情のまま首を振り、袖を掴んで口元を隠す。

恋しい人を待つ身の辛さ、苦しさ。

そして喜び。

潤の動きのしなやかさが、恋する女の強さ、弱さを漂わせる。

女は瞬きもせず潤を見つめ、堺屋の悪戯心も顔を引っ込める。

「ち…とんしゃん……。」

潤が腰を屈め、動きを止めると、女は勢いよく手を叩く。

体はまだ堺屋に倒れ込んだままである。

潤は、くいと顎をしゃくり、女に合図を送る。

女も自分の恰好に気づいたのか、急いで体を起こし、膝の合わせを直す。

「お粗末様で。」

潤は最後にまた正座して挨拶すると、女の手を取り、自分の方へ引き寄せる。

「あっ……。」

女の足が裾を踏み、潤に倒れ掛かると、潤は女を抱きかかえ、隣に座らせる。

微かに香る女の香りに、どきりとする。

何の香(こう)だ?

この女、高い身分の者なのか?

「お前も何かおやり。」

高い身分の者ならば、何か一つくらいできるはず……。

そう思い、女の様子を伺う。

「え?でも……おいら何もできない……。」

「何もできないことはないだろう?」

「そうだ、お前も何かやれ。何もできないなら……。」

堺屋の顔がいやらしく歪むのを見て、潤は女を力強く見つめる。

「唄でも琴でも何でも……何かないのかい?」

「……絵なら描けるけど……。」

「絵?」

潤が首を傾げたちょうどその時、戸の向こうから女将の声が響く。

「お付きになりました。」

「これはこれは。」

堺屋は立ち上がって、上座を空け、女の脇に腰を下ろす。

とうとうおいでなすったか。

潤が居住まいを正すと、女も正座を直し、合わせに手を添える。

緊張した空気の中、潤は戸が開くのをじっと待つ。

しばらくして戸が開き、女将に促されながら、供も連れず、男が一人で現れた。










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miyabi-night 十八話 - japonesque side story -

miyabi-night(5人)


潤は襟元を正し、戸を開ける。

「遅くなりまして……。」

深く頭を下げ、顔を上げるとにっこり笑う。

お座敷には堺屋と……、来るとは言っていなかった智の姿に、内心、にやりと笑う。

女着物は舞台で何度か着ている。

所作も心得ている。

潤は、しずしずと堺屋の前に座っている智の隣に並ぶ。

いつもの智とは微妙に雰囲気が違う……。

しかも、珍しく情けない、困った顔で自分を見上げている。

似ているが……別人か?

つと見てみると、智の腕を掴む堺屋の手。

「……困りますねぇ。辰巳の芸子は芸は売っても身は売らぬ、

 そう聞いたことはござんせんかねぇ?」

潤はぴしりと言い放って、はっとする。

いけない……、男声になっている……。

「ふ、ふん、生意気な芸子じゃないか……。

 ま、こういうのが、なかなかいいと言うからな……。」

堺屋のいやらしい笑いに、潤は鼻で笑って返し、

隣の、智に似た女にそっと耳打ちする。

「見ない顔だね?どこの者だい?」

……年の頃は二十歳そこそこだろうか?

江戸褄(えどづま)に赤い裾避け……。

吉原か?

潤は智に似た女をじっと見つめる。

智似の女は、そっと手を翳し、潤の耳に口を当てる。

「何でこうなっちゃったのか、わからないんですけど……。」

喋り方も智ではない。

潤は小さくうなずいて、女を安心させるよう、にこっと笑う。

「何をこそこそしゃべってるんだ。ほら、酒がないぞ?

 老中が来てからこれでは困る。」

堺屋が不機嫌そうに唇の端を上げる。

潤は堺屋に酌をしながら考える。

老中……。

誰のことか?

今の老中は何人だったか……。

鳥井を南町奉行所に配属したのも老中であったはず……。

お銚子を置いて隣を見ると、戸惑った様子できょろきょろと辺りを見渡す女……。

本当に何もわからぬまま、お座敷に上げられたのか?

「とりあえず、お酌しとくれればいいから。」

潤はそう言って、優しく笑いかける。

智に似ているせいか、どうも甘くなる。

本物の芸子なら、すぐさま置屋に帰すところだろうが、潤は本物の芸子ではない。

稽古でこんな調子なら、潤でも扇子を投げるだろうが……。

女はおずおずと堺屋に酌をする。

不慣れなその手つきがなぜか艶めかしい。

ぞくっとする自分に頭(かぶり)を振って、潤は堺屋に話しかける。

「堺屋様は西の方のご出身とか?こちらはどうです?」

「いや、江戸も賑やかだが、あっちはもっと賑やかで……。」

堺屋が酒を啜る。

「食い物は何と言ってもあっちの方がいい。」

「まぁ、江戸の料理はお口に合いませんか?」

「こっちのものは辛くていかん。」

「あちらは薄味だと言いますからねぇ。

 ではなぜ、こちらに?」

「ま、商売を手広くやろうと思ってな……。」

堺屋がもごもごと口を濁す。

「手広く……。これ以上手を広げたら、堺屋様のお屋敷がお城になってしまいませんか?」

「ははは。まま、お前も飲め。」

「はい……。」

堺屋の勧めるまま、潤がお猪口の酒を煽ると、堺屋は喜んで饒舌になる。

「いや、いい飲みっぷりだねぇ。気に入った。」

堺屋はさらにお猪口に、なみなみと酒を注ぐ。

「これなら、老中も気に入ってくれるに違いない。

 老中は好みがうるさくてね。ここに芸子を呼んでるのも怒られかねない。」

「まぁ、女子(おなご)を嫌がる殿方がいらっしゃるなんて。」

「いるんだよ。これでだめなら、次は陰間を呼んでみるか……。

 女形なんぞはそこらの女より色気があるからな?

 一人、囲ってる女形がいるんだが、それがなかなかの上物で……。」

「まあ……。」

潤が少し肩を上げ、流し目を送る。

女形の色気が気に入るのであれば、自分も気に入られるはず……。

「ははははは。いいねぇ、きっと老中も気に入ってくれるはず……。

 だが、俺はこっちの……初心(うぶ)なのが好みでね?」

堺屋は、自信無さげに小さくなっている女に向かって手招きをする。

「ここへ来い。お前はすぐに酌を忘れる。

 それじゃ、いつまで経っても半人前だ。俺が教えてやる。」

酌をさせるだけならば、潤にも止めようがない。

潤が小さくうなずくと、女は仕方なさそうに堺屋の隣に移動する。

ご満悦の堺屋は、女の前にお猪口を差し出し、注げと促す。

女もしぶしぶと言った様子で、酌をする。

この女……本当に芸子なのか?

芸子がこんな態度を取るとは思えない。

騙されてお座敷に上げられたのか、はたまた……。

潤がじっと見守ったまま、女の素性を考えていると、堺屋がいやらしそうににやりと笑う。

「お前は……顔はいいのに、おぼこだな。」

「おぼこ?」

女が首を傾げる。

その女の折った膝の上を、堺屋の手が這おうとする。

おぼこかどうか確かめると言うのか?

潤が、くっくと声を立てて笑う。

「無粋ですねぇ。そんなことを口にする。それは西の作法でございますか?」

「な、何を!?」

堺屋の手が女から離れ、潤に向き直る。

潤は心の中でにやりと笑い、啖呵を続ける。

「今日は、粋な飲み方ってやつをお教えしましょうかねぇ?」

「なんだと!お前などいらん!帰れ帰れ!」

「これまた無粋な……。」

潤は腹の底からおかしそうに笑うと、片膝を立て、一気に捲し立てる。

「では、私も西の作法とやらでお相手した方がよろしいようで?

 生憎、生まれも育ちも江戸なもんですからねぇ。

 あっちの作法なんて、とんと知るよしもない。

 江戸に来たなら、江戸の作法で飲みやがれ!

 郷に入れば郷に従えって言葉、知らないのかい!」

言い終わって、堺屋に向かって見得を切る。

決め台詞が決まって、気持ちのいい潤だったが、この場をどう収拾する?

老中の顔を見るまでは帰るわけにいかない。

さて、困った。










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ふたりのカタチ (107)

ふたりのカタチ(やま)【100~ 】



戸の向こうで、にっこり笑っていたのは、本物の芸者のお姐さん。

鼠色の縞の着物に羽織を付けて、男っぽく見えるのがかっこいい。

ああ、これでなんとか助かる!

そう思ったけど、おいらの腕は堺屋さんに掴まれたままで、

困った顔でお姐さんを見上げると、お姐さんはニコッと笑って、

堺屋さんの腕をパシッと叩く。

「困りますねぇ。辰巳の芸子は芸は売っても身は売らぬ、

 そう聞いたことはござんせんかねぇ?」

お姐さん!

ずいぶんドスの利いた声……。

しかも、目力、すごっ!

なんか、ジュン君みたい……。

目力すごいと、みんな似るのかな?

「ふ、ふん、生意気な芸子じゃないか。

 ま、こういうのが、なかなかいいと言うからな……。」

堺屋さんがいやらしく笑う。

それを見て、お姐さんもふふんと鼻を鳴らし、おいらをお姐さんの隣に引っ張る。

「見ない顔だね?その恰好、吉原かい?……どこの者だい?」

お姐さんがおいらの耳元にそっと口を添え、小さな声で聞く。

「お、おいら……なんでこうなっちゃったのか、わかんないんですけど……。」

おいらも手で袖を押さえて、お姐さんに耳打ちする。

「何をこそこそしゃべってるんだ。ほら、酒がないぞ?

 老中が来てからこれでは困る。」

ろうじゅう?

ろうじゅうって、あの老中?

時代劇とかに出てくる、あれ?

水野なんとかとか……田沼なんとかもそうだっけ?

なんか……悪い人って印象だけど……。

ってか、これ、なんかのお芝居?

どっかにカメラある?

おいら、お芝居なんてできないよ~!

おいらがキョロキョロしていると、お姐さんはクスッと笑う。

「とりあえず、お酌しとくれればいいから。」

お姐さんに言われて、しかたなくおいらは堺屋さんにお酌する。

こんなとこ、ショウ君が見てたら、なんて言うか……。

また女装したからだって怒られちゃうよっ!

「堺屋様は西の方のご出身とか?こちらはどうです?」

お姐さんの営業スマイルは完璧。

色気といい、粋な所作といい、もう、本当に本物の深川芸者に見える!

本物なのかな……?

今でもいるんだね~。

う~、描いてみたい!

一度、お座敷遊びしてみたいって言ったら、ショウ君びっくりするかな?

そんなことを二人の会話を聞きながら、ぼーっと考えてたら、

堺屋さんがおいらをじっと見ているのに気づく。

「な、何か?」

おいらがビクッと体を引くと、堺屋さんが、手招きする。

「ここへ来い。お前はすぐに酌を忘れる。

 それじゃいつまで経っても半人前だ。俺が教えてやる。」

そう言って、隣の畳を叩く。

どうしようか困ってお姐さんを見ると、お姐さんは仕方ないと小さくうなずく。

なんか……いやらしそうで嫌なんだけど……。

でも、どんどん話は進むし、出て行くタイミングはわかんないし。

観念して、堺屋さんの隣に座ると、

堺屋さんは満足そうにおいらに向かってお猪口を差し出す。

おいらは不器用ながらもお酌して……。

「お前は顔はいいのに……おぼこだな……。」

「おぼこ?」

おいらが首を捻ると、隣のお姐さんが、ククと笑って言い放つ。

「無粋ですねぇ。そんなことを口にする……、それは西の作法でございますか?」

「な、何を!?」

「今日は粋な飲み方ってやつを……お教えしましょうかねぇ?」

「なんだと!?お、お前なんかいらん!帰れ帰れ!」

「これまた無粋な……。」

お姐さんは口に手を添えて高らかに笑う。

「では、私も西の作法とやらでお相手した方がよろしいようで?

 生憎、生まれも育ちも江戸なもんですからねぇ。

 あっちの作法なんて、とんと知るよしもない。

 江戸に来たなら、江戸の作法で飲みやがれ!

 郷に入れば郷に従えって言葉、知らないのかい!」

お姐さんの目がキラリと光る。

片膝を軽く立て、その膝に腕をついて言い放つお姐さん。

か、かっこいい~!!

惚れる!惚れちゃう~!!

片膝立ててるのに足は見せないし、啖呵切る時の鋭い視線!

思わずおいらが拍手をすると、緊迫して睨み合ってた二人がおいらの方を向く。

おいらは、拍手する手を徐々に、ゆっくり小さくしていって……。

背中を丸めて小さくなると、そんなおいらを見て、お姐さんが声を上げて笑う。

「すまないねぇ。私は短気で……。

 お前さんのその穏やかな雰囲気は、強い武器になる。大事におし。

 さ、堺屋様、仲直りに一献……。」

そう言って、お姐さんがお銚子を手にする。

「う、うむ……。」

お姐さんに圧倒されてた堺屋さんも、お猪口を差し出し仲直り……。

これ、本当にお芝居?

芝居じゃなかったら……なんでこんなことしてるんだろ?

おいらは行灯の揺れる明かりを見つめる。

続いて障子、襖、鴨居……。

どれもよくできていて、古さって言うか、機械感がないって言うか……。

ほら、襖にしても、屏風にしても、本当に描いてるみたいで……。

え?描いてる?

建物もコンクリートっぽさが全くなくて……。

すごい。ここまでこだわって作ってるの?

撮影用なのに?

おいらはちょっと体を伸ばして窓から外を見下す。

下を行きかう人々は……ポツポツと……人通りは少ない。

町の明かりは穏やかで、とてもLEDの明かりには見えない……。

2階の窓からなのに、遮る物がないから、遠くの方まで見渡せる……。

確かにここは京都の繁華街からはちょっと離れてるけど……。

こんなに遠くまで何もないってことある?

しかも、こんなに真っ暗?

街灯もないなんて?

まさか……。

本当の本物の江戸ってわけじゃ……ないよね?










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miyabi-night 十七話 - japonesque side story -

miyabi-night(5人)



「ごめんよ!雅紀殿はお見えか?」

櫻井が暖簾をくぐって入って行くと、奥から声だけがする。

「あ~、はい!今~!」

雅紀は手の甲を両手で払いながら、小上がりに顔を出す。

「あれ、櫻井様、どうしなさった?」

「いや……。」

歯切れの悪い櫻井の言葉に、雅紀が首を傾げると、櫻井の後ろから、見慣れぬ侍が顔を出す。

「突然ですまぬ。そなたが雅紀か?」

「はい……雅紀は俺ですけど……なにか?」

雅紀は訝しそうに侍を見定める。

ぶしつけに、下から上に視線を移す雅紀に、侍はおもむろに口を開く。

「侑李が……世話になっていたようで……。」

「侑李……?」

「茶屋で……。」

どこかで見たことのある姿形。

雅紀はすぐにハッとする。

「あ……いつも侑李のとこに来てた……お侍さん?」

鳥井は静かにうなずいて、軽く頭を下げる。

「……そうだ。だが、私の名は……。」

「わかってます。お聞きしません。」

雅紀は頭巾をかぶって通っていた姿を思い出す。

「すまぬ……。だが、侑李がとてもそなたを案じている……。

 そなたがとてもよくしてくれたと……。」

「俺は何も……。」

雅紀は小さく首を振る。

特別侑李を気に掛けていたわけではない。

だが、女形の若いのは、芸事の辛さもあるからか、雅紀に話を聞いてもらいたがる者が多い。

「そんなことはない。侑李がひどく落ち込んでいた時も、

 そなたの温かさに救われたと言っていた。

 だから……しばらく茶屋には顔を出すな。」

「……どうして?」

「茶屋に手入れが入る……。」

「おぶ……。」

櫻井は鳥井を呼ぼうとして口を噤む。

名を伏せると言っていたのに、名前を呼ぶわけにはいかない。

「そ、それは本当でございますか?」

「ああ……。明後日、木挽町と……湯島に手が入る。」

「なんと!」

「仕方がない……。それで苦しんでいる人もたくさんいる。

 風紀が乱れるのもまた事実……。」

「ですが、それで生活していける人もいる……。」

櫻井は真意を読み取ろうと鳥井の顔をじっと見つめる。

鳥井の蛇のような目も、微かに揺れている。

何が正しいのかなんて、誰にもわからない。

立場が変われば正義も変わる。

「江戸の文化を否定するつもりはない。

 私だとて歌舞伎や浄瑠璃を楽しんでいる……。

 だが、それが花を売らせ、風紀を乱す……。」

「……必要悪だとは思いませんか?

 岡場所がなくなれば、犯罪が増える……。」

「だが、岡場所の上がりは誰の懐に入る?

 そこで働く者の手に入るのか?」

「それは……。」

櫻井にもそれは分かっている。

だが、それをどうにかできるような力が、自分にないことも分かっている。

「やっぱり、一番悪ぃのは、その金だけを貪るやつらってことだよなぁ?」

暖簾から顔を出したのは智だ。

その後ろから、潤も暖簾に手を掛け、入って来る。

暖簾をくぐりながら、潤の顔をチラッと見、右眉を上げる。

「ああ、そうだねぇ。そいつをなんとかしたら……、

 木挽町……歌舞伎の舞台には手を出さねぇでくれないかねぇ?」

「舞台……?」

「そうだ。舞台には町民の笑顔と癒しが詰まってる……。

 それは、あんただってわかってるはずだ。」

鳥井は誰ともわからぬ男の、有無を言わせぬ言葉に顎を引く。

頷かざるを得ない……。

「ついでに春画もね。あれは、風雅で粋で、江戸の文化の代表と言ってもいい。」

智の隣で潤が口を挟む。

潤の顔をつととみて、鳥井の顔色が変わる。

「お主……。」

顔が看板の潤だ。

鳥井にだってすぐわかる。

「侑李が……世話になってるみたいで……。」

潤の目が鋭く鳥井を睨みつける。

「侑李を助けようとしてくれたことは恩に着る。

 だが、やり方がよろしくない。

 役者は舞台でけりをつける。

 俺は侑李にそう教えてきた。

 侑李もわかってたはずなんだが……、恋は人を狂わすからねぇ。」

狂ったのは侑李だけではない。

職権を乱用し、侑李だけでも助けようとした鳥井だとて同じことだ。

「誰が黒幕なんだい?」

智は小上がりに腰掛けると、腕を組んで鳥井を見上げる。

「黒幕……?」

「そうさ、西から出て来たばかりの堺屋だ。

 そいつだけの仕事ってことはねぇだろう?」

「それはそうかもしれぬが……。」

「堺屋の後ろ、お前さんの後ろには誰がいる?」

「私の後ろなど……。私はただお勤めを果たしているだけだ……。」

鳥井は実直に仕事に励んできた。

今回だって、侑李のことがなければ、すぐにでも手入れを行っていたはずである。

そこに誰かの思惑が絡んでいるなど……考えたこともない。

「ふぅん?」

智は櫻井と潤に視線を送る。

櫻井は小さく頷き、潤は口に手を当て少し考え込む。

「ま、待って。侑李を助け出すだけじゃないの?

 話がよく見えないよ~。」

雅紀は四人の顔を交互に見て、口を尖らせる。

それを見て、四人の表情が少し和らぐ。

「雅紀には後で説明するとして……まずは堺屋に後ろ盾があるかないか……。」

智も顎を撫でると、右足を左膝の上に乗せる。

「それは……俺が探ってみようか?」

潤が智に視線を送る。

「できるのか?お前じゃ面が割れてる。」

「そこはそれ……どうとでも。」

潤がニッと笑う。

「ふん……じゃ、成田屋に任せようか。危なそうなら、すぐに引く。

 約束できるかい?」

「俺だって痛い目にはあいたかないからね。その辺は大丈夫……。」

智と潤の二人の会話を黙って聞いていた櫻井と雅紀は、

顔を見合わせ、心配そうに眉を下げる。

鳥井もどうしたもんかと櫻井の顔を見つめるが、

櫻井は小さく首を横に振った。










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プロフィール

tepo

Author:tepo
アメブロでメインに活動しています。

嵐の大野君が大好きで、山LOVEです♪
腐っているので、ご理解のある方、
また成人女性限定でお願いします。

a Day in Our Life
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kissからはじめよう
    ↓
 Step and Go
    ↓
  果てない空

の順で続いています。
それぞれでも楽しめるようになっていますが、順番に読むと5人の成長がよりわかるのではないかと思います。

コメント等は受け付けていません。
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