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TRIP 腐的妄想

某5人組アイドルの腐的(BL)妄想小説です。成人女性限定でお願いします。

テ・アゲロ  the movie ⑨ scene6

テ・アゲロ  the movie



二宮はガードレールに座って、ボーっとピンクと紫が交互に光るネオンを眺めていた。

「トーマ……。」

視界が滲んで行く。

明け方だと言うのに、遠くから聞こえる男女の派手な笑い声が頭に響く。

大野の元から戻った二宮に、心配そうな顔を、笑顔に変えて両手を広げてくれたトーマ。

思わず駆け寄り、その腕の中に入って行った。

相変わらず、柔らかく抱き締めてくれるトーマの腕に、ホッと息をつく。

別れ話をするつもりだったのに。

だが、先にトーマから釘を刺された。

「カズがこのままいなくなっちゃうんじゃないかって、生きた心地がしなかった。」

ギュッと抱きしめる腕に力を込める。

「帰ってきてくれてありがとう。」

「トーマ……。」

トーマの温もりに、決心した気持ちが揺らぐ。

「これほど……カズの存在が大きくなってるなんて……自分でもびっくりしてる。」

トーマがはにかんだ笑みを浮かべる。

店では経営者として、人も客も動かすトーマ。

そのトーマの恥ずかしそうに頬を染める顔を見て、二宮の胸がギュッと締め付けられる。

「たかが一日帰ってこなかっただけなのに……。」

トーマはゆっくり二宮を離す。

「まさか、この歳で連絡入れようか悩むと思わなかった。」

「どうして?」

トーマはわざと強気な子供みたいな顔を作る。

「だって、大人同士なのに……今どこにいる?何してる?何時に帰って来る?

 なんてメール……恥ずかしいじゃん。」

強気な子供が恥ずかしそうに俯く仕草が可愛くて、今度は二宮がトーマを抱き締める。

「恥ずかしくなんかないよ。したかったらすればいい。」

「……いいの?うざいでしょ?」

「トーマなら……うざくない。」

トーマも抱きしめ返す。

「カズ……カズだけだよ。こんな気持ちになるの……。」

こんな風に思ってくれるトーマと別れる……?

そんなこと自分にできる……?

二宮は腕の中の温もりを確かめるように力を込める。

「ごめん……連絡もしないで……。」

「いいよ。帰ってきてくれたから……。」

「トーマ……。」

見上げると、二宮を優しく包むトーマの笑顔。

「だから、決して一人でどこかに行ったりしないでね。」

ゆっくりと重なって行く唇。

この温もりを手放すことなんて、自分には……。

二宮の舌が、トーマの中で蠢く。

トーマの舌も二宮のを包むように絡めていく。

「俺を……一人にしないで……。」

ズクッと二宮の腹の奥が疼く。

強いトーマが弱気な所を見せられるのは自分しかいない……。

「しないよ……。一人になんて……させない。」

二宮はトーマを押し倒すように、ベッドにもつれ込む。

「だから、私のことも……一人にしないで。」

「カズ……。」

トーマの手が二宮のシャツのボタンにかかる。

「ありがとう。」

そう言って、嬉しそうに笑うトーマを思い出し、二宮の涙が頬を伝う。

一人にしないと約束したのに……。

まただ。

また起こった……。

また……。

二宮は涙で滲むネオンの向こうに、先ほどの光景を思い出す。

目の前にあったのは男女の死体。

重なるように倒れた二人の体は、もう二度と動くことがない。

転がった手帳に挟んであった写真が、フラッシュバックのように浮かび上がる。

目の前の男女と、七五三なのか、小さな女の子が着物を着ている写真。

仲の良さそうな家族写真。

二宮はそれを忘れようと、両手で顔を覆う。

そのまま髪を撫で上げ、顔を突っ張らせる。

もう、自分ではどうすることもできない。

トーマの元にも戻れない。

夢遊病の殺人鬼?

二重人格のもう一人が人殺しをしたがってる?

金も保険証もないから病院にも行けない。

このままズルズルと知らない内に人を殺し続けんだ。

自分で自分が恐ろしくなり、叫び出しそうになる。

いっそ、始発電車に飛び込むか?

それがいい、そうすればこれ以上人を殺さなくて済む。

立ち上がり、駅の方へ向かおうとする二宮の耳に、聞き覚えのある声が飛び込んでくる。

「だから、さっきから言ってんだろ?……話を聞けって!」

こんな時間にもめ事?

でも、どこかで聞いたことのある声……。

聞こえて来る声に顔をキョロキョロさせる。

すると、一区画向こうの角で何やら円になっているスーツ姿の男達。

その真ん中にいるのは……先日会った、大野?

「だから、違う……うっ。」

大野の腹に蹴りが入る。

それを合図に男達が背から腹から大野を蹴って行く。

体をくの字に曲げ、大野が倒れ込んでも続く。

「あ……。」

思わず、声が出た二宮は両手で自分の口を塞ぐ。

この距離で、二宮の声が聞こえるとは思えない。

案の定、二宮に気付く者はおらず、大野は蹴られ続ける。

大野がビクとも動かなくなると、

一人の男が何か言い、ペッと唾を吐きかける。

男達は顔を見合わせ、大野を置いてどこかに消えて行く。

二宮は男達がいなくなったのを確認し、大野に走り寄った。










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テ・アゲロ  the movie ⑨ scene5

テ・アゲロ  the movie



生活安全総務課勤務の塚本正宗は登録簿に押収品を書き足していた。

長期に渡る保管は、押収品目録だけでなく、

登録簿に記載し長期保管庫に移すルールになっている。

これが結構めんどくさい。

物品と目録を確認しながら記載し、移していくのだが、新しい倉庫ができたせいで、

新たに分類分別しなおさなくてはならなくなった。

「あ、これ、どこだったっけ……。」

過去の分類棚を見て、分類の間違いがないか確認していく。

「そうだ、そうだ。」

新しい押収品を書き移し、押収品目録をペラペラと捲る。

証拠と思われるものは全て押収されるため、様々な物が押収される。

ボールペンから金塊まで、裁判が終わるまで返還されることはない。

もちろん、貴重品、銃器類は安全を期するため、別保管されているのだが……。

「ん?」

塚本は一枚の目録に目を止め、分類を確認する。

「あれ、これ、さっきの……?」

先ほど目にした過去の分類棚。

そこにあった押収品目録が、別分類で保管されたことになっている。

「間違ってるじゃん。あ~、じゃ、俺のも~?」

頭を掻き、もう一度棚を確認し、書き直そうとして、手を止める。

保管する棚の方を間違えた可能性もある。

仕方なく、もう一度登録簿を開いた。



「相葉!飯食ったら、佐久間と変わってやれ。」

課長に呼び留められ、相葉が振り返る。

「飯食ってからでいいんですか?」

「ああ、あいつもそろそろ限界だろ。お前も長くなると思えよ。」

課長がニヤリと笑う。

「じゃ、旨いもん食ってきます!」

念願の捜査一課に配属になって一年。

仕事がやっと楽しくなってきた頃。

相葉は笑顔で返すと、音を立てて階段を駆け下りる。

「あいつももうちょっと落ち着けばな。」

課長の溜め息混じりの言葉も聞かず、車へ向かう。

車に乗り込もうとした相葉に、また誰かが声を掛ける。

「相葉!」

振り返ると、同期の塚本が笑顔で立っている。

「おう、どうした?」

「今から飯?」

「ああ、行く?」

相葉が飯を掻き込む手つきをすると、塚本がうなずく。



近所の定食屋で向い合わせに座る二人の前に、生姜焼き定食が置かれる。

同期の中でも仲が良く、塚本の結婚式では相葉がスピーチをした。

「小春ちゃん、大きくなった?」

割りばしを割りながら、椅子を引く。

「ああ、可愛いぞ~。」

塚本がスマホを取り出し、写真を見せる。

3歳の小春が、小首を傾げ、ニコッと笑っている。

「毎日、いってらっしゃいのチューしてくれる。」

「小春ちゃん、陽子ちゃんに似て来たね~。大きくなったらモテて大変だ。」

「そう言うこと言うなよ。今から泣きそうになる。」

塚本が目尻を下げ、目を潤ませる。

「まじか?」

びっくりした相葉が、じっと塚本を見つめる。

「まじ。まじで想像するだけで泣けてくる。」

「うわ~、父親ってすごいな。」

相葉が笑って、生姜焼きに箸を付ける。

「お前はいいやついないの?」

塚本は付け合わせのキャベツにマヨネーズを掛け、美味しそうに頬張る。

「いないいない。今は仕事が忙しくて。」

「お前のとこはずっと忙しいぞ?」

「じゃ、ずっと一人?陽子ちゃんの友達、誰か紹介してもらおうかな?」

「紹介する必要ないだろ?お前、昔からモテるじゃん。」

「そんなことないよ。あ、じゃ、20年後独身だったら小春ちゃんに来てもらおうかな?」

「小春はやらん!」

顔を見合わせて笑うと、豪快にご飯をかっ込む。

「そろそろ遊びに来いよ。小春が雅紀君に会いたがってるぞ。」

「いいの~?小春ちゃんの初恋の相手になっちゃうかもよ?」

塚本が箸で生姜焼きを突っつきながら、ボソッと言う。

「お前に惚れるなら小春も見る目ある。」

「じゃ、お嫁さんに……。」

「でもやらん!」

塚本のドスの利いた声に、相葉が大笑いする。

「こんな親父がいたら、小春ちゃん、一生独身決定だね。」

「うるせっ。」

面白くなさそうに顔を背ける塚本を、相葉がおかしそうに眺める。

「仕事は?順調?」

大きな生姜焼きを歯で噛み切る。

「それが……。」

塚本は辺りを見回し、声を低くする。

「ちょっと気になることがあるんだ……。」

「気になること……?」

相葉を見る塚本の顔が深刻なものに変わっていった。










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テ・アゲロ  the movie ⑨ scene4

テ・アゲロ  the movie



二宮は小鳥のさえずりで目を覚ました。

安ホテルの防音設備はないに等しい。

スマホを開くと、9時を少し回ったところだ。

辺りを見回し、足が片方痺れていることに気付く。

そっと足を動かし、痺れが取れるのを待つ。

ここは……。

昨日のことを思い出そうとすると、とたんに靄がかかる。

また、あったんだ……死体。

思い出せるのはそれと、大野と会ってからのことだけだ。

ベッドに目を向けると、大野はまだ寝息を立てている。

トーマがいなくても眠れることに、どこか驚いている自分がいる。

トーマの温もりが全てを忘れさせてくれるわけじゃなかった。

そのことに、寂しさとわずかな安堵を感じている。

トーマがいなくても生きていける。

例え、このまま、何が起こっているのかわからなくても。

生きていけないような気がするのは自分の弱さだ。

けれど、このまま去るわけにはいかない。

きちんとトーマと別れて、トーマに自分を忘れさせないと。

足を伸ばしてみる。

痺れは8割がた取れて来た。

ウ~ンと伸びをするように体を大きく動かす。

ベッドで寝ていた大野の目がパチッと開く。

「あ、起こしちゃった?」

大野が、大きな口を開け、欠伸をする。

「ふぁいひょーぶ……。」

欠伸をしながら返事する大野の目尻から涙が零れる。

「まだ眠そう。いいよ、寝てて。帰るから。」

「なんだ、帰る家があんのか。てっきり行くとこないのかと思ってた!」

大野が目尻を拭いながら笑う。

「……恋人が、待ってる。」

小さな声でそう言う二宮に、大野の笑顔がさらに大きくなる。

「なら、大丈夫だな。恋人に心配かけるなよ。」

二宮はうなずき、立ち上がると毛布を畳む。

「相手は、どんなやつ?」

「どんな……。こういう時、なんて言ったらいいの?」

「知るかそんなの!」

大野が大声で笑う。

「イケメンだとか優しいだとか、あんだろ、なんか。」

毛布を小さく畳みながら、二宮は斜め上に視線を向ける。

「イケメン……だね。モテるよ、すっごく。」

周りにたくさんいるトーマのファン、取り巻き。

その中から、なぜか自分を選んでくれた。

それが嬉しくて、ちょっとした優越感もあって……。

「モテるのか。それじゃ大変だな。」

「そうでもないよ。大事に……してくれるから。」

大事にしてくれてる。

取り巻きたちとは一線を画してくれる。

自分だけ特別にしてくれているのは、二宮にもわかっていた。

だからこそ、ちゃんと別れないと……。

こんなに好きだけど……好きだから……。

「優しいし、私だけを見てくれる……。」

大野が、ハッと天を仰ぐ。

「ごちそうさん!」

そんな大野を見て二宮も笑う。

「あはは、あんたも結構いい男だよ。」

「持ち上げても、昨日の飯だけでなんにも出ねぇぞ?」

大野は両手を広げてアピールする。

「なんだ、もっと何か出るかと思った!」

畳み終えた毛布を椅子に乗せ、二宮がドアに向かう。

「昨日はありがとう。今度どこかで会えたら、私が朝メシご馳走するよ。」

今度などないことは、お互いわかっている。

「おお、そうしてくれ。じゃあな。」

「じゃ。」

二宮はゆっくりドアを出て行く。

大野はその後ろ姿を見送りながら、顎の無精ひげを撫でる。

「ちっ、伸びて来たな。色男が台無しだ。」

尻を掻きながら立ち上がる。

カーテンの隙間からわずかに太陽の明りが差し込んでいる。

その明りを踏むように大野は洗面所へ向かう。










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テ・アゲロ  the movie ⑨ scene3

テ・アゲロ  the movie



大野に連れてこられたのは、繁華街から外れた安ホテルの一室だった。

「朝メシって!」

二宮が抗議の声を上げる。

二宮に渡されたのは、焼きそばパンとコロッケロール。

てっきり、こんな時間でもやっている店に連れて行ってくれるものと思っていた。

「仕方ねぇだろ?この時間だぞ。ここのはうめぇんだ。」

大野は手にした卵ロールのラップを剥がし、ニコッと笑う。

「あ、こっちのがいいか?」

半分ラップを剥がした卵ロールを二宮に差し出す。

「い、いいよ。これで。」

二宮はしぶしぶ焼きそばパンのラップを剥がす。

剥がしながら、この部屋に一つしかない椅子に腰かける。

大野は動く度にギシギシ音を立てるベッドに座っている。

開き気味の膝は、ジーパンの上からでもわかるほど細い。

二宮も細い方だが、大野も負けていない。

見えている肘から先は筋張っているから、あの足にも筋肉が乗っているはず。

締まった体とやや日焼け気味の顔。

何をしてる人だろう?

さっきの追っ手は?

二宮がじっと大野を見ていると、大野が笑う。

「なんだ?やりてぇか?」

二宮は慌てて前のめりになっていた体を引く。

「ちがっ……。」

「お前、そっちだろ?」

そっち……。

大野にはバレているのか?

二宮が恐る恐る大野を見る。

「そっちって……。」

「そっちはそっちだ。お前の相手、男だろ?」

大野は美味しそうに卵ロールを頬張りながら、チラッと二宮を見る。

どうしてわかったのだろう。

今まで、気づかれことはなかったのに。

二宮はうつむき加減で焼きそばパンを口に入れる。

母に育てられた二宮の近くに男はいなかった。

その反動か、二宮は早くから同性に興味を持った。

最初の相手は中学校の先輩。

淡い恋心で終わった。

相手は同性。

告白できるはずもなかった。

高校三年生になって、初めて恋人ができた。

二宮が通う高校の音楽の先生だった。

初めて体を重ねた相手。

高校卒業と期を同じくして、母が他界すると、二宮は相手にのめり込んだ。

最初は受け入れてくれていた相手も、

二宮のエスカレートする行動に、徐々に距離を置くようになった。

最後は二宮から相手の元を去った。

それ以来、誰とも心を通わすことはなかった。

トーマが現れるまでは……。

「どうして……。」

「そんなの見ればわかる。」

大野は卵ロールをムシャムシャと齧っていく。

口の周りにマヨネーズと卵が付き、まるで子供のようだ。

「俺はどっちもイケるから、抱いて欲しいなら言え。

 気分が乗ったら抱いてやらないこともない。」

ペロッと口の周りを舐める。

その舌の動きにドキッとする。

自分にはトーマがいる……。

二宮は、話を変えようと、焼きそばパンに齧りつく。

「そ、それより、さっき追いかけてきたのって……。」

「ああ、あれか?捕まったら大変だぞ?」

大野がニヤリと笑う。

「なんせ、大半がヤクザだからな。」

「ヤ、ヤクザ!?」

二宮は食べるのを止め、さっきの男たちを思い出す。

最初の数人はスーツを着ていたが、

それ以外は、イマドキあんなシャツ着るかと聞きたくなるような、

いかにもチンピラと言った風体の男達。

「なんでヤクザがあんたを?」

大野は最後の卵ロールを口に放り込む。

「金くれるって言うから着いてった相手がヤクザの情婦だった。」

映画とか小説にありがちな……。

言われてマジマジと大野を見る。

よく見れば整った顔立ち。

筋肉質そうな均整の取れた体。

口は悪いが穏やかな声音。

何より、人を安心させる笑顔。

女が魅力を感じないわけもないルックス。

もちろん男も……。

「バ、バレたの?」

「まぁ、そういうことかな?」

大野がクスッと笑って、次のコロッケパンに取り掛かる。

「ほら、お前も喰え。食べて眠れりゃ生きていける。」

単純明快。

その通りだ。

食べて眠れば、明日が来る。

来て欲しい明日か、そうでない明日かは別にして……。

「お前は……なんで死のうとした?」

「し、死のうとしたわけじゃ……。」

「本当か?」

「ほ、本当だよ!」

そう言い捨てると、二宮はバクバクと焼きそばパンをむしゃぶりだす。

「まあ、お前の好きにするんだな。俺は寝る。」

大野がベッドにゴロンと転がる。

「え、わ、私は!?」

「一緒に寝るか?」

大野が片肘をついて、隣をパンパンと叩く。

「大丈夫。ここで寝るから。」

二宮は少し腰の位置をずらし、椅子にもたれ掛かる。

「ふん、それでいいならそうしろ。」

大野はニヤッと笑って蒲団に潜り込む。

秋とは言え、朝方は寒さが身に染みる。

先ほどまで外にいたのに、その寒さすら感じなかった。

二宮が寒そうに体を縮こまらせると、下に掛けていた毛布を引っ張り二宮に投げる。

「それ使え。」

大野は二宮に背を向け丸くなる。

二宮は投げられた毛布に包まり、体を小さくする。

大野はすでに寝息を立て始め、その背中を見ながら二宮も目をつぶる。

疲れた体の重さを感じ、すぐに意識が遠のいた。

トーマ、心配するかな……。

意識がなくなる寸前、そう思ったが、スマホを取り出す気力はなかった。










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テ・アゲロ  the movie ⑨ scene2

テ・アゲロ  the movie



二宮は歩いていた。

よろよろとおぼつかない足取りで、店のシャッターに寄りかかるように進んで行く。

明け方近い線路脇の小道には、人の影どころか通り過ぎる車もない。

街灯の明りだけを頼りにただ、家へ急ぐ。

恋人の待つ家へ。

「トーマ……。」

虚ろな目にじわりと涙が滲み、それを否定するように首を振る。

気付くと目の前に死体がある。

これで三人目だ。

最初の死体は男だった。

テレビで見たことのある、なんたら評論家……。

名前までは憶えてない。

何が起きているのかわからなくて、ただただ家に急いだ。

家に着くと、トーマは起きて本を読んでいて、二宮を優しく迎えてくれた。

「突然いなくなるから心配したよ。」

本を閉じ、トーマの目が優しく微笑む。

「……ごめん。」

トーマは穏やかに二宮を抱き締め、背中を撫でる。

「トーマ……。」

朝までその温もりの中にいることで、夢の中の出来事だと自分に言い聞かせた。

背中を叩くトーマの手が温かく、眠りに落ちると本当に全て夢の中のことだと思えた。

二人目は女だった。

銀座のホステス風の年増の女。

乱れた白い着物に、柄のように散った血の跡は、今でも目に焼き付いて離れない。

最初の時と同様、死体を発見してからの記憶もあいまいで、

自分がどうやって家に辿り着いたのか、あれがどこだったのかもわからない。

とにかく家に帰りたかった。

闇雲に歩き回り、やっと見つけたタクシーで家に帰った。

ベッドではトーマが静かな寝息を立てていて、その隣に潜り込む。

トーマの温かさが、二宮の不安な心を宥めていく。

自分に何が起こっているのか、何をしているのか。

記憶がないと同時に、必ずある死体。

それは今日も同じ。

二宮の目の前には死体があり、記憶がない。

ここまで来る間の記憶もおぼろで、

なぜ手を洗ったのか、なぜこの道を歩いているのかすらわからない。

「くそっ。」

ガシャンッ。

思いっきりシャッターを叩き、その反動で道端に倒れ込む。

早く家に帰らないと。

トーマの待つ家へ。

そう思うものの、立ち上がる気力もない。

三度目……。

間違いなく自分に何か起こっている。

人を殺しているかもしれない……。

ゾクッと鳥肌が立って、二の腕を撫でる。

トーマにだけは知られたくない。

自分がやっているかもしれないこと……。

恋人が殺人鬼だったらどうだ?

知らない内に人を殺し、何事もなかったように恋人の腕の中に帰って来たら……。

ゾワッと身震いし、首を振って否定する。

絶対知られるわけにいかない。

トーマにだけは絶対……。

二宮は立ち上がり、歩を進める。

このまま帰らなければ、トーマに知られることはない……。

このまま……。

繁華街に近いところだったらしく、目の前が少し開けて来る。

ピンク色のネオンが目に飛び込んできて、思わず目を背ける。

明りの下に立てる顔をしていないことを、二宮もわかっていた。

誰にも見られたくない。

二宮はよろよろと暗がりを求めて彷徨った。

どこかでまたタクシーを拾って……。

そう思う反面、このまま帰らない方がいいのではと考えてしまう。

夢遊病か二重人格か。

二宮には、それくらいしか想像できない。

どちらにしろ、このままトーマと一緒にいればトーマに迷惑がかかる。

やっと出会えた安らげる相手。

母子家庭で育った二宮には、母親を高校卒業間近に亡くしてから、

頼れる相手がいなかった。

誰の子かわからない二宮を身ごもったせいで、親戚とも疎遠になっている。

父親には会ったこともない。

会いたいと言ったこともなかった。

フラフラと路地に入って行く。

タクシーを拾うなら、大通りに出た方がいい。

わかっていても、体は勝手に薄暗い方を選ぶ。

突然、辺りが明るくなる。

向こうから、近づいて来るヘッドライト。

このまま、ちょっと前に出れば……。

二宮の体は、思うと同時に前に出る。

ヘッドライトが二宮を白く浮かび上がらせる。

運転手が慌ててブレーキを踏む。

キキィーッとタイヤが鳴り、二宮が目をつぶる。

ああ、これでトーマに迷惑がかからない……。

二宮はドンと来るであろう衝撃を待つ。

すると、違う衝撃が二宮を路地の横道に引っ張り込む。

「ばか野郎っ!」

運転手の怒鳴り声と共にヘッドライトが通り過ぎる。

え……なんで?

通り過ぎるヘッドライトを見送り振り返ると、ボロボロの恰好をした男が、

少し眉を上げ、二宮の腕を掴んでいる。

「こんなとこでぼけっとしてっと、死んじめぇぞ?」

「余計な……。」

言い掛けた二宮の腕が、グッと握り込まれる。

次の瞬間、上がっていた眉が下がり、人懐っこい顔でニコッと笑う。

「生きてりゃ、いいこともある。」

男の顔に引き込まれ、二宮は言葉が続かない。

「おい、いたぞっ!」

横道の奥から声が聞こえる。

「やべっ!」

男は掴んだ腕もそのままに、さっきの路地へ逃げようとする。

「え?なんで?」

「いいからっ!」

男が走り出すと、二宮も走らないわけにいかない。

振り返ると、追っ手と思しき男達が数人、こっちに向かって走って来る。

男と一緒にただがむしゃらに走った。

思いっきり走るのなんて、何年ぶりだろう。

路地から路地へ渡り歩き、なんとか追っ手を巻くと、塀に背を預け、はぁはぁと息を吐く。

「あんた、なんであんな……。」

それ以上息が続かない。

「わりぃ、巻き込んじまったな。」

男も荒い息と共に、唾を飲み込む。

二宮は、男らしい喉仏の動きにゾクリとし、男を見据える。

「あんた、名前は?」

男がニヤッと笑う。

「大野だ。お前は?」

「……二宮。」

大野は二宮の肩をパンパンと叩き、またあの顔でニコッと笑う。

「巻き込みついでだ。飯おごってやるよ。」

二宮の肩を抱き、後ろから押すように歩き出す。

「え、いいよ。」

「遠慮すんなって。」

二宮はどうしたものかと考えたが、そのまま大野に流されることにした。

このままトーマの所には帰れない。










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嵐の大野君が大好きで、山LOVEです♪
腐っているので、ご理解のある方、
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の順で続いています。
それぞれでも楽しめるようになっていますが、順番に読むと5人の成長がよりわかるのではないかと思います。

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