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TRIP 腐的妄想

某5人組アイドルの腐的(BL)妄想小説です。成人女性限定でお願いします。

白が舞う 二十話

白が舞う



電車を乗り換え、五つ先の駅で降りる。

「ここでいいの?」

「たぶん……。」

名前しか聞いたことない都心の駅。

高級住宅街だってことしか知らない。

「ここに、その元締めの……家がある?」

櫻井君は軽く首を振る。

「違うよ。今日は現場へ直行。」

現場って……つまり、妖怪とか……そういうのがいるところ……?

「なんでも地方で大きな捕物があるらしくって、二宮さんはそっちに出向いてるんだって。

 後で助っ人送るって言ってたけど……。」

地方……祓い屋は地方出張もあり?

じゃ、その二宮さんには会えないのか……。

え?まてよ?

ってことは……俺と櫻井君で祓うの!?

俺、デビューしたてなんですけど?

しかも、偶然!

どうやったのかもよくわからない!

てか、祓ったの、狐だし!

「あ、大野君、僕たちで祓うとか思った?」

思った思った!

うんうんと大きくうなずく。

でも、できればやりたくないと目で訴えてみる。

「大丈夫だよ。今日は手慣らし。結界を張って見張るだけでいいって。」

「結界?」

「そう、妖が逃げないよう、他の妖や人間が入り込まないように目に見えない幕を張る。」

櫻井君が駅前のバス通りを歩きながら説明してくれる。

そんなことできるんだ~。

目に見えないんじゃ、張ってあるかどうかわかんなくない?

すり抜けられそうな気がするのは素人だから?

「今まではね、一人で祓うのが主流だったんだけど、

 二宮家が今の当主になってから、チームで祓うことが多くなってるんだ。

 祓い屋は危険が伴う。なのに、妖相手だから、

 どんなに危険でも警察や自衛隊が出動してくれることはないじゃない?」

そりゃそうだ。

いるかどうかわからないような相手……信じてくれるわけない!

「出動してくれても、役に立つかわかんないけど。」

櫻井君が、おかしそうに笑う。

「だからね、僕たちが結界を張ってる間に、ベテランの祓い屋が祓う。

 今回は僕たちともう一組。」

一組?

じゃ、そっちも二人組?

「ああ、組みって言っても人と式のことだよ。

 祓い屋同士で組んでる人は……いないんじゃないかな?

 だから、二宮さんみたいな人が司令塔になって、その時々でチームを組んでる。」

櫻井君は、スッと空を見上げる。

「ああ、ちょっと気を感じるね……。」

気……?

俺には全然……と思ったら、ちょっと不思議な匂いがしてきた。

なんて言うんだろ、据えた匂いって言うか、焦げた匂いって言うか。

すっごい微かだけど。

昔……こんな匂いを嗅いだことがあったような……?

いつだったっけ……。

俺が思い出そうとおでこを叩いていると、櫻井君がスマホを開いて場所を確認する。

「あそこだね。……どうしたの?」

俺を見て不思議そうな櫻井君。

「いや、なんでもない。」

慌てておでこから手を離す。

櫻井君が首を傾げながら、視線を道の先へと戻す。

櫻井君の目の先には、古い大きな日本家屋。

と言っても、この辺は大きな家ばっかりで……。

さすがセレブの街!

その家の角まで小走りで行き、奥行きを確認する櫻井君。

走る姿もさわやか。

イケメンは何しても絵になる!

運送神経も良さそうだよな。

イケメンはなんでもできるのか!?

ちょっとムカつく!

神様の意地悪!

俺にももうちょっと何かくれよっ!

「これくらいなら、中に入らなくてもいいかな。」

ニコッと笑う櫻井君に、俺も駆け寄る。

「連絡しなくていいの?」

「今、マサキを行かせた。行かなくても気付いてると思うけど。」

いつの間に!

さすが、頭の良い人は仕事も早い!

「相手がどれくらいの妖かわからないから、一応用心しておいて。

 出てくることはないと思うけど……。」

櫻井君が、角に立ったまま、家の中に体を向ける。

櫻井君の身長より高い生垣と、塀に囲まれた家。

視線が塀を通り抜けそうなほど鋭い!

まさか、透視までできるのか!?

「櫻井君……中、見えたりするの?」

櫻井君がクスッと笑う。

「まさか。気を集中させて、妖や中で妖と対峙してる人の気の大きさを感じてるだけだよ。

 どんな敵なのか……知っておいた方がいいでしょ?」

そうだけど……本当にここに妖なんて……いるの?

生垣の隙間から見える和風な庭には、灯篭や、池……?

みたいのが見える。

手入れされてそうな樹々。

掃除も……大変そう!

俺も櫻井君を真似て中に集中してみる。

集中しても……もちろん何も見えるわけない!

でも、さっきより据えた匂いは強くなってる……。

これ、何か関係ある?

櫻井君に聞こうと思ったら、ボンッと、俺と櫻井君の間にマサキが現れた。

びっくりするから、突然現れるのは止めてよ!

「始まってる?」

櫻井君は全く驚かず、家の中に視線を向けながらマサキに聞く。

「もうちょっと。引き出してるとこだった。」

マサキは楽しそうに目を輝かせて話す。

「強そう?」

「そうでもないよ。オレの半分くらいかな?」

マサキが偉そうに顎を上げる。

「何だった?」

「蛇帯(じゃたい)っぽいかな、まだわかんないけど。」

「へぇ、珍しいね。」

「じゃたい……?」

聞いたことないぞ?

それも妖……?

櫻井君が、俺に気を使って、説明してくれる。

「蛇帯は帯が人の念で蛇になった妖。

 念が強ければ強いほど大きな力を持つんだけど、今回はそんなに大きくはなさそう。」

大きくないと聞いてホッとする。

でも……どんどん匂いが強くなってないか?

「じゃ、そろそろ結界を張らなきゃね。」

櫻井君が、両手で不思議な形を作って、何かブツブツ呟きだした。

これで、結界が張れるの?

なんか……映画みたい!










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白が舞う 十九話

白が舞う



放課後。

俺は今、櫻井君と一緒に電車に乗っている。

「どこ行くの?」

「ん……次で乗り換えかな?」

スマホで路線図を確認する櫻井君。

そのスマホを覗き込みながら、櫻井君の表情を窺う。

どこに、何しに行くのか、まだ聞いてない。

窓の外はどんどん高い建物が増えていく。

緑が減り、灰色の壁と色鮮やかな看板……。

都心に向かってるのは間違いないんだけど……。

「どこに行くのか、教えてくれないんだ?」

「そういうわけじゃないよ。僕がこの辺、不案内だからよくわかんないんだよ。」

櫻井君が困った顔で笑う。

まだ、昨日のことを誤ってない。

タイミングが……難しいんだよ!

なんて言えばいいかわかんないし、人がいる所で言うのもなんだし……。

しかも、でっかいお邪魔虫もついて来てるし!

「すっげ!あんな高いの見たことない!ね、翔、あれ、何?」

窓に引っ付いて、櫻井君のブレザーを引っ張る子鬼のマサキ。

「静かにできないなら、家に帰すよ?」

櫻井君が小声でマサキに囁く。

「ちょっとぐらいいいじゃん!オレ、こっち来てから、外出たの初めてだし!」

じゃ、昨日は家にいた?

全部……見られてた?

カッと耳が熱くなる。

キスシーン見られただけだって恥ずかしいのに、まして相手は男!

それも、目いっぱいその気になってた俺!

子供とは言え……あんなとこ見られてたと思うと……。

「そう思って連れて来てあげたんだから、静かにできないなら強制送還。」

「違うじゃん。オレが昨日のことしゃべんないよう口止めじゃん!」

あ、ばかっと櫻井君が慌ててマサキの口を塞ぐ。

やっぱり見られてたんだ……。

熱いのが、耳だけじゃなく、顔中になる。

「帰るか姿消すか、どっちかにしろ。」

櫻井君がドスの利いた声で凄む。

俺と櫻井君の顔を見比べたマサキが、仕方なさそうに姿を消す。

「え……突然消えて、大丈夫!?」

キョロキョロと車内を見まわしてみるけど……気付いてる人はいなさそう?

「大丈夫。見えてるの僕たちしかいないから。」

櫻井君が涼し気に笑う。

「姿消して……どこにいるかわからなくなったりしない?」

「大丈夫。いつでも僕の声は聞こえるから……。」

「声……?」

「式は、遠くにいても僕の言葉を聞いてる。」

櫻井君が自分の肩の辺りに目をやると、親指大になったマサキが、ぼぉっと一瞬姿を現す。

すぐに消えて見えなくなったけど、親指大のマサキはえらく可愛い。

「マサキはまだ子供だから、あまり遠くには行かないしね。」

黄緑の浴衣を着た、妖精みたい。

昔絵本で読んだような。

櫻井君が視線を俺に戻す。

「ごめんね、今日は諸々の事情があって、マサキも一緒に連れて行かなきゃいけなくて。」

諸々の事情の一つが昨日の……口止めってことだよな。

「き、昨日は……ごめん。」

思い切って言ってみる。

お邪魔虫のいなくなった今しかない!

これからどこに行くかもわかんないし!

照れたような困ったような櫻井君が、顔の目で手を振る。

「え、あ、大丈夫だよ。昨日は……その、僕もちょっとおかしかったって言うか……。」

俺のが相当おかしかったって!

「突然、我に返った?」

聞かれて、ゆっくり首を振る。

「狐が……。」

「狐?」

訝しそうに眉をしかめる櫻井君。

「俺の中の狐が……変なこと言うから……。」

「変なこと?」

その気になってるとこに図星刺されたなんて……言えるわけない!

本人目の前にして!

「いや、ま……その……、は、恥ずかしくなった?……単純に。」

「恥ずかしい……確かに。」

櫻井君が、ちょっとふざけた調子で笑う。

「そりゃ恥ずかしいよね?僕も後で思い出して恥ずかしくなった。」

思い出したら……恥ずかしくないわけない!

「だろ!」

俺と同じだと思うとホッとする。

んふふ、と俺から笑い声が漏れると、櫻井君が安心したように笑う。

「よかった。せっかく友達になれたのに、嫌われちゃったかと思って、心配だった。」

その心配は俺の方!

「そんな心配いらないから!」

「朝もどんな顔して会えばいいか悩んだし。」

え?櫻井君も……?

「やり過ぎだったよな、会ってまだ間がないし。

 謝った方がいいかな、でも謝るのはちょっと違うし……などなど。」

櫻井君が、ふふふっと笑う。

「そんなこと考えながら顔作るの大変だった!」

とてもそんな風には見えなかったぞ?

いつもと変わらぬ櫻井君で、

昨日のことなんて、櫻井君にとって大したことないのかと思った!

「だから、今日一緒に行ってくれるって聞いて、ホッとした。」

「俺も!誘われてホッとした!」

二人で顔を見合わせて笑い合う。

よかった。

なんとか仲直りできた!

「で、今日は何しに行くの?」

「今日はね……あ、ここで降りるよ。」

電車が止まり、ドアが開くと櫻井君が俺の肘を引っ張る。

「乗り換え。ちょっと急ごう。」

引っ張られた腕がくすぐったくて、もぞもぞする。

朝の満員電車ほどじゃないけど、そこそこ込んだホーム。

人を避けながら、櫻井君と一緒に階段を上る。

「今日行くのはね、ちょっと頼まれ事してて。」

「頼まれ事?」

急いで階段を上るサラリーマンに肩を押され、櫻井君にぶつかる。

俺を両手で支えながら、櫻井君がニコッと笑う。

「祓い屋協会の元締めって言うか、僕をこっちに呼んだ人に呼び出されてね。」

「呼び出された……?」

祓い屋協会って言ったら……もちろんそっち系の話?

「昨日、大野君も祓い屋の仲間入りしたから……後学の為にね。」

櫻井君のさわやかな笑顔が、意味深に見えたのは……気のせい?










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白が舞う 十八話

白が舞う



下駄箱に靴を投げ、廊下を走る。

勢いに任せ、教室の戸を思いっきり開ける。

バンッと大きな音をさせ、上履きを滑らせながら教室に飛び込む!

「間一髪セーフっ!」

風間がそう言いながら、黒板の方を指さす。

よしっ、先生来てない!

間に合った~っ!

「今日はセーフじゃねーだろ?鳴り終わってんじゃん。」

斗真が意地悪そうな顔で笑う。

「先生来てないからセーフっ!」

んね?と風間を見ると、いつもの人懐っこい笑顔で、うんうんとうなずいてくれる。

「先生来てなきゃ、わからない!」

「風間はおおちゃんに甘い!」

「甘くないよねー?」

風間がそう言いながら首を傾けるから、俺もそれに合わせて首を傾ける。

「甘くない、甘くない!」

不服そうな斗真の背中をポンポンと叩き、ニコッと笑うと、斗真も仏頂面で笑ってくれる。

なんだよ、その顔!

イケメンがそんな顔、おもしれーじゃんっ!

寝不足の俺の目がさらに細くなる。

笑いながら自分の席へ視線を向けると、俺の席の隣、櫻井君が目に入る。

櫻井君はいつもと変わらない様子で……。

一気に昨日の記憶が蘇る。

キスしたこと、突き飛ばしたこと、イライラ、モンモン……。

どうしていいかわからず、派手に椅子の音をさせて、ドカッと座る。

「おはよ。」

変わらぬ笑顔の櫻井君。

「お、おはよ……。」

どんな顔したらいいんだ?

何て言ったら……。

「今日、用事ある?」

変わらぬ櫻井君が、変わらぬ声で話し掛けてくる。

昨日のことはまるきり無視?

「用……?」

「予定……ある?」

櫻井君の大きな瞳が不安そうに揺れる。

昨日の今日……櫻井君だってなんで?って思ってるよな……。

俺、何も言わなかったし……。

ちゃんと話そう。

あれは狐のせいだって!

櫻井君のせいじゃないって!

ちゃんと話せば、俺のイライラやモンモンも……少しはましになってくれるはず!

「ない、けど……。」

ホッとしたような櫻井君の顔。

「じゃあさ、付き合ってくれない?」

「付き合う……?」

俺の言葉と被るように、教室の戸が開く。

入って来たのは、古典の山さん、山寺先生。

ベテラン刑事みたいな風貌で、いっつも擦れた鞄を肩から下げてる。

あれ?一時間目、古典だったっけ?

「え~、一時間目の英語は鈴木先生の体調不良により、急遽明日の俺の授業と入れ替えます。

 今日は教科書使わずに授業するから、机の上の物はしまって。」

ええ~と、教室中がざわざわする。

ねずみ男、あのまま具合悪くなっちゃったのか……。

隣を向くと、櫻井君もこっちを見てて。

「あの蜘蛛男、鈴木先生って言うんだ……。」

え?今更?

そう言えば……名前、教えてなかったかも。

二人で顔を見合わせたら、笑いが込み上げてくる。

「んはは、ごめん、教えてなかった!」

「大野君が、ねずみ男だの、チェリーだの、あだ名しか教えてくれないから。」

「櫻井君だって聞かなかったじゃん!」

「おっしゃる通り!」

真面目そうな顔を作ってさらに笑わせてくる。

「で、この先生のあだ名は?」

「この先生は……。」

教えてあげようと、櫻井君に顔を近づけると、櫻井君の匂いがしてドキッとする。

甘酸っぱい櫻井君の匂い……。

昨日のキスが赤裸々に蘇って来る。

あの唇の柔らかさ、甘さ……。

大胆な動きと艶めかしい舌使い……。

あの唇と……。

ば、ばかばかっ!

何考えてんだ?

またキスしたいとか考えてなかったか!?

男同士だぞ!

同級生だぞ!

昨日のあれは、櫻井君のちょっとした好奇心で……。

チクッと体の中のどこかが痛む。

あれ?なんだ、今の……?

「大野!櫻井!何二人でこそこそやってんだ!?

 どうせ、俺の悪口だろ?

 前に出て大野は書き下し文、櫻井は日本語訳を書け。

 みんなは今配ってるプリントに書くんだぞ~。」

山さんがいつもの調子で授業を始める。

俺ができないのわかってるくせに。

「大丈夫。そんなに難しくないよ。落ち着いてやればできるから。」

櫻井君が立ち上がる。

仕方なく俺も立ち上がって……。

「なんか、僕が来てから大野君、当てられてばっかだね。ごめんね。」

そうだよ、本当に櫻井君が来てから当てられてばっか。

でも、そんなに嫌な気はしてない。

最初か勉強できないの、わかってるから!

それに、隣でスラスラ問題を解く櫻井君を見るの、ちょっと楽しいし。

うわっ、これもできるんだ?

じゃ、もっと難しいのは?

すげぇ、これもできんだ!

って嬉しくなってくるんだよね。

だから、きっと今日も……。

「大野、早くしろっ!」

ちょっと先で振り返った櫻井君が、笑顔で待っててくれる。

なんか、全然できない俺でもちょっとはできるんじゃないかって思えてくる。

ま、できるわかないんだけどね。

でも、やるだけやってみようって思えるのは進歩。

櫻井君と一緒だと……なんでもできそうな気がするのは、なんでだ?










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白が舞う 十七話

白が舞う



「大野君……キス、上手……。」

途切れ途切れの櫻井君の声は色っぽい。

上手いのは俺じゃなく狐。

あいつが恋人にしてたキスを真似ただけで、俺にそんなテクニックはない。

健全な男子高校生でそんなテクニシャン、いるか!?

「ん……んっ。」

唾液を飲み込む櫻井君の喉の動き。

ゆっくり動く大きな瞳。

染めたままの頬。

キスしてる最中でも、結構いろいろ見れんだな。

知らなかった。

って、大した経験ないけど。

中学2年のファーストキスと、高校入ってすぐできた彼女とだけの俺の経験。

どっちも、俺のずぼらな性格が災いして、すぐに別れちゃったけど。

とにかく……なんて言うか……気持ちいい櫻井君とのキス。

確かに過去2回のキスも気持ちよかったけど、このキスとはなにか違う。

何が違うのか全然わかんないけど!

「はぁ……んっ。」

艶めかしい櫻井君の吐息。

本当に恋人は寝てるのか?

いつの間にか代わってるんじゃね?

でなきゃ、教室で数学解いた時の櫻井君と同じ人とは思えない!

俺の手が櫻井君の腰を撫でる。

櫻井君も俺の背中を撫でる。

ピリリッと何かが反応して、重なった股間が……大きくなる?

なっていいのか?

なっちゃまずいだろ?

だって、このまま行くと……。

『その気になったか?』

頭の隅で狐の声がする。

笑ってるようなその声に、ちょっとムカッとする。

その気ってなんだよ。

『あいつが中にいるってだけで、色気が増してるはずだからな。

 お前程度の小僧が落ちぬはずはない。』

一瞬でカッと頭に血が上る。

体だけじゃなく、心もその気になってるのを見透かされてるような気がして。

「その気になんかなってねぇよっ!」

気付いたら、そう叫んで、櫻井君の胸をドンと押してて……。

「大野……君?」

「あ……。」

戸惑う櫻井君が俺を見てて……。

「ごめん、もう帰るわ!」

言い捨てて、鞄を引っ掴み、玄関へと走る。

「大野君っ!」

靴に足を引っ掛けて、急いで玄関を出る。

「大野君っ……。」

櫻井君の声が聞こえたけど、振り返る勇気はない。

靴をズルズルしながらエレベーターホールへ向かう。

早く来い、エレベーター!

待ってる間に靴を履き、チラッと来た道を振り返る。

櫻井君が追ってくる様子はなさそう。

……俺、がっかりしてないか?

キスの途中で叫んで帰られたら、怒るのが当然!

怒ってるのに追いかけてくるか!?

来るわけねぇだろっ!

ドンッとエレベーターを蹴る。

八つ当たりなんて、カッコ悪い!

わかっちゃいるけど……どうにも行き場のない気持ち……。

狐があんなこと言わなければ!

そうすれば……!

でも、そうしたら……あの先へ?

キスの先には……何がある?



「ただいま!」

「ちょっと、智っ、夕飯は!?」

「いらない!寝るっ!」

「智っ!」

母ちゃんの声を振り切って、自分の部屋に駆け込む。

帰り道、ずっとモンモンとしてた。

何に苛立ち、何にモンモンとしてるのか、よくわからない。

わからないから、余計イライライする!

くそっ。

ベッドに腰かけ、枕を殴る。

『イライラしたって仕方なかろう。』

「うるさいっ!お前のせいだからなっ!」

『わしのせい?』

狐が、はははと笑う。

「そうだよ、お前さえ出て来なければ!」

『その先へ行けたのに……か?』

その先……いや、たぶん行けない。

狐が出てこなかったとしても。

俺に……そんな勇気はない。

『勇気じゃないだろ?』

「勇気じゃない?」

『お前……ずいぶん奥手だな。』

奥手……?

『イライラしてるのも、モヤモヤしてるのも、わしのせいじゃないからな、』

「じゃ、誰のせいだよっ!」

狐がニヤリと笑った気がしてムカツク。

『それくらい自分で考えろ。』

「ずるいぞ!言えよ!」

『言ってもいいが……さらにイライラするぞ?』

語尾を楽しそうに上げる。

くそっ。

『わかっているのに、わからないフリをするからだ。』

「本当にわからないんだよ!」

『嘘をつけ。わかっているだろ?胸に手を当てて考えてみろ。』

そんな父ちゃんみたいなこと言うなよっ!

「寝るっ!寝るからもう出てくんなよ!」

狐は何も言わず、それ以降は出てこなかった。

よし!

寝て起きれば気分も変わる!

そう思っても、モンモンとしたまま、なかなか寝付けなくて……。

明日……どんな顔して櫻井君に会ったらいい?

怒ってる……かな。

何もなかったみたいな顔されたら……そっちの方が凹むかも……?

いったい、俺はどうしたいんだっ!

ドンッとベッドを殴り、体を横にして丸くなる。

ふと、櫻井君の唇の感触が蘇って……。

人差し指で唇を撫で、忘れよう、忘れようとしたけど……

櫻井君のキス顔がチラついて、余計眠れなくなった。










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白が舞う 十六話

白が舞う


「え~っと……あのね、大野君。」

櫻井君が優しく俺の手を撫でる。

「僕が起きた時……大野君と……キス、してなかった?

 ……ディープなやつ。」

そうだった!

いろいろ考えてたらすっかり忘れちゃってたけど!

キスしてる最中に起きたんだった!

しっかり舌絡ませて!!!

「それをあんな恥ずかしそうに……ぷぷぷ……。」

「わ、笑うなよっ!忘れてたんだよ!

 びっくりすることだらけだったんだぞ!」

「そうだね、ごめんごめん。」

笑いながら、片手をグーにして口を隠す。

「もう、笑うなっ!」

「悪い、あんまり大野君が可愛くって。」

可愛いって、同じ年だぞ!

失礼なっ!

「てっきりそれ以上もしちゃったのかと思って……。

 にしては、下着は付けてたし、倦怠感もなかったし。

 終わった後、履いたのかな、どうなのかなって考えてたのに、

 大野君、キスなんて言うから。

 まさか、アソコにキスしたのかとか思っちゃって。

 さすがにそういう経験はないから。」

「う、うるさいっ!もうしゃべるなっ!」

ソファーの上のクッションを櫻井君に投げつける。

そりゃそうだ。

ディープキス知らない高校生なんているわけない!

けーけんないやつはいるかもしれないけど。

俺みたいに……。

ああ~、恥ずかしっ!

クッションを受け止め、さっきの優しい顔で笑う櫻井君。

「わかった。わかった。ごめん、ごめん。もう笑わないよ。

 でも……聞いていい?」

「……ん?」

バツが悪くて、頭を掻きながら壁掛けを見上げる。

「どうだった?僕の唇。」

「く、くち?ぶっ!げ、げほっ、げほっ。」

ばかっ!変なこと言うから、変な咳がでちゃっただろ!

「大丈夫?」

大丈夫なわけない!

そんな質問っ!

どうだったって……そりゃあ気持ち良かったなんて……言えるかっ!

櫻井君の赤い唇に……艶めかしい皺が寄る。

もう狐の恋人じゃないのに。

また恥ずかしさが込み上げてくる。

今度はディープなやつを思い出して!

「そ、そんなこと……聞くなっ!」

「聞いちゃダメ?僕だって男同士のキスは初めてだったんだよ。

 それが全然記憶にないんだから……気になるじゃない?」

櫻井君が近づいてくる。

「二人に体を貸してあげるなら……どんな感じか……知りたくない?」

え……まさか、櫻井君、その先まで……体貸してあげるつもり!?

チョメチョメとか、ごにょごにょとか……。

それは勘弁!

それは困る!

だっていろいろ……まずいだろ?

そうだ、きっとまずいっ!

櫻井君だって……まずくないか!?

アレをアレするんだぞ?

ぜ~~~~~ったい無理っ!

アレがアレに入るなんて想像できないっ!

「試してみる?」

櫻井君がじわっと近づいてくる。

別人に変わったみたいな色気醸し出しちゃって。

え?櫻井君、櫻井君だよね?

「さ、櫻井…君……?」

櫻井君がニヤリと笑う。

「翔って……呼んでいいって言ったのに。」

じわじわ近づいて来る櫻井君に合わせてじわじわ後退りする俺。

さ、櫻井君だって、あの場にいたらちょっと待てって思うからっ!

意識なかったからわかんないんだよ!

そうか!

あれを体験させてやれば櫻井君だって……。

ドンッと背中が壁に当たる。

もう後ろに下がれない。

櫻井君の腕が俺の顔の横に伸びる。

ビクッとする。

壁についた腕に筋肉の筋が浮き出る。

意外に筋肉質なのね、櫻井君て。

なんて考えてる場合じゃない!

背後からの照明で暗くなる櫻井君の表情は……楽し気?

やばい。

この顔はまじ?

櫻井君のもう片手が俺の顎に伸びてくる。

ええいっ!

イチかバチかだ!

狐だって俺の体使ってやってたんだ、少しくらい背が低くたって……。

少し大きな櫻井君を見上げ、片手を首の後ろに回す。

一瞬怯んだ櫻井君の後頭部を掴み、睨みを利かす。

狐を想像して……覚悟を決める!

「仕掛けたのはお前だからな。」

思いっきり後頭部を引き寄せ、櫻井君の唇に唇を押し当てる。

もう片手を櫻井君の腰に回し、口を開けて舌を差し込む。

「んっ……。」

目をつぶった櫻井君の目尻が歪む。

苦しい?

でも、ここで手を抜いてはいけない。

狐がしたように、英語準備室での出来事を体験させてやらないと!

さらに押し込み根元から舌を絡める。

ヌルヌルと絡み合う舌の感触……。

ピチャッと唾液の音がして、気分が煽られる!

絡んだ舌先で、櫻井君の上顎を撫で、唇で優しく唇を撫でてやる。

壁に付いた櫻井君の腕から少し力が抜ける。

よしっ!

さらに上あごの奥を舐め、唇ごと入り込むように軽く唇を閉じる。

「くっ……。」

絡んだ舌のヌメッとした感触と、柔らかい唇の感触に……ゾクッとして。

櫻井君の匂いと相まって、腹の奥が疼き出す。

え?まじ?まじですか?俺っ!

男相手に……何盛ってんだよっ!

密着しているアレが固くなって……。

え?櫻井君のも……固くなってる!?

てことは、これは生理現象みたいなもん?

キスすれば、誰が相手だってその気になるってこと!?

お互いの固いモノに気付いた櫻井君の頬が、ポッと赤くなる。

そうだろ?

そうなるよな?

その反応、俺と一緒っ!

俺ら健全な男子高校生!

男同士でキスなんて……そんな経験そうそうないっ!

健全な男子高校生は……この後、どうなる!?










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tepo

Author:tepo
アメブロでメインに活動しています。

嵐の大野君が大好きで、山LOVEです♪
腐っているので、ご理解のある方、
また成人女性限定でお願いします。

a Day in Our Life
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kissからはじめよう
    ↓
 Step and Go
    ↓
  果てない空

の順で続いています。
それぞれでも楽しめるようになっていますが、順番に読むと5人の成長がよりわかるのではないかと思います。

コメント等は受け付けていません。
何かありましたら、
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よろしくお願いします。

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