TRIP 腐的妄想

某5人組アイドルの腐的(BL)妄想小説です。成人女性限定でお願いします。

Believe -8-

Believe



「んっ!?」

びっくりした僕から一瞬、力が抜ける。

あいつはその隙を逃さず、両手を頭の上で抑えつけ、ボタンを次々に外していく。

「やめっ……!」

声を出そうとしても、唇を塞がれ、身動きもできない。

肌蹴たブラウスの間から、あいつの手が入って来る。

「ん、んんっ!」

あいつの強引なキスはさらに激しさを増す。

胸をまさぐるあいつの手が、下に向かって、肌の上を滑る。

僕は、両足を動かして、がむしゃらに抵抗する。

僕の足があいつを蹴とばす。

それでも表情を崩さないあいつの体が、僕の足の間に入ってきて、動きを止められる。

体中のあらん限りの力を振り絞る。

足をバタつかせ、手首の枷を解こうと両手であいつの手を押し戻す。

唇から逃れる為に、激しく首を振り、やっと離れたところで……。

あいつの手が、僕のモノを握り締めた。

「あっ!」

力が抜ける。

押し戻したはずの手首はまた頭の上で抑えられ、外れたはずの唇は僕の唇に重なる。

あいつの手が布越しに僕のを撫でるように扱くと、ブルッと体が震える。

手はゆっくりと僕のを扱き続ける。

「ぁ……。」

例えようのない快感が、下腹部に溜まって行く。

「やっ……。」

顔を左右に振り、あいつの唇から逃れると、

あいつの唇はそのまま頬から首筋を這いまわる。

「やめっ!」

あいつの手に反応する僕の体……。

「あっ……。」

嫌悪しても、快感の波は揺るぎなく押し寄せる。

力の抜けた僕の手を離すと、あいつは僕のズボンを下着ごとずり下げる。

剥き出しになった僕自身。

直接触られる快感は、驚くほどで……。

「……はぁ……っ。」

繰り返される律動と、あいつの唇に、僕は……。

少しの抵抗もできず、体をブルッと震わせた。

「あ……。」

解き放たれた快感は、あいつの手を汚す。

手の平を確認して、あいつが僕から離れる。

ハンケチで手の平を拭き、力なくソファーに残された僕をチラッと見て、机に戻る。

何事もなかったように、書類に目を通し始めるあいつ……。

ブラウスははだけ、局部も剥き出しのまま、僕は虚ろな目であいつを見つめる。

初めての射精は、何とも言えないだるさと嫌悪感を僕に教えた。

大人はこんなことをするのか?

……汚い!

汚い、汚い、汚い、汚い!

あいつも僕も……汚い!



あれから、あいつが僕に触れることはなくなった。

キスをすることはもちろん、話をすることもほとんどない。

神学の授業も続いている。

あの時の先生は変わったが、なぜだろう?

神学の先生だけは外れが多い。

いやらしい目で僕を見るか、軽蔑するような態度を取るか……。

前回の先生は後者で、今回の先生は……前者らしい。

「ジュン、神学の先生、変えて。」

「……またでございますか?」

ジュンが不満そうな顔をする。

「あんなやつに教えてもらうくらいなら、ジュンに教えてもらった方がマシだ。」

「そんなことを言う……。」

ジュンの眉が困ったように下がる。

「ほんとだよ?」

僕は、真剣にジュンにお願いする。

「あんな目で見られるの……たくさんだ!」

ジュンは口をへの字に曲げながらも、次の神学の授業を覗いてくれた。

一度授業を見ただけで、ジュンはすぐに新しい先生を連れて来た。

新しい先生は、今までの先生とちょっと雰囲気が違っている……?

「初めまして。僕はこれから神学を教えるサヴォナローラです。」

厳格そうなその人は、僕を見て、右手を差し出す。

僕も右手を差し出し、握手する。

大きくごつい手は、同じ聖職者でありながら、あいつとは全然違う。

「では、授業を始めようか?」

サヴォナローラが授業を始めると、ジュンが安心したように笑顔でうなずき、

部屋を出て行く。

僕は仕方なく授業を受ける。

授業の内容も……今までの先生達とは違っていた。

強固なまでの信仰心と、熱意。

僕は訊いてみたかった。

あんなことをされた僕でも、神は救ってくれるのか?

いや、やはり神などいない。

神がいたら……父さんと母さんがあんな目に合うはずない。

真面目に働いてた父さんと母さん、村の人……。

そんな人達を救えない神なんて!

神を信じない僕を、神が救うことなど……あるわけない。










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Believe -7-

Believe



それから2年が経った。

僕はさらに医学と気象学を学び、ピアノも……少しは弾けるようになった。

あいつは枢機卿になり、変わらず、寝所を供にした。

時折繰り返されるキスは続いていたけど、やはりそれ以上にはならず……。

僕は多感な14歳になっていた。

「ショウ様、お戻りくださいませ!」

ジュンが叫びながら追いかけてくる。

太陽の光を受けて、ジュンの巻き毛がキラキラしてる。

「戻ったら、神学の先生、変えてくれる?」

僕は走りながら振り返る。

「我が儘をおっしゃらないでください。何人目だとお思いですか?」

「知るか!僕が望んだわけじゃない。」

「でしたら……、素直に授業をお受けになってくださいっ!」

ジュンの足が止まり、はぁはぁと手を膝につく。

「ジュン!もう終わり?体力ないなぁ。」

「私は……ショウ様ほど若くはございません。」

「ジュンだって十分若いよ。もっと体を動かさないと!」

僕がにこっと笑うと、ジュンが困ったように肩を竦める。

「ああ、言い忘れておりました。今日の午後のピアノのレッスンは変更でございます。」

「……教皇様が見えるの?」

「はい。」

ジュンは無表情で答える。

僕とジュンの間には5m以上、距離がある。

「……あいつは?」

僕が怒鳴ると、ジュンが眉間に皺を寄せる。

「そんな言い方……。」

「あいつは?」

「……政務室でございます。」

「行って来る!」

僕はあいつの所へ走り出す。

「ショウ様!」

ジュンの声を背中で感じながら、僕は屋敷の裏に回る。

初めてここへ来た時、行ってはいけないと言われたあいつの仕事場。

信仰の対象ともなるだろうこの場所より、父さんの鍛冶場の方がよほど神聖に見える。

裏から屋敷に入り、あいつの仕事場のドアをノックする。

「なんだ?」

中から声がして、僕は勢いよく扉を開ける。

あいつはチラッと僕を見て、そのまま何か書き続ける。

「今の、神学の先生を変えて欲しい。」

「そんなことはジュンに言え。」

「もうこれ以上、神学は勉強する必要がない。そんな時間があるなら、

 天文学と……ピアノのレッスンを増やしたい。」

あいつは書き終えたのか、ペンを置き、僕を見据える。

「どうして?」

「僕に信仰は必要ない。」

あいつは、フンッと鼻を鳴らし、頬杖をつく。

「必要か必要ないかは私が決める。」

「なら、もう少しまともな先生を連れて来てよ。」

「まともじゃないと……?」

あいつの目が光る。

「ああ、みんなまともじゃないね。クソみたいなのばっかだ!」

「ショウ!口を慎め。」

「とにかく、神学は勉強しない。」

僕は言い捨てて、政務室の扉を開ける。

「午後も……ピアノのレッスン、するから。」

「ショウ!」

あいつが起ち上がる。

「今日は父上が来る。」

「だから?」

「…………。」

「僕の存在を……隠したい?」

「……そうだ。子供を拾ってきたなどと、父上に知られるわけにはいかない。」

「なぜ?孤児を拾って育てるなんて、いい話じゃない?」

僕はせせら笑うように、顎を上げる。

「そうだ。いい話だ。だが、そう取らない奴もいる。」

「御父上は教皇様なのに?神に一番近い人なんでしょう?

 なのに、ふしだらな……妄想をするって言うの?」

「ショウ!」

あいつが机を周って、僕の後ろにつき、扉を閉める。

「父上のことはもういい。」

「逆らえばいい!父親なんだろ?」

「そうだ。父親だからだ。」

「どうしてそんなに気を遣う?」

あいつは視線を逸らし、机に戻ろうと体の向きを変える。

「この話は終わりだ。」

「神に一番近い人が、妻以外の女を孕ませる。」

「ショウっ!」

あいつの手の平が飛ぶ。

次いで、頬に痛みが走り、顔が熱くなる。

僕は頬を押さえ、あいつを見上げる。

目に涙が溜まってくる。

驚いたせいなのか、痛さのせいなのか……、

自分でもなぜ泣いているのかわからない。

「部屋に戻れ。今日は部屋で自習だ。」

あいつが、メイドを呼ぼうとするのを、両手で遮る。

「僕は……あんたを可哀想だなんて思わない。」

あいつは無表情なまま僕を見下ろす。

「私が可哀想などと、なぜ思う?」

「思ってない!」

「私は恵まれている。この歳で枢機卿だ。

 妬(ねた)まれこそすれ、同情されるなど……あり得ない。」

あいつの表情が崩れないのが悔しくて、大声を上げる。

「じゃあ!なんで僕にキスする?

 教皇様が来た時に限って、僕にキスするのはなんで?」

あいつの表情がガラリと変わる。

眉間に皺を寄せ、厳しい目つきで僕を見る。

僕の両手首を掴み、無理やり唇を合わせる。

「んっ!」

僕は激しく首を振る。

あいつの唇を振り切り、両手にも力を入れる。

でも、まだあいつの力には敵わなくて……。

そのままソファーに投げ飛ばされた。

ドンッと背をソファーにぶつけ、一瞬怯んだ隙に、あいつが圧し掛かって来る。

「や、やめろ!」

手足をバタつかせ、抵抗しても、あいつは僕を押さえつけ、唇を奪う。

僕の両手を交差させ、片手で掴むと、ブラウスのボタンに手を掛ける。










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miyabi-night 三十七話 - japonesque side story -

miyabi-night(5人)



「あ……あ、んっ……。」

屏風に映る影が細かく揺れる。

「ここかい?」

首を振る影に、満足そうなもう一方の影。

「じゃぁ……こっちだ。」

「ぁあっ!」

震える影が腰を揺らす。

「あぁ……はぁ……さと……。」

「ああ、おいらはここにいるよ。

 翔さんの中に、ちゃあんといる。」

「ああっ……やぁ……。」

「嫌なのかい?ここはこんなに喜んでるのに。」

「ぁあああ、あっ、……さと……さと……もっ……。」

行灯の灯りが揺れて、微かな風に消える。

暗闇の中で木霊する声が重なり……匂いが満ちる。



「剛が……。」

春画を見つめる智の隣で、だらりとした櫻井が、智の声に合わせて視線だけを上げる。

「最近、おいらの描く女が特に色っぽいって……。

 そりゃあそうだよなぁ?」

智は枕元に春画を置き、櫻井の額にかかる髪を撫でつける。

「こんな色っぽい翔さんを見て、いい絵にならねぇわけがねぇ。」

ふわりと笑う智に、櫻井が体を寄せる。

「色っぽいのは……智…殿の方じゃ……。」

智は櫻井の唇に指を当てる。

「いけねぇなぁ。“殿”はいらねぇよ?」

「さ、さと……智……。」

智はにこりと笑う。

「なんだい?」

「智が……そんな目で見るから……。」

「おいらが?どんな目で見てる?

 おっこちきった目で見てるかい?」

くすくす笑う智の胸を櫻井の手が、とんと叩く。

「……意地悪だ……。」

「意地悪もしたくならぁね。そんなに可愛らしい顔されたんじゃ。」

智は笑いながら、親指で櫻井の頬を撫でる。

その指使いが優しくて、恥ずかしくなった櫻井は、話を逸らす。

「ひ、羊屋さんのお嬢さん、縁談が決まったそうで……。」

「ああ、のりちゃんかい?和が頑張ったかいがあったね。

 来月祝言だって、和も喜んでたよ。」

「智千代さんは……。」

「智千代は、今頃、いい人の腕の中さ。

 老中には可哀想なことをしたけどな?」

智がくすっと笑う。

「そのうち、錦絵でも描いてやるか?

 そんなことしたら、毎日眺めて、翔さん達のお勤めに響くか?」

智はその姿を想像して、くっくと笑う。

「智は……智千代さんには……その気にならなかった?」

「どうして?」

「東山様も、成田屋も……みんな……気に入ってたみたいだから……。」

櫻井は言いにくそうに言葉を濁す。

「そうだねぇ……抱いてみたいとは思ったが……。」

抱いて、と言う言葉にびくっとする。

そんな櫻井を横目に、智が悪戯っぽく目を細める。

「おいらにゃ、お前さんがいるからね?」

櫻井の顔がかぁーっと赤くなる。

「お前さん以外、抱いちゃいけねぇんだろ?」

「……そうだ……智は……私以外……抱いてはいけない……。」

櫻井は顔を染めたまま、智を見上げる。

「ちゃあんと約束は守ってるよ。」

智が櫻井のこめかみに唇を当てる。

「暁も、お前さんから離れられないからね……。」

智は刷り上がったばかりの春画を、櫻井の枕元から持ち上げ、二人の前に翳す。

春画には、身を捩って男を誘う女と、喜び勇んで目を輝かせる男の姿。

「私は……こんな顔で誘っているのか?」

「ああ、そうだよ。これよりもっと色っぽい。」

智はくっくといやらしく笑う。

「こ、今回の話も和殿が書いたのか?」

「ああ、今回の話は女に騙される、男の話だが……。

 次の話は幸せな話になりそうだよなぁ?」

智が指で絵の中の女を撫でる。

「ん、うん……。」

智が絵の中の女を撫でるだけで、胸の中がぎゅっと締め付けられる。

しかも、この女は自分を描いたと言うのに。

自分に嫉妬するなんて……。

おっこちきってるのは私の方だ……。

櫻井は居たたまれなくなって、智に背中を向ける。

智は絵を枕元に戻し、後ろから櫻井を抱きしめる。

「どうした?具合でも悪いのかい?」

「…………しぃ……。」

「ん?」

「抱いて……欲しぃ……。」

櫻井が顔を上げると、潤んだ瞳が切なげに智を捉える。

「翔さんは……ずりぃなぁ?」

櫻井がわずかに首を傾げる。

「そんな顏で見られたら、どんな男もいちころだ。」

智の唇が櫻井の唇を挟む。

「体だけじゃなく、心まで持ってかれちまう。」

「智……。」

櫻井の両腕が智の背に回る。

「私はとっくに……。」

唇を合わせたまま、智の目が細くなる。

ふわりと笑って、その唇から覗き出た舌先が、櫻井の頬をなぞる。

ぞくっとする感触が、首筋まで下って行くと、櫻井の奥が疼く。

「あ……。」

「いいよ……何度だって抱いてやる。

 お前さんのいい顔は、おいらだけの楽しみだからな?」

「さと……、あっ。」

智の唇が櫻井の胸を摘まむ。

「もっと気持ちよくなりな。

 もっともっと……極上の、欲にまみれた顔を……見せておくれ?」

「あ……だめ……。」

まだ、だるさの残る体が、小刻みに震える。

その様子を見つめ、得も言われぬ快感を感じた智が、櫻井の中に入って行く。

「あ……ぁあっ……。」

櫻井の声が夜空に木霊する。

今宵の空は朧月夜。

春の月が、宵闇に霞む。

二人の秘め事も、江戸の町の喧騒に、朧に霞む。










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miyabi-night 三十六話 - japonesque side story -

miyabi-night(5人)


「智千代……、もう会えないかと思っていたよ。

 まさか男だったとは……。」

東山が智に向かう。

智と雅紀は顏を見合わせ、首を傾げる。

「何を勘違いしてるのか知らねぇが、おいらは智千代じゃあねぇよ?」

智は腕を組んで袖に通す。

「ああ、あれは世を忍ぶ仮の姿なのかな?

 昨日、踊っている姿を見て、確信した。あなたは智千代だ。間違いない。」

「すまねぇが、勘違いだよ。おいらは智千代じゃねぇ、智だ。」

「確かに似てたからねぇ。勘違いしても仕方ないと思うけど。」

雅紀も東山に同情するようにうなずく。

「智千代に会ったことがあるのか?」

東山が雅紀に食いつく。

「ああ、ここに泊まったからね?」

雅紀が智を見ると、智が静かにうなずく。

「泊まった?ここに?身内なのか?」

東山が驚いた表情で雅紀を見つめる。

「身内じゃねぇよ。まぁ、あいつが男だってとこは当たっちゃいるが……。」

智がちらっと櫻井を見る。

櫻井は何のことかと思案顔だ。

「お前さんが、小屋で見た芸者、あれが智千代だよ。」

「あの女(ひと)が……。」

櫻井がつぶやくと、また出入り口の方から声がする。

「ああ、そうだよ。智千代は智じゃない。」

みんなが一斉に振り返ると、逆光を浴びて、潤が颯爽と現れる。

「成田屋……。」

智が言うと、潤がにこりと笑う。

「似ちゃぁいるが、智千代は智じゃない。色気が違う。」

潤が言い切る。

東山はじっと智を見つめ、首を傾げて腕を組む。

「う~む、確かにそう言われると……。」

「だから、おいらじゃねぇんだって。」

智は両手を後ろについて、東山を見上げると、東山は智にずいっと近寄って来る。

「こんなに似ているのに……。生き別れになった兄弟か?」

「そうかもしれねぇな?」

智がくすりと笑う。

「智千代は、もうここにはいないのかい?」

東山が、智に近づいたまま聞く。

「ああ、あいつのけぇる場所にけぇったよ。」

「そうか……智千代には帰る場所があるのか……。」

雅紀がうなずき、智と顔を見合わせる。

「うん、いい人のとこに……。」

幸せそうな智千代の顔を思い出し、雅紀の目が潤む。

潤んだ瞳で和を見ると、和がぎゅっと雅紀の手を握り締める。

「たまに……芸者の恰好するっていうのはどうだ?」

東山が智に向かって、にこりと笑う。

「ごめんだね。おいらにゃできねぇよ。」

「そんなことはない。あれだけ見事に舞えれば……。」

「あれは舞台だからな。そうでなけりゃ、あんな芸当……。」

できねぇできねぇと、智がゆっくり顔を振る。

「そうかい、それは残念……。

 だが、今回のことで私はいろいろなことに気付いた。」

櫻井に、不吉な予感が走る。

「私が男を好きになるなどあり得ないと思っていたが……。

 好きになるのに男も女もないということもわかった。」

東山はじっと智を見つめる。

「これだけ似ているのだ。智千代を恋しく思う、私の心を慰めてはくれまいか?」

東山は智の手を取り、握り締める。

「あはは。ばか言っちゃいけねぇよ。おいらにお前さんを慰める義理はねぇだろ?」

「それはそうだが……、ええい、こうなれば職権乱用して……。」

「東山様!」

櫻井が叫び、東山と智の手を振り払う。

「お戯れはほどほどになさいませ。」

「なんだ、お前は智千代に会ったのか?」

「私は……ちらっとお見かけした程度で……。」

「なら、入ってくるな。智殿、しばらく私と懇意にしてみるというのはどうだろう?」

また智の手を掴み、ぐいっと身を乗り出す。

「すまねぇが……。」

智が東山の手を振り払う。

「おいらにゃ、いい人がいるんでね。」

「いい人?」

「そうだよ。おいらがおっこちきってる。」

智はそう言うと、櫻井の顔を見つめ、ふわりと笑う。

「智殿……。」

櫻井の頬が染まり、見つめ合う二人を見て、東山にもすぐにわかり、渋い顔をする。

「なんだ、相手は櫻井か。」

「……申し訳ありません……。」

櫻井が済まなそうに頭を下げる。

「ああ、もういい。私は智千代に似た女を探すぞ。

 どこかにいないか?」

「それならいい女がいますよ。」

和が、会話に割って入る。

「なかなか可愛い顔をしてるし、育ちもまずまず。

 ちょっと気が強いが、それもご愛敬。

 女は気が強いくらいがちょうどいいっていいますからね。」

「ほぉー。その人は智千代に似てるのかい?」

「そうですねぇ……似てないこともないかな?」

「それはいい!ぜひ会ってみたい。」

「そうですか、そうですか。では、すぐに段取りして参ります。」

和が揉み手しながら、東山を見上げる。

「頼んだぞ。」

「はい。」

和の笑顔に、雅紀が口をへの字に曲げる。

「お侍さんには、おみよちゃんが合ってると思ったけどな?」

智がくすりと笑うと、はっとした東山が一同を見回す。

「申し訳ない。そろそろ行かないと、団子がなくなってしまう!」

「なんだ、おみよちゃんは取っといてくれないのかい?」

「あの子は商売上手でね、そういう特別扱いはしてくれないんだよ。」

「ははは。それは脈がないってこったな?」

みんなが一斉に笑うが、東山は団子が気になって仕方ない。

「このたびは大変世話になった。礼を言う。ありがとう。」

東山が、みんなに向かって会釈する。

「なぁに、大したことはしてねぇよ。」

智が軽く手を上げる。

「こちらこそ、感謝してもしたりません。」

雅紀が全身でお辞儀する。

和も隣で雅紀に倣う。

「じゃ、智千代似の女、楽しみにしているよ。」

東山はみんなに背を向け暖簾を避ける。

その後ろ姿を見送って、雅紀が和に耳打ちする。

「さっきの女の人って……。」

「ん?ふふふ。わかった?お嬢さんにもいい人見つけてあげないと、

 私が祝言あげるはめになりそうだからね?」

和がにやりと笑った。










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Believe -6-

Believe



二度目のキスは最初のキスより苦しくなくて、

あいつの唇が、僕の下唇を柔らかく挟む。

優しい感触に釣られて、軽く口を開くと、そこから舌が押し込まれる。

ぎゅっと歯でガードする。

あいつの舌は、進入する気がないのか、歯の根元を撫でて、唇の感触を楽しんでるみたい。

ぎゅっと歯を閉じたせいで、息をすることができなくて、段々苦しくなってくる。

すると、あいつの唇が離れる。

「お前には……息の仕方を教える必要があるな。」

フッと、口元から力の抜けたあいつの顔に、なぜか僕の頬がカッと熱くなる。

「お前は息の仕方を忘れるのか?」

「……そうじゃないけど……。」

僕は視線を逸らして、横を向く。

忘れるわけじゃない……。

唇に集中しちゃうんだ……。

あいつは僕の唇に、わずかに唇を合わせる。

「口づけていても……息はできる……。」

あいつは唇を重ねたまま息を吸う。

僕も同じように息を吸って……小さく吐く。

吐いた拍子にあいつの舌が入り込んでくる。

舌先が、僕の舌の上を撫で、クルンと丸めて舌先を巻き込む。

「んんっ。」

合わさった唇が唾液で濡れていく。

心地よさで、高まる高揚感。

濡れた唇が、いやらしい音を立て、さらに高揚感が増していく。

なのに、あいつの唇が突然離れる。

じっとあいつを見ていると、表情を変えることなく、あいつが言う。

「今度はお前が絡めろ。」

すぐに唇を合わせたものの、あいつの舌は入り込んではこなくて……。

僕がしないといけないの?

こいつの言うことはなんでも聞けって、ジュンが言っていたことを思い出す。

でも……こいつの言うことなんか……聞くもんか。

こいつは……僕の敵だ。

「私は、絡めろと言っている。聞こえなかったのか?」

唇を擦らせながら、低い小さな声で囁く。

その声が、僕の頬を染め、何か得体のしれない僕の奥深くを刺激する。

僕は仕方なく唇を合わせ、舌をあいつの口の中に押し込む。

舌先を使って、あいつと同じようにあいつの舌ごとクルンと巻いた。

あいつの舌が、僕の舌に絡んでくる。

絡まり合う舌の感触と、唾液でネチャネチャした唇が心地よくて、

もっと絡まり合いたくなって……。

顔の角度を変えてあいつの口の中に入り込むと、

あいつの目が細くなって、僕を見つめた。



長いキスの果てに、僕はあいつの腕の中で眠りについた。

慣れないことをして疲れたのと、あいつの体温の心地よさが、僕を眠りに誘う。

こいつは敵だ、甘えちゃいけない……。

そう思う反面、こいつにはまだ逆らっちゃダメだ。

まだ、力が足りない……だから……。

そう言い訳する自分がいて……。

一度は腕から逃れようと試みたけど、あいつの腕にぎゅっと力が入ると、

僕は……抵抗する気になれなかった。



それからも、時々あいつは僕にキスしてきた。

でも、それ以上に手を伸ばすことはなく、僕もだんだんあいつのキスに慣れていった。

そのうち、奇妙なことに気づく。

最初は、ピアノのレッスンが変更になる日にキスされることが多いなと思っていた。

けれど、それを何度か繰り返すと……。

教皇様の来られた日に限って、キスされていると言うことに気付く。

自分の父親に会った日に僕にキスをする……。

あいつはなぜ、僕にキスをする?



その日も、長いキスをされて、あいつの腕の中で微睡んでいると、

あいつが耳元でポツリとつぶやく。

「お前の父親は、どんな人だったんだ?」

「父さんは……。」

僕はあいつを見上げる。

「鍛冶屋で、力も強くて、あの熱い中でも黙々と作業する働き者で、

 でも、喧嘩っ早くて、すぐ靴屋のおじさんとケンカしちゃう。」

僕は父さんを思い出してクスッと笑う。

「でもね、僕と母さんのことはとても大事にしてくれてた。

 優しい父さんだった……。」

そうだ。そんな父さんを……。

僕はキッとあいつを睨む。

「よかったな。そんな優しい父親で。」

あいつの声は、なぜか透き通るように儚くて……。

僕は、あいつを睨み続けることができなくて……。

あいつの部屋着の襟元をぎゅっと握った。

あいつは一瞬、困ったように笑って、僕を抱きしめた。

こいつは……どんな気持ちで僕を抱きしめている?

僕から、父さんと母さんを奪った張本人。

なのに、こいつから溢れてくるこの切ない感情は……いったいなんだ?

抱きしめ返したいと思う、僕の感情は、なんなんだ?










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tepo

Author:tepo
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嵐の大野君が大好きで、山LOVEです♪
腐っているので、ご理解のある方、
また成人女性限定でお願いします。

a Day in Our Life
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kissからはじめよう
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 Step and Go
    ↓
  果てない空

の順で続いています。
それぞれでも楽しめるようになっていますが、順番に読むと5人の成長がよりわかるのではないかと思います。

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